2024.4.18

「現代・和室の会」が設立 新たな和室文化を継承する総合的な活動を展開

和室をユネスコの無形文化遺産に

現代・和室の会」が設立された。
日本建築学会の会員を中心とした8年にわたる〝和室〟探求の活動を経て生まれた集団で、一般市民から専門家まで、広い総合的な分野の31人で構成。
日本で生まれた古き良き伝統である和室の新生のために様々な活動を展開していく。
活動の先に和室がユネスコの無形文化遺産として登録されることを目指す。

現代・和室の会」は、和室を中心に生まれた和室文化を把握し、同時にその固有の価値や多義的意味を解き明かしながら、和室の重要性を示し、無形文化遺産として国際認知されることを目的とする。そのために、失われつつ和室を保護し、また、新たな和室文化を継承する総合的な活動を行う。和室の造り手の生活を守り、更新を育成することを重視する。和室文化とは、和室の建築の歴史や文化、およびその背景にある知恵の積み重ねと成立文化を理解しつつ、気候風土に適した居心地の良い、美しく、健康的な空間を味わえる習慣や美意識のある生活のことを指す。

3月26日、東京都文京区「茗渓館」で開催した「現代・和室の会」の設立総会に参加した同会役員

この目的を達成するため、また、会員の拡充、資質の向上、交流するため、「和室に関する調査研究」、「和室文化に関連・隣接する産業分野との協働事業(技術者教育など)」、「和室文化に関する講演会、研修会、展示会、並びに見学会などの開催」、「和室文化に関する、子どもから大人までを対象とした教育普及活動」、「和室文化維持のために必要な政策、制度などの提言」、「ホームページによる情報発信、出版の実施」などを行う。

2024年3月26日の設立総会で会長に就任した神奈川大学特任教授の内田青蔵氏は、「私の専門は、建築の歴史であり、特に近代の住宅、いわゆる日本の住宅が洋風化されてくるプロセスを研究しているが、戦後の建築家たち、あるいは事業者たちが提案してきた和室に着目すると、どのような和室をつくろうとしてきたのか、あるいは伝統性をどのように継承していこうとしていたのか、様々な試みが実はたくさんあることに気づかされる。そうしたものを改めて検証することによって、これからの新しい未来に向けた和室を研究していく必要があると感じている。『現代・和室の会』の活動を通じて、『和室文化』を総合的に把握し、その価値や多義的意味を解き明かしながら、未来に向けた新たな『和室文化』を構築していきたい」と述べた。

「新しい未来に向けた和室を研究していく必要がある」と話す「現代・和室の会」の内田会長
神戸芸術工科大学の松村学長は「『現代・和室の会』を小さく生んで大きく育てていきたい」と挨拶した
千葉大学の服部名誉教授は「新しい時代の和室、時間を超えていく場所をつくっていきたい」と述べた

また、日本建築学会で”和室”探求の活動に参加してきた、神戸芸術工科大学学長の松村秀一氏は、「私たちの年代あるいはそれより上の年代の方にとって和室はあまりにも普通のものだったが、急速に減っている。近い将来なくなってしまうのではないかという危機感があり、2017年に建築学会の中に特別委員会をつくり活動してきた。その当時から、和食がユネスコ無形文化遺産になっているのと同じように、和室を無形文化遺産にできないかということを話してきた。最終的には和室は形を変えていくかもしれないが、私たちの生活文化、建築文化として今後ずっと継承していける、あるいは発展させていける活動ができる会をつくることが適切な時期になっている。任意団体として『現代・和室の会』はスタートする。小さく生んで大きく育てていきたい」と挨拶した。

同じく日本建築学会で、”和室”探求の活動をリードしてきた千葉大学名誉教授の服部岑生氏は、日本の住まいは竪穴式住居から始まっていることをあげ、和室との関連性を解説した。「竪穴式住居には、入り口と奥しかないシンプルな空間でありながら、その奥には、そこに住んでた人間の、出産の後の生理的な物体が一番奥に埋められている場所があった。大切なもの、家族の証、人間の証みたいなものが残されていた。奥に行くほど神聖さを増していく、そうした考え方、文化は、和室の書院造の空間などにも通じるものがあったが、戦後、失われてしまった」と解説。「忘れられた和室の文化を思い出し元に戻っていくことが重要ではないか。高名な音楽家は、『時代を超えて音楽が残っているのは、音楽家たちが時代を超えた音楽をつくったからだ』ということを言っている。同じように、我々も、この会の活動を通じて、生産の合理性や経済の効率性ということではなく、もっと深い暮らしの意味合いを考え、時間を超えて継承できる新しいもの、新しい時代の和室、時間を超えていく場所をつくっていきたい」と述べた。

現代・和室の会」のホームページも開設した

ワタリウム美術館で和室をテーマに連続講座を開催

現代・和室の会」は、2024年度の活動の一環として、東京都渋谷区のワタリウム美術館で「新・和室学2024」と題した4回連続の講座を実施する。それぞれの回のテーマは、第1回(4月26日)は「和室学のススメ&和室のメタファー」(講師:松村秀一氏&服部岑生氏)、第2回(5月31日)は「和室の成り立ち」(講師:小沢朝江氏)、第3回(6月28日)は「茶の湯空間と自然」(講師:桐谷邦夫氏)、第4回(9月27日)は「近代和室住宅にみる和室」(講師:内田青蔵氏)。また、7月20日に見学会「鎌倉・旧山本条太郎邸+旧田島屋材木店」(講師:小沢朝江氏)を開催する。