三井不動産/東北大学、サイエンスパーク構想を本格始動
社会課題解決や新産業創造を目指す
「東北大学サイエンスパーク構想」を本格始動した。業界や分野の垣根を超えた「共創の場」を構築し、社会課題の解決や新産業の創造につなげる。
三井不動産と東北大学はこのほど、「東北大学サイエンスパーク構想」を本格始動した。
同構想は、産学連携によって東北大学が持つ人材や設備などを広く社会に提供することで、イノベーションの創出を目指すもの。先端技術開発に挑戦する企業や大学、研究機関など多様なプレーヤーが集まり、業界や領域の垣根を超えた「共創の場」を構築することで、社会課題の解決や新産業の創造につなげる。
昨今、様々な分野において技術革新が急速に進んでおり、国際的な技術開発競争が加速している。こうした競争のなかで優位に立つためには、企業とアカデミアによる産学連携の取り組みが不可欠と言える。
東北大学は「半導体・量子」、「グリーン・宇宙」、「ライフサイエンス」、「材料科学」などの分野に強みを持つ。また、三井不動産は、これまで宇宙産業など幅広い領域で産学連携を行ってきた。今回、サイエンスパーク構想の実現に向け、三井不動産が培ってきた産学連携の知見を活用するため、両者でパートナーシップを締結。先端技術開発に挑戦する企業などの声を収集し、「共創の場」づくりに反映させることで、世界中から優秀な研究者や企業の誘致を図る。
東北大学は30年ほど前からサイエンスパークの計画を構想していた。これまでに仙台市や宮城県、国と密接に連携しながら、都市計画や用地所得、地下鉄整備などを進めてきており、総事業費約2300億円をかけて同大学の青葉山キャンパス内に4万㎡にもわたるサイエンスパーク型の研究開発拠点を整備しているところだ。この拠点を多様なプレーヤーが結集して新たな社会価値創造を行う「共創の場」として活用していく。
その第1弾として、2024年1月に竣工した新たな研究棟「国際放射光イノベーション・スマート研究棟」と、同2月に竣工した産学連携拠点「青葉山ユニバース」の運用を4月から開始した。
「青葉山ユニバース」には、持続可能な社会の実現に向けた研究を行う「グリーンクロステック研究センター」や、小型人工衛星の開発を行う「宇宙ビジネスフロンティア研究センター」が併設されている。半導体や材料科学、グリーン・宇宙分野などにおいて、同大学と共同研究を行うスタートアップ企業や民間企業などが入居している。
また、27年には5階建て、延べ床面積6000㎡規模の新たな産学連携拠点を竣工予定としており、今後さらに企業などの誘致を図っていく。「30年前からの計画がようやく具現化してきた。この拠点の完成をもって、サイエンスパークの整備はひと段落する」(東北大学 冨永悌二総長)という。
会員組織を新設
業界や領域の垣根を超えた連携へ
今回、「東北大学サイエンスパーク構想」の本格始動に合わせて同構想の愛称を「MICHINOOK(ミチノーク)」に設定。半導体分野など同大学が強みとする学術領域ごとのコミュニティを拡大しつつ、多様なプレーヤー同士の交流・連携をさらに加速させるための会員組織「MICHINOOKコミュニティ」を新設した。組織の運営や会員の管理は三井不動産が担う。会員については、広く多様なプレーヤーに参加してもらえるよう、入会金・年会費が有料となる法人向けの「特別会員 A・B」と、入会金・年会費とも無料の「個人会員」、「学生会員」を設けた。個人会員と学生会員については、既に4月末から会員登録を受け付けている。特別会員については24年8月から登録を開始する予定だ。5年後に特別会員は100社、個人会員と学生会員は合計で5000人の登録を目指す。
定期的にアンケートを実施し、「東北大学と共同研究したい」、「同大学の研究施設などを使いたい」といった反応が得られた企業などを中心に会員登録を促す。現状では、海外の主体へのアプローチが課題として挙げられている。これについては、東北大学が連携している海外の大学が持つネットワークや、三井不動産の海外拠点を活用し、対象候補となる企業などを探る。
会員向けサービスとして①交流・連携機会の提供、②東北大学に関する情報提供、③会員企業による情報発信、④東北大学内の「場」の提供―の4つを展開する。
具体的に①では、領域ごとの最新の研究動向を紹介するセミナーや、複数領域を横断したシンポジウムを開催。東北大学に所属する様々な分野の研究者や、先端技術開発に挑戦する企業同士のオープンな交流機会を提供する。また、会員限定の集まりや、研究者や学生とのマッチングなどクローズドな交流機会も提供し、個社ごとのニーズに合わせたイノベーション創出の環境整備も行う。
三井不動産の植田俊代表取締役社長は、「東北大学という既存のコミュニティをベースに、プラットフォーマーとして多様な主体が連携する『共創の場』づくりに貢献していく」と意気込んだ。
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