2024.2.13

ジャパンホームシールド、能登半島地震の地盤被害調査を報告

再液状化や側方流動で大きな被害

地盤調査事業を展開するジャパンホームシールドが、令和6年能登半島地震の被害調査の結果を報告。再液状化などの状況を踏まえ提言を行った。

ジャパンホームシールドは、1月10日~12日にJHS地盤技術研究所研究員4人、技術部社員2人で現場踏査による被害状況の目視確認と机上調査を行った。調査エリアは石川県(金沢市、かほく市、内灘町)、新潟県(新潟市中央区、港南区、西区、上越市、糸魚川市)、富山県(富山市、高岡市、氷見市)である。これら日本海沿岸の砂丘海岸付近は、海岸砂丘が発達し、その内側に旧河道や湿地が分布する平野部が存在し、この平野部において被害が集中している。
調査報告は、今回の地震で特徴的であった「液状化被害(再液状化)」、「人工地盤」、「側方流動」という3点で行われた。

今回、石川県、富山県、新潟県など広いエリアで液状化が発生した。地震の規模が大きかったこと、ゆっくりとした揺れが遠方までエネルギーを失わずに伝わる長周期地震動であったことがその原因と考えられる。そのうち液状化被害が多く発生した新潟市中央区川岸町における信濃川の旧河道のエリアは、1964年の新潟県地震で液状化現象が起きた場所で、液状化は一度発生したら二度と起こらないのではなく、「条件が揃えば再度液状化する」(地盤研究所・酒井豪所長)ことが確認できたという。

地割れ、マンホールの浮き上がり、家屋の沈下・傾斜、噴砂跡など液状化による被害( 石川県内灘町宮坂)

もう一つのポイントが、液状化被害が起きたエリアで多かった地形が、砂丘や堤間湿地、河道を造成した人工地盤であったことだ。

例えば、新潟県港南区の液状化したエリアは信濃川の旧河道に砂を盛土した地盤。もともと水田であり地下水位が浅く、砂+浅い地下水という液状化の発生条件が揃った場所であった。また、内灘町は標高50mの砂丘から大規模に砂を採取した跡地であり、相対的に地下水位が浅くなった場所だ。

同社では「旧河道など地下水位が浅い造成地、切土により地下水位が浅くなる造成地は注意が必要」(酒井所長)としている。

また、内灘町の液状化マップによると液状化危険度は5段階中3であり、大まかな地形区分で作られた液状化マップでは把握しきれないエリアが存在することも分かった。「マップだけではなく調査なども踏まえた総合的な判断」(酒井所長)が重要となる。

もう一つ、側方流動による住宅などの被害も明らかになった。側方流動とは、傾斜地などで液状化が発生すると表層の地盤が水平方向に変異する現象。この動いた地盤の上にある住宅などの被害が大きくなる。内灘町の内灘砂丘周辺で液状化現象による側方流動が起こり、地割れ、地盤沈下、噴砂などが広く確認された。側方流動により表層地盤が押し出され、家屋倒壊、側溝・マンホールの浮き上がりなど甚大な被害が出ている。斜面裾部は地下水位が浅く液状による側方流動に注意が必要だと指摘した。

同社では、「条件が揃えば液状化は起こる。液状化マップや液状化履歴などからその可能性を知り、調査により危険度を知ることが大事」(酒井所長)と、まず“知ること”の重要性を説き、「リスクを知ることで抑止工事や地震保険加入などの検討につなげてほしい」(酒井所長)と提言した。