2024.6.28

UR都市機構、屋外空間を使って未来の団地風景を作る社会実験スタート

コンペ受賞の9企画を同時展開、9月、11月にはイベントも実施

「URまちとくらしのミュージアム」(北区赤羽)の屋外空間を使う社会実験活動「まちとくらしのトライアル実践」を7月からスタートする。昨年度実施したコンペ受賞9点の企画を1年間実験として行う。

(独)都市再生機構(UR都市機構)が、「URまちとくらしのミュージアム」の屋外空間を使う社会実験活動「まちとくらしのトライアル実践」を7月からスタートする。UR都市機構は2023年9月、団地として初めて国の有形文化財に指定された赤羽台団地(現ヌーヴェル赤羽台)に過去の集合住宅の復元住戸などを保存、展示するミュージアムをオープン。それを機に、屋外スペースを実験場として新たな風景を作り出すことを目的に、デザインやビジネスなどのアイデアを23年12月~1月に募った。84点の応募の中から選出された9点の受賞者とともに、7月から各活動の実験を開始。ワークショップ等を行いながらそれぞれの企画を具現化する。9月14、15日にはミュージアム開館1周年イベントに合わせ、屋外体験企画を実施。11月上旬にも地域イベントを催す予定だ。25年2月に総括をし、今後の活動につなげていくという。

トライアルの展望を語る審査委員長馬場正尊氏
スターハウス保存住棟と屋外空間。この場所を使い、トライアル実践を行う

6月4日には、現地で受賞者の発表会が行われた。ミュージアムのプロデューサーであり、今回のコンペ審査委員長を務めた馬場正尊氏(オープン・エー代表取締役、東北芸術工科大学教授)は「このミュージアムのコンセプトは過去、現在、未来の新しい暮らしの探求。この取り組みの風景もコンテンツであり、屋外空間自体が未来の展示場になる。今年一年の実験期間の中から様々な発展があるかもしれない」とコンペの意義と展望を語った。

選出された企画は多岐に渡る。最優秀賞は、キタバ・ランドスケープ東京事務所が提案した「赤羽台農耕団地」。地域住民とともに保存棟や中庭で野菜、果実などを育て、交流会、収穫祭を実施するプランだ。その他、植物の適正照度を植木鉢の色に示し緑化を進める「緑と環境ミュージアム」、地元北区の高校生提案によるスラックラインを広める活動「Let’s enjoy!Slacklife」、ミュージアムに関連した読書空間を作る「URまちとくらし図書館」など8点。プロから高校生まで様々な世代、立場の受賞者がそろった。

UR都市機構と受賞者らは、連携を取りながら9者同時に実践を進めていく。審査員を務めた荒昌史氏(HITOTOWA INC.代表取締役)は「社会活動のトライアルは全国各地で行われているが、ミュージアムと一体となっている点、9つの受賞者が会して同時に実践するという点で前代未聞」。同じく審査員で都市デザイナーの内田友紀氏(リ・パブリック シニアディレクター、YET代表)は「まちづくりでは、異なる人々がどうやって一緒に進めていくかが課題となる。一企業が手をあげて、そのための場を開いたことが画期的」とこの試みを評価する。

トライアル初年度の今年は、UR都市機構が資金の一部を補助し、まずは赤羽台団地で実験を行う。結果次第で、今後は企業や自治体などと組み、新たなビジネスとして他の場所に展開することも視野に入れる。