2024.4.19

LIXIL、省エネ住宅シミュレーションにHEAT20対応機能

高断熱住宅の加速に説明力での差別化を推進

「LIXIL省エネ住宅シミュレーション」にHEAT20の地域補正機能を追加。
住宅の高断熱化が進むなか、施主に対してどれだけ説得力を持った説明ができるかが一つの重要なポイントとなりそうだ。

同社は2018年に「LIXIL水道光熱費シミュレーション」を、住宅の省エネ計算が簡単にできる省エネ計算ソフト「LIXIL省エネ住宅シミュレーション」(以下、省エネ住宅シミュレーション)に全面リニューアルし、提供を開始している。外皮性能から一次エネルギー消費量の計算までを一気通貫で行えるほか、入力した条件で省エネ住宅を建設した場合の水道光熱費の削減効果などをわかりやすくまとめたエンドユーザー向けの提案書作成も行える。

そして今回、HEAT20の地域補正による建設地に必要な断熱性能値を簡単に計算する機能を追加した。

HEAT20は、住宅・建材生産者団体や有識者で構成する組織で09年に発足。住宅の断熱性能に対する関心の向上を目的に、国の省エネ基準を上回る外皮性能の検討や技術開発、断熱化された住宅の普及啓発活動などを行っている。同組織が地域区分ごとに出す住宅外皮水準などを用いた「住宅シナリオ」の達成は、社会的背景や、断熱に関する技術、コストなどを踏まえ健康的な温熱環境と省エネの両立が図れる断熱水準として高断熱住宅への取り組みにおいて一つの指針となっている。

HEAT20では省エネに加え、冬季の室内温度を考慮している。そのため、LIXILでは、より快適な住宅環境を実現でき、施主に住宅の高断熱化で得られるメリットを訴求する際にも具体的な室内温度や光熱費の変化の話ができるHEAT20基準での家づくりを推奨している。
一方で、サッシ・ドア事業部の安藤英之氏は「例として示されている代表都市のUA値を基準にしている住宅事業者様が多く、地域補正についてはあまり知られていない」と指摘する。

HEAT20では、「代表都市以外での外皮平均熱貫流率UA値は、別途地域補正する必要がある」としているが、多くの事業者は代表地域のUA値を基準値として捉えているのが現状だ。

例えば、6地域において、代表都市の東京ではG2水準を満たすために必要なUA値は0.46となっているが、同じ6地域の静岡県浜松市では、必要なUA値は0.51と代表都市よりも緩和することが可能だ。反対に、石川県金沢市では、G2水準を満たすために0.38のUA値が必要で、代表都市の値で家づくりをすると性能が不足する。つまり、同じ地域区分に属していても、各地域によって必要なUA値は異なるのがHEAT20本来の考え方である。

新機能では、最寄りのアメダス観測所と必要なUA値がひと目で分かる

同社は、地域補正での計算が広まらない理由のひとつとして、計算の煩わしさを挙げる。これまでも、HEAT20はサイト内に地域補正へ適合しているかを判定する「外皮水準地域補正ツール」を用意していた。しかし、あくまで適合の可否を判定するものであるため、不適合の場合は、事業者が数値を入れ直して、都度、確認する作業が必要であった。また、建設地の最寄りのアメダス観測所が一目で分からないという課題もあった。

一目で地域に適した数値が分かる
標高順、暖房負荷順などにも対応

今回、LIXILが「省エネ住宅シミュレーション」に追加した機能は、こうした手間を省き、一目で適合数値を確認できるようになっている。

建設地の住所を入力すると、マップに近隣のアメダス観測所が表示される。アメダス観測所ごとに、HEAT20のG1、G2、G3それぞれを達成するためにはどれだけのUA値が必要か、暖房負荷はどのくらいかを確認することができる。

アメダス観測所は、建設地からの距離順のほか、標高順や暖房負荷順で並び替えができる。例えば、HEAT20の住宅システムの認証を取りたい場合は、近隣の3~4地点から最も暖房負荷の高い地点を選ぶ必要があるが、その場合は暖房負荷順にすることで、目標値をスムーズに把握できる。最寄りの観測所との標高差が大きい場合は標高順で観測値を探すなど、住宅を建設する地域の気象条件などに合わせて参考地点を選べる。

今回の機能追加にあたっては、HEAT20とも意見交換を重ねているが、団体でも地域補正の認知度拡大に難しさを感じていた部分があったようで、同社のツールは好評だという。

LIXILは、地域補正の正しい認識を広めるために講習会も行っているが「省エネ住宅シミュレーション」の登録ユーザーを対象に案内メールを配信した結果、すぐに500件を超える応募があったといい、住宅事業者からの注目も大きそうだ。

25年から適用される住宅の省エネ基準適合義務化に伴う、適合性審査において、仕様基準を用いた場合は審査を免除されるため、仕様基準の広まりも考えられる。しかし安藤氏は「省エネ基準の適合判定の際には、仕様基準で申請をするのが効率的な場合もあるが、エンドユーザー様への説明は計算を行いしっかりと数値化することが差別化となる」と、使い分けが重要だとした。地域補正についてもそのひとつであるとしており、高断熱住宅が当たり前となりつつあるなか、いかに具体的な提案ができるかがポイントなっていくと考える。「ツールを使用すれば簡単に計算ができるので、省エネ住宅シミュレーションを活用して、性能の高い住宅づくりに役立ててほしい」(安藤氏)。