動く耐力面材、耐力壁市場

進む住宅高性能化、4号特例縮小を控え

住宅の耐震性能、省エネ性能の向上が求められる中で、耐力面材、耐力壁へのニーズが高まってきている。また、2025年4月、省エネ基準への適合義務化と共に、4号特例の縮小がスタート、確認申請に構造関係図書の提出が必須となり、木造の仕様規定(壁量計算)が厳格化され、必要壁量が増加する。さらに、構造計算が必要な規模も現行の500㎡以上から300㎡以上に変更される。多くの住宅会社が対応を迫られ、大きな転換期を迎えると見られている。木造構造基準の厳格化が進む中で、耐力面材、耐力壁に期待される役割はさらに大きくなっていきそうだ。


近年、耐震性能、省エネ性能の向上など、住宅高性能化の要求が高まっている。一方、現場の施工を担う大工、職人の不足が深刻化する中で、簡単な施工で均一な性能を確保しやすいことから、筋かいから耐力面材へのシフトが進んでいる。耐力面材は、規定された間隔をあけ釘で固定するだけで、筋かいよりも簡単確実に均一な性能を確保しやすい。施工の合理化、性能確保の観点からも、耐力面材へのシフトが加速している。

(独)住宅金融支援機構の「フラット35住宅仕様実態調査(17年度)」によると、木造住宅の主な耐力壁の種類は、「筋かい」が56.4%を占め、「構造用合板」などの面材は43.5%であった。構造用合板が21.9%、OSBが6.4%、その他の面材が15.2%となっている。12年度調査では、筋かいが57.7%、構造用合板が22.3%、OSBが5.1%、その他の面材が14.9%となっており、徐々に筋かいから耐力面材へのシフトが進んでいることがうかがえる。24年6月中旬に、前回調査(17年度)から6年ぶりとなる「フラット35住宅仕様実態調査調査結果(23年度版)」を公表する予定。筋かいから耐力面材へのシフトがさらに進んでいるのか注目されている。

木質系、無機系耐力面材
使いやすく施工者から高い支持

耐力面材市場を牽引する構造用合板
価格上昇、着工減で苦戦も回復の兆し

耐力面材には、木質系、無機系があり、メーカー各社は、それぞれの強みを打ち出して差別化を進める。木質系の耐力面材の中でも、近年、特に国産材利用拡大の国の政策の後押しなどを受けて、飛躍的に需要を伸ばしているのが構造用合板だ。合板は、木材を薄く剥いた単板を3枚以上、繊維方向が直角になるように交互に接着した板で、大きな面材が生産できることから、住宅の壁用、床用、屋根下地用などとして利用されている。日本合板工業組合連合会(日合連)は「マテリアルとエネルギーの双方利用により環境負荷(LCA)の低減を追求していること、部材としての使い勝手の良さなどをもって、環境創造産業としての更なる発展を目指したい」とする。

筋交いから耐力面材へのシフトを牽引する構造用合板。コストを抑えて高耐震化を図りやすい

日合連が中心となり厚ものの構造用合板を「ネダノン」という名称で製品化し、高耐力の壁倍率の大臣認定の取得を進めたことも、採用拡大の大きな推進力となった。コストを抑えて建築基準法レベルの3倍もの耐震性能を実現できる。厚さ24㎜の「ネダノンスタッドレス5+」は、現行の法制度において最高ランクの壁倍率5.0の大臣認定を取得している。実力値は、5.9~7倍相当であり、許容応力度計算ルートや非住宅の設計では、この数値をもとに設計を行える。

しかし、21年~22年にかけて、ウッドショックの影響などで、原料となる原木不足が生じ、価格高騰が続き、ビハインドの風が吹いた。林野庁の「木材需給動向」によると、構造用合板(国産針葉樹合板12㎜厚、3×6判、枚)の価格は、21年4月には900円台であったが、22年5月には2倍以上の2000円台まで上昇。加えて、ロシア産の単板の輸入がウクライナ紛争の影響でストップしたことや国内有力メーカーの工場で火災が発生したことなどから、いったんは需給が引き締まったものの、中国産合板の輸入が増加したことや着工減の影響で在庫はだぶつき、メーカー各社は減産に動いた。その結果、23年の用途別普通合板生産量(構造用合板)は前年比15.5%減少の224万㎥と2ケタの減少。その分の需要がパーティクルボード、MDF、無機系ボードなど、その他の耐力面材にシフトし、シェアは変動したとみられる。

一方で、23年4月以降、合板価格の下落傾向が続いていたが、24年4月には底を打ちつつある。23年10月以降、構造用合板の生産量はプラスに転じて推移している。「需要減退により、各社・各工場が生産調整を継続していたが、戸建て以外の集合住宅や非住宅の動きがよく、底を打ち回復傾向に向かい始めている」(日合連)。

工場新設で販売を伸ばすPB
価格の安定性もアドバンテージ

日本ノボパン工業の構造用PB「novopan STPⅡ」。ENボードの新工場が加わり、3工場体制で供給能力が向上、販売も伸びている

木質系耐力面材の中で、近年、パーティクルボード(PB)や、中密度繊維板(MDF)の存在感も高まっている。18年3月、耐力壁に関する告示改正により、高倍率の耐力壁に厚さ9㎜の構造用PB、構造用MDFなどが使えるようになり、4.3倍、2.5倍(軸組、大壁(床勝ち含む))と、新しい壁倍率が追加された。

PBは、構造用面材に求められるせん断剛性が高く、地震・台風に強い家づくりに貢献する。また表面が硬く、破損しにくい一方で、粘り強さがあり、釘がめり込みにくい。さらに、降雨などによる水漏れを起こしても木口の膨張はほとんど起こらない。こうした様々な利点があり、施工時にトラブルになりにくく、特に現場の施工者から高い支持を得ている。国内最大のPBメーカーである日本ノボパン工業は、主力商品として9㎜厚の構造用PB「novopan STPⅡ」(以下、STPⅡ)を製造・販売する。04年から国土交通大臣認定を取得し販売を開始。07年にSTPⅡへとバージョンアップを図った。床勝ちや高倍率の認定も取得するなど、より使いやすい形へと進化している。発売当初から順調に伸びており、住宅1棟あたり70枚使用すると換算して、24年3月までの累計採用棟数は約100万棟超に上る。

一方で、ウッドショック下で値段が急騰した合板などからの代替需要としてPBが注目され、既存の堺工場、つくば工場でフル生産を続けてきたが、在庫のひっ迫状況は改善されず、供給能力が追いつかないという問題が露呈した。23年は、この状況が大きく改善した。既存2工場に、日本ノボパン工業とPB製造の老舗メーカーでもある永大産業が合同出資を行い、19年に設立された合弁会社「ENボード」の工場が加わった。静岡県に新設した国内最大のPB工場で22年11月から商用生産を開始。23年は、3工場での生産がスタートしたことで、生産能力は大きく改善。PBの販売は前年比8%増と伸長した。

価格安定性もPBの強みだ。接着剤などの高騰の影響はあるものの、木材チップさえあれば製造できるため、価格安定性に定評がある。ウッドショック後、STPⅡも値上げを行ったが、上げ幅は他の面材に比べると極めて小さかった。資材全般の価格が高騰するなかで、他の構造用面材からPBへの切り替えが進んだことも販売拡大を後押しした。

優れた透湿性で結露を防止
寒冷地で支持を得る構造用MDF

ホクシンの「スターウッド」。告示により認められた高耐力仕様、また、透湿抵抗の低さなど、独自の強みを打ち出す

構造用MDFのメーカー各社も、告示により認められた高耐力仕様、また、透湿抵抗の低さなど、独自の強みを打ち出し、住宅高性能化、耐力壁シフトの波に乗ろうと提案を強化している。

昭和6年に創業したホクシンは、日本で初めてMDFをつくり、国内生産量1位を誇る。「構造用スターウッド」は1995年、MDFとして初の大臣認定を取得し耐力壁の用途を開いた。その後も壁倍率2.9倍(大壁)、2.7倍(真壁)などの大臣認定を拡充した。業界としてもJIS改定(2014年)により「構造用MDF」を規格化するとともに、18年3月に、構造用MDFが告示材料として認められたこともあり、より使いやすい環境整備が進む。

MDFは、他の木質系耐力面材と比較しても、際立って透湿抵抗が低く、湿気を屋外に排出しやすいという特性を備えている。通気構法の下地材として最適で、壁内の湿気を排出して内部結露を防ぐことで、住宅の耐久性を高める。

「住宅高性能化が進む中で、全国的に引き合いは増えているが、特に、より高いレベルで結露対策が求められる東北、北海道などの寒冷地で高い支持を得ている。積雪による荷重増も考慮して壁量を増やす必要がある。『構造用スターウッド』は、耐震等級3の家づくりを強力にサポートする。壁倍率4.3倍が告示で認められていることもアドバンテージになる」(同社)。

また、製造工程で防腐防蟻薬剤を混ぜ込むことで防腐防蟻性を付与した「スターウッドDⅡ」もラインアップ。シロアリ忌避性が高く、接着剤混合式であるため、軸材との接合面を含む隅々まで防腐防蟻効果を発揮する。10年間の防腐防蟻性能保証を付与した。現場での防蟻薬剤の塗布施工が不要になり、省施工にも寄与する。

さらに、耐力壁だけではなく、水を吸いにくく、すぐ乾くという特性を生かして、「高耐水MDF床下地」もラインアップし、雨濡れによる不具合の解決策の一つとして提案する。特に中大規模建築物は、建築中に雨にさらされる期間が長くなり床下地は不陸や膨れといった不具合発生のリスクが高まる。「高耐水MDF床下地」を上棟前に施工することによって不具合を解消しつつ、上棟後の床下地施工という非効率な工程に甘んじることなく、足場を確保して作業することができる。また、公的機関で床倍率3.6倍の評定を取得しており、水平構面としての計算ができる。

ノダは、構造用MDF「HBW(ハイベストウッド)」の販売を強化する。脱炭素、SDGsの流れが強まる中で、間伐材、製材の廃材、梱包や建築廃材などを有効活用したエコ素材であることを前面に打ち出す。

ノダの「HBW」。高耐力仕様のラインアップが豊富にあり、開放的な空間を確保しながら、間取りの自由度を高められる

HBWは、厚さ9㎜の構造用ハイベストウッドとして、壁倍率4.0倍と2.5倍(軸組)の大臣認定を取得。また、耐力壁に関する告示改正により、高耐力仕様が追加された。「地震被害が相次ぐ中で、住宅の耐震性能への関心は高まっている。住宅の高断熱化、ソーラーパネル設置などによる重量化に伴い、より高いレベルの耐震性能が求められている。HBWは、高耐力仕様のラインアップが豊富にあり、開放的な空間を確保しながら、間取りの自由度を高められる。また、筋かいに比べて断熱材の施工がしやすいというアドバンテージもあり、耐力面材への切り替えのニーズはより大きくなっていくと期待している」(同社)。

また、耐震性能シミュレーションソフト「wallstat」でモデル化することができるパラメータ等の数値がある製品として評価認定を取得。震度6強~7相当の巨大地震波を6回連続で、HBWを使用した住宅に与えても倒壊しないことを確認している。職人不足により、現場で設計通りの品質が確保されているのか、施工品質についてもクローズアップされ始めている。その点、HBWは、粘り強い素材であるため、安定して留まりやすく、施工品質の安定化を図りやすい。加えて、MDFならではの特性として、優れた透湿性で結露を防ぐこと、水濡れにも強く、長持ちする家づくりに貢献することなども訴求する。こうした多くの強みが支持されて、ハウスメーカーを始め、年間1万棟超の住宅建設を手掛ける大手ビルダーなどから採用実績を積み重ねている。

より複合的な機能で差別化
無機系耐力面材もシェア拡大

無機系耐力面材についても、より複合的な壁の機能で差別化を図りたいというビルダーなどから支持され、住宅市場で存在感を増している。

アイカ工業が販売する多機能建材「モイスTM」。内装材として使用できる「モイスNT」もラインアップ。耐力面材と内装材の両方にモイスを使用する住宅事業者も増えている

アイカ工業が販売する「モイスTM」は、けい酸カルシウム板をベースに、天然鉱物のバーミキュライト、けい砂などを配合し、主に、天然素材を用いて製造する多機能建材。木造軸組工法で最大壁倍率3.8倍の認定を取得しており、優れた耐震性を発揮する。

また、モイスTMの透湿性能により、壁内部の結露も軽減し、カビの発生や木材の腐食を抑制でき、耐久性のある住まいを実現できる。さらに、火災にも強く、不燃材料の国土交通大臣認定を取得。無機材が主原料であるため煙や有毒ガスの発生もない。多種多様な外装材、断熱材などとの組み合わせで防火30分、準耐火45分などの防耐火構造の認定を取得しており、都市部の住宅街など、防耐火規制のハードルが高いエリアにおいても使用できるなど、多くの機能も持ち合わせている。

また、気密性が高く、冷気や夏場の熱気の侵入を抑えて住宅の断熱性能向上に寄与する。気密性が高いことで優れた遮音性も発揮、モイスの遮音性能は石膏ボード2枚分に相当する。加えてその透湿性能は、壁内部の結露を軽減し、躯体の劣化リスクを抑える。主に、無機系材料で構成されているためシロアリの好む成分を含まず、防蟻処理が不要で、木材の腐食.シロアリ被害も抑制する。高気密・高断熱住宅づくり、住宅長寿命化を下支えする。

内装材として使用できる「モイスNT」もラインアップしている。モイスNTを内装に使用することで、調湿、消臭、VOC吸着効果などが期待でき、室内空気環境の向上に寄与する。耐力面材と内装材の両方にモイスを使用する住宅事業者も増えている。より長いスパンでより良い住宅づくりに取り組むビルダーなどから高い支持を集めている。

そのほか、無機系の耐力面材として、吉野石膏は20年5月、耐力面材「タイガーEXハイパー9.5㎜」を発売。防水、防カビ処理を施し、水分を吸収しやすいという石こうボードの弱点を克服、外壁下地用耐力面材としての使用を可能にした。標準仕様で2.3倍の壁倍率の構造強度を持つ。

防火内装下地材として圧倒的なシェアを誇る石膏ボードと同じく、供給能力、コスト面でもアドバンテージを持ち、シェアを着実に高めている。

プラン自由度を高め
開放的な空間を創出する狭小耐力壁

狭小耐力壁の新商品開発も活発化している。例えば狭小住宅において、玄関正面にビルトインガレージを設置する、あるいは一般的な耐力壁から狭小耐力壁に置きかえるといった、設計プランの自由度を高め、より開放的な空間を創出する使い方が可能になる。

タナカが開発した狭小耐力壁2段筋かい「新・つくば耐力壁〈K 型〉、〈X 型〉」。構造計算を前提とする商品であり、4号特例縮小に伴い、構造計算にシフトする住宅会社が増えていくことを期待する

タナカは、柱間450㎜(455.500㎜)幅で高い壁倍率の耐力を確保できる狭小耐力壁2段筋かい「新・つくば耐力壁〈K型〉)」を製造・販売する。455㎜幅で壁倍率5.0倍相当(1mあたり)の耐力を確保した。建築基準法で定める許容応力度計算を行うことにより採用できる。構造用面材として構造用合板、MDF、PBなどを組み合わせることで、壁倍率を最大6.91倍相当(1mあたり)まで高めることができる。寸法加工済みの木材(筋かい・中桟)と金物は1壁ごとに箱入りセットで納品される。専用の基礎金物や柱、構架材への加工が不要であるなど、施工性の高さも特長の一つで、一般的な筋かいを取り付けるような感覚で施工が可能だ。特殊な部材を使用しないため、他の狭小壁の製品と比べて、コスト競争力にも優れている。発売当初は主に都市部の狭小地の3階建住宅への採用を想定していたが、平屋や2階建、共同住宅などへの採用も全国で広がっており、その出荷量が大きく伸長している。

さらに、24年4月、かねてより要望の多かった、より高耐力で、狭小壁に対応した室内壁用の筋かい耐力壁が欲しいというユーザーの声に応え、「新・つくば耐力壁〈X型〉」を追加した。筋かいのみで相当壁倍率6.3倍~7.0倍(1mあたり)の耐力を確保することができる。構造用面材を施工することが難しい室内壁への使用に最適だ。

適応範囲の拡大を図り、狭小耐力壁の差別化を図る動きも相次いでいる。ダイドーハント、栗山百三は、狭小耐力壁「フロッキン狭小壁」を製造、販売する。柱頭金物、柱脚金物、アンカーボルト、狭小壁用面材、ドリフトピンなどで構成。柱頭と柱脚に専用の粘り強い金物を使い、ビスの配置などを工夫することで、粘り強く高い耐力を実現する。さまざまな納まりで耐力検証を行い、設計マニュアルを用意。一般的な構造計算ソフトで入力することができる。従来、「1階セット」のみのラインアップだったが、21年4月、「2、3階セット」を発売。意匠系の設計事務所などから問い合わせが増えているという。

迫る4号特例縮小
耐力壁市場へも多大な影響

耐力面材、耐力壁をめぐり、4号特例の縮小の影響は必至とみられる。25年4月から省エネ基準の義務化と共に、4号特例が縮小され、その対応が求められる。4号特例では、構造関連規定などについては審査が省力されていた。しかし、住宅の高性能化に伴い、樹脂複層窓など、開口部が重くなり、また太陽光発電パネルなども載るようになり、建物の重量が増えていることに対応して4号特例を縮小、構造仕様を見直す。木造2階建て、200㎡超の木造平屋建ては、新2号建築物として、新たに基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、軸組図などの構造関係規定の図書の提出が必要となる。

4号特例縮小に伴い、壁量基準も変わる。木造の仕様規定を厳格化し、必要壁量は現行基準から概ね1.5倍程度増える見込みだ。また、壁倍率は5倍以下までという現行基準を見直し、壁倍率の上限を緩和、壁倍率5倍を超えるものも使用できるようにする。さらに、柱の太さ(小径)の規定も厳格化する。国土交通省は、必要壁量、柱の小径などを容易に算定できる設計支援ツールを整備。仕様規定の範囲で構造安全性を確認できるルートを新たに設ける。必要事項を仕様表などに記載することで、添付図書の合理化を図る。

一方で、構造計算をした場合は、壁量計算は不要とする。

最終確定した構造関係基準の告示は6月下旬に公表される予定だ。その後、秋頃から全国で実務講習会などを開催し周知徹底を図る。

十分な周知期間を取り、また、設計者、審査者などに十分に準備してもらうために1年間の経過措置を設けることも決定した。年間数棟ほどの住宅を手掛ける住宅会社への周知には時間がかかることを考慮し、1年間の経過措置期間は、従来の必要壁量で計算し確認申請を行うことも許容する。

4号特例縮小に伴い新たに構造審査が求められる新2号建築物は、年間30万戸規模になると見られている。申請する側も審査する側も、確認申請に関する業務量が増大することは必至だ。住宅会社は、仕様規定の範囲で添付書類の合理化を図り、構造安全性を確認するにせよ、構造計算に切り替えるにせよ、新たな対応が不可欠になる。

耐力面材、耐力壁市場も新たな局面に入る。メーカー各社は、壁量基準の変更、必要壁量の増加、また、壁倍率の上限緩和などに伴い、耐力面材の需要が増えていくことを期待する。「既存の耐力壁では構造的に不安があるため、構造用合板を使用し、より構造強度を高めることはできないかという相談は増えている」(日合連)、「25年4月にスタートする住宅の省エネ基準の適合義務化、4号特例縮小を控え、耐力面材へのニーズは高まってきている」(ノダ)、「STPⅡの高倍率仕様が生きる。両面貼りすれば、5倍以上の高耐力も容易に確保できる」(日本ノボパン工業)、「市場のニーズを踏まえて、壁倍率7倍相当の新商品の開発も検討していきたい」(ホクシン)など、様々な声が聞かれた。

構造計算への切り替えが進むことを期待するのは、タナカだ。すでに、木造を手掛ける大手ハウスメーカーを中心に、構造計算をシステム化し確認申請を行うことが主流になっている。30年までに予定される、省エネ基準のZEH水準への引き上げなど、住宅高性能化が進む中で、4号特例の縮小を一つのきっかけに、仕様規定による構造安全性の確認から、構造計算へ切り替えるニーズは、中堅の住宅事業者へも広がっていく可能性は高い。タナカが販売する狭小耐力壁「新・つくば耐力壁〈K型〉、〈X型〉」は、構造計算を前提とする商品であり、構造計算へシフトする住宅会社の裾野が広がっていくことで、自ずとスペックインされる機会も増えていくことを期待する。

有望な中大規模木造市場
耐力面材で新規需要を開拓

市場拡大が期待される非住宅木造の分野においても、より開放的なプランの実現、また施工の簡略化といった目的で、耐力面材、耐力壁への注目度が増してきている。

ホクシンは、中大規模木造市場開拓に向け、3600㎜までの長尺サイズの対応が可能な「スターウッド」を開発した

三井ホームは新ブランド「MOCXION(モクシオン)」を立ち上げ、木造マンション普及の取り組みを加速しているが、その木造マンションを実現するために独自に開発した、国内最高レベルの壁倍率30倍を実現する高強度耐力壁「MOCX wall(モクスウォール)」には、日本ノボパン工業のPBが使用されている。国内で中層の建築物を木造化する場合、コストと施工に大きな手間が掛かることが課題とされてきた。こうした課題を解決するために開発されたのがモクスウォールだ。特殊な材料を使用せず、一般的な枠組み工法の耐力壁と同じ構成にすることで、特殊な工具や技能がなくても組み立てることが可能。また、大断面木材を使用しておらず、容易に組み立てることができ、工期短縮とコスト低減につながる。木造マンションを実現する上で要となる新技術を日本ノボパン工業のPBが陰で支えている。

ホクシンは、中大規模木造市場開拓の一環として、3600㎜までの長尺サイズの対応が可能な構造用MDFを開発した。一般的な耐力面材の高さは3000㎜で、より高い階高が求められる中大規模木造において、高さ3600㎜を確保しようとすれば、プラス600㎜の耐力面材をもう一枚用意する必要があり、受け材を設け、継ぐ手間も余計にかかる。対して、高さ3600㎜の構造用スターウッドを使用することで、高い階高でも1枚で対応可能となり、コスト削減、省施工に貢献する。

日合連も、構造用合板の新規需要開拓の一環として、中大規模木造市場を見据え、厚さ30㎜以上の超厚合板の開発に着手する。令和4年度の林野庁補正予算の補助事業で実施した「超厚合板の開発のための性能試験等の実施事業」事業報告書をとりまとめ24年5月に公開した。合板に関するJAS規格の改正を図ることを目的に技術・製品開発を進め、非住宅木造などに使用できる新構造材など、新たな用途開発を目指す。

耐力面材、耐力壁市場は新たな局面を迎えている。4号特例縮小がスタートする25年4月以降は、住宅高性能化への対応、確認申請手続きの合理化なども踏まえて、より高性能、多機能な耐力面材、耐力壁への需要が高まっていきそうだ。