気密市場が急拡大

気密部資材、気密測定の提案が活発化

気密をめぐる市場が好調だ。
気密シート、気密テープ、簡易部品など気密を確保する部資材だけでなく、気密測定の件数が右肩上がりで上昇するなか測定機の販売も好調だ。
高断熱化が急速に進むなか、高性能住宅を実現する上で両輪となる気密への関心が急速に高まっている。


住宅の高断熱化が進むなか気密市場が急拡大している。

2022年に住宅性能表示制度にZEH水準である断熱等性能等級5が、そしてさらに上の性能である等級6・7が新設された。25年には省エネ基準への適合が義務化され、30年にはその基準はZEHレベルへと引き上げられる予定だ。数年後には日本の住宅の最低基準がZEHレベルとなることが見込まれるなか、差別化の意味からその先を見据えた上位等級対応の動きが広がっている。もはや等級6を標準とする家づくりは決して珍しくはなくなってきている。

こうしたなか、近年、気密に対する関心が急速に高まってきた。気密性能は住宅性能表示制度にも位置付けられておらず国の基準は存在しないが、高性能な家づくりに断熱と気密は両輪であり、どちらが欠けても快適な暮らしは実現できない。

住宅の高断熱化が加速するなか、これまで気密を重視してこなかった住宅事業者が気密を考え始め、また、より高い断熱性能へとレベルアップする住宅事業者がさらに細かな部分の気密処理を行うようになっているのである。

今、新築市場は厳しい状況にあるが、棟数が減るなかでも気密をめぐる市場は活況を呈している。

使用部位が拡大し
気密部材の販売が好調

マグ・イゾベールは、グラスウール断熱材メーカーだが、世界最大級の建材グループ「サンゴバン」の強みを生かし、調湿気密シート「イゾベール・バリオ エクストラセーフ」や気密テープなどで構成する、ヨーロッパ由来の先進的な気密システム「イゾベール・バリオ・シリーズ」を展開している。「ヨーロッパでは気密性はもちろん、調湿という考え方も当たり前であり、日本でもそのような住宅づくりを推進する」(魚躬大輝・住宅商品戦略マネージャー)と、断熱と気密をセットとする提案を行っているものだ。

これまで「バリオシリーズ」を採用してきた住宅事業者は、防湿層がないグラスウールである「イゾベール・コンフォート」に防湿気密シートを別張りして断熱・気密性を高めてきた事業者が多い。つまり一定以上の高断熱を実現するうえで、さらに細かな部分の気密の確保は必須という考えだ。

一方で、断熱性向上の動きが加速するなか、ユーザーにも広がりが出てきている。こうしたなか日本気密測定推進協会に賛助会員として参加し、セミナーなどを通じてグラスウールによる断熱と気密についての啓発セミナーを実施するなど、住宅事業者に対する情報提供に力を入れている。「グラスウールの断熱では気密が取れないのではないか」といった誤った認識もあるといい、特に断熱・気密の正しい施工についての理解が重要になっているようだ。また、顧客である住宅事業者から気密測定をしたいという相談が増えるなか、協会を通じて全国の測定事業者を紹介する対応も図っている。

日本住環境は、さまざまな気密部材を扱うが、これら全体の売上高は5年前から3割増、毎年平均で7%程度の増加を続けている。なかでも販売が好調なのが気密テープ類と「バリアーボックス」や「ドームパッキン」といった気密簡素化部材だ。在来軸組住宅は耐震性向上を目的に耐力面材や剛床工法の採用が当たり前になっていることから、テープによるボードの気密処理が増えている。また、より気密性を高めるためコンセント周りなど貫通部の気密処理が求められ、施工品質の標準化を目的に気密簡素化部材が求められている。

同社は住宅事業者に対して、高気密・高断熱、さらには換気システムの「ルフロ400」をセットに快適な住まいづくりを提案する。心地よい家づくりのトータルソリューションであり、気密や換気はそのための手段という位置づけだ。昨年10月にパンフレット「断熱等級を知り 後悔しない家づくりを」を発刊、断熱等性能等級6・7の新設を踏まえ、これからの省エネ、健康、快適な家づくりを訴求する。ここでは断熱だけでなく気密も含めてトータルで高性能住宅の必要性やメリットを解説している。

さらに同社の広報部が運営するYouTube「イエのサプリ」で居住者の健康や住宅を長持ちさせるための情報などを発信しており、特に気密に関する情報を充実させている。登録者数は約2.5万人で、総再生回数725万回超えのチャンネルである。

「気密は、C値をただ高めれば良いというわけではなく、24時間換気もただついていればよいわけではない。住まいの快適という目的を踏まえ、住宅全体を考えることが重要」(営業本部 マーケティング部 昆克実主任)と、その情報発信に力を入れる。

日本住環境の気密簡素化部材「バリアーボックス」。隙間が空いてしまうコンセント周りの気密処理が簡単に行える

気密市場が広がりを見せるなか、断熱材と透湿シートの接合や開口部、配管まわりに使用する気密テープの引き合いも好調だ。光洋化学は、30年ほど前に気密テープ業界で他社に先駆けてアクリル系粘着テープを開発したパイオニア。「エースクロス011」を中心とする「エースクロスシリーズ」の出荷量は年々増加傾向にあり、特に北海道や東北など寒冷地での引き合いが多いという。近年ではホームセンターなどにも流通を広げ、リフォーム需要なども堅調に推移している。

アクリル系粘着テープが登場する以前はブチルテープが一般的であったが、手切れの良さを含めた施工性の高さからアクリル系粘着テープが広がり、先駆者である光洋化学の「エースクロスシリーズ」はブランドや実績により市場で高く評価されている。

「スパンエースGⅡ」は耐久性に優れたアクリル系強力粘着防水・気密テープ。高い耐久性と施工性に優れ、柔らかで縦横に伸び凹凸がある被着体にフィットすることが大きな特徴だ。アクリル系の強力粘着剤を使用するため粗面にもよく付き、夏期・冬期を問わず強力に接着する。また、薄いため重ね貼りにも最適だ。ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、可塑剤などを一切使用しておらず環境にもやさしい。

エービーシー商会が展開する断熱・気密性を高める1液タイプの発泡ウレタンフォーム「インサルパック」も好調だ。高断熱化とともに気密の意識が高まるなか、配管まわりやボード系断熱材の継ぎ目、窓まわりなどに吹き付けることで手軽に気密を取ることができる。

C値をアピールする住宅事業者が増えるなか、棟数だけでなく、これまで使用していなかった部位への使用が増えていることから出荷量の増加が続いている。例えば、サッシまわりの充填や付加断熱の屋根と壁の取り合い部などである。また、等級6を目指し基礎断熱が増えていることもある。また、床下に換気設備を設置する場合、その配管まわりにも使用される。住宅の断熱化が進むなかで色々な工法が登場していることにともない、これまでになかった部位の気密処理が求められているのである。

「インサルパック」のなかでも最近特に販売が伸びているのが低発泡の「エラスティックフォーム」のガンタイプと「防蟻フォーム」だ。

「エラスティックフォーム」の発泡倍率は1.1~1.2倍程度と膨らみすぎないのが大きな特徴。施工箇所が変形し過ぎないことから窓まわりの気密施工に適し、施工後の余剰箇所をカットする仕上げ作業も不要だ。使用する部位が増えるなかガンタイプの需要が伸びている。異なる部位の施工は日にちをまたいで行われることから、使いまわしのできないノズルタイプからの切り替えが進んでいるようだ。産廃の削減につながることも好評だ。

また、「防蟻フォーム」は、発泡ウレタンフォームに防蟻性能を付与したもので、防蟻と断熱を同時に処理することができる。基礎断熱の採用が増えているが、これまでその隙間にグラスウールをちぎって充填するケースが多かった。インサルパックであれば吹き付けにより手軽に気密施工ができ、躯体内結露の予防になる。シロアリは高温多湿を好む性質にあるので、物理的な侵入防止だけでなくシロアリの住みにくい環境をつくるという点でも対策につながる。

「エラスティックフォーム」と「防蟻フォーム」は「インサルパック」シリーズのなかでも付加価値製品に位置づけられるものであり、他社との差別化に結びついている。「価値ある商品を提案することで、新築市場が縮小するなかでも採用の増加につなげていく」(インサル事業部・佐藤佳信課長)と、その訴求に力を入れている。

防湿フィルムは別張りへ
夏型結露対策で可変シートも伸長

気密市場が広がりつつあるなか、高気密・高断熱住宅の必須アイテムともなりそうなのが可変透湿気密シートだ。温暖地における木造住宅の壁断熱には一般的にグラスウール断熱材が使われている。これまでは防湿フィルムに包んだグラスウールが多く使われてきたが、より気密をしっかりと確保するために各メーカーは防湿フィルムで包まれていない、いわゆる裸のグラスウールを充填し、防湿フィルムを別張りする工法を推奨している。

一方、温暖地における断熱性が向上し、夏場の温度が上昇するなか逆転結露のリスクが高まっており、その対策として防湿+透湿の性能を持つ可変透湿気密シートの採用が広がりつつある。

マグ・イゾベールは、住宅性能表示制度に断熱等性能等級6・7が新設され、ZEHレベルを超える断熱化の取り組みが広がるなか、同社は「等級6”+”(プラス)」プロモーションを展開する。5~7地域での等級6であれば高性能グラスウールの充填断熱だけでも対応可能で、そこから最高等級7の実現に向けてワンクッション置くという考え方だ。さらに等級6を24時間全館空調に必須な断熱レベルとし、そこに「+(プラス)」することでより省エネで快適な暮らしを実現できると提案している。目安は5~7地域でUA値0.4前後と、等級6の同0.46を少し上回る程度だ。

この「等級6”+”(プラス)」の前提となるのが断熱と気密である。このレベルまでいくと、防湿層無し高性能グラスウールと防湿層の別張りが必須で、例えば、5~7地域の推奨仕様例は、壁は「イゾベール・コンフォート」の充填105㎜に調湿気密シート「イゾベール・バリオ エクストラセーフ」の別張りに加え、「付加断ボード」による付加断熱が必須となっている。

「イゾベール・バリオ エクストラセーフ」は、防湿と透湿の性能を併せ持ち年間を通じて躯体内の湿気を調整できるいわゆる可変透湿気密シート。夏型結露対策が大きな注目を集めるなか22年の売上は約2倍と大きく伸ばし、今年度も使用される割合が同約10ポイント増で推移してきている。「等級6”+”まで目指せば、当然、気密対策の重要性が増し、夏型結露への配慮が必要になる」(魚躬マネージャー)と、「イゾベール・コンフォート」と「バリオシリーズ」のセットに対する住宅事業者の反響は大きいという。

産業用プラスチック資材の製造・販売を行う酒井化学工業は、ポリエチレン製の防湿気密シート「ハウスバリアシート」、可変透湿気密シート「調湿すかっとシートプレミアム」を展開している。

23年の気密シート全体の出荷量は前年比5割増で「正直、ここまで増加するとは考えておらず、予想以上の伸び」(常務取締役 笹本洋一・営業開発部長)と、好調に推移している。気密シートは、防湿層がないグラスウール断熱材やセルロースファイバーを充填断熱する際に使用される。袋入りのグラスウールが普及している温暖地において、断熱性能を高める目的で裸のグラスウール+別張り気密シートを行う住宅事業者が増えてきたことが背景にあるようだ。

なかでも大きな注目を集めるのが「調湿すかっとシートプレミアム」で、22年は前年比10倍増、23年も2倍~3倍程度の伸びで推移している。出荷数量そのものはまだ大きくないとはいうものの、急速に販売量を伸ばしている。22年に国土交通省が「断熱等性能等級における結露の発生を防止する対策に係る内部結露計算等の取扱い」を通達、内部結露の計算条件が厳しくなった。これにより、結露判定の条件変更前では不要だった防湿シートが必要になるケースも出てきている。こうしたなかで透湿抵抗が高い防湿気密シートが求められ、性能の高い「調湿すかっとシートプレミアム」が有利に働き採用につながっている。

「調湿すかっとシートプレミアム」は、夏季に湿気を通すことが大きな特長で透湿性に優れるセルロースファイバーとの相性もよく、セルロースファイバーを採用する住宅事業者が可変透湿気密シートである「調湿すかっとシートプレミアム」を採用する動きがある。また、全国的に夏の気温が高くなるなか、寒冷地でも夏型結露に対する問題意識を持つ住宅事業者が増えており、同商品に切り替えるケースも出てきているという。

同社は、これまで「調湿すかっとシート」と「調湿すかっとシートプレミアム」の2つの可変透湿気密シートを展開していたが、23年末に「調湿すかっとシート」を進化版の「調湿すかっとシートプレミアム」に統合し供給力を向上し、さらなる普及に注力している。「ハウスバリアシート」を普及品、「調湿すかっとシートプレミアム」を上位商品と位置づけ、住宅事業者に対して両商品を使用した壁内結露シミュレーションを行い提案している。非定常熱湿気同時移動解析プログラム「WUFI pro」を用い、さまざまな気象条件下で3年間のシミュレーションを実施する。「安心感を提供することにより、住宅という大きな買い物について正しく判断いただけるよう」(笹本部長)、同サービスを提供している。

また、「調湿すかっとシートプレミアム」はパラマウント硝子工業へ供給しているが、こうした連携を深め温暖地域での市場開拓に力を入れる。

2050年カーボンニュートラルを踏まえ住宅の断熱性向上への取り組みは今後も加速、温暖地でも断熱仕様が変化すると捉えており、防湿/調湿気密シートのニーズがより高まっていくと考えている。

ユーザーニーズの後押しで広がる気密測定

気密に対する関心が高まるなか気密測定への取り組みも急速に広がっている。

日本住環境が22年に実施した気密測定件数は2893件、前年比3割以上の増加と大幅に増加、過去最高を更新した。5年ほど前から施主からの要望を受けた住宅事業者からの気密測定に対する問い合わせや相談が増えており、特に大手ビルダーで全棟気密測定を打ち出す動きが始まっている。施主の気密測定に対するニーズの高まりが住宅事業者の対応を促しているといっていいだろう。

同社は各営業所に気密測定機を一台ずつ装備、計17台を保有するが、ほぼフル稼働の状態だという。有料で気密測定を行っているが、その目的は住宅事業者への気密の提案を通して再現性を実現してもらうことにある。住宅の仕様や現場の特徴を踏まえ最適な方法、また、現場の負担をなるべく抑える提案を行い、気密測定でその効果を検証する。気密仕様づくりのサポートを通じて住宅事業者に気密処理のノウハウを得てもらう。

また、ヤマイチ(富山県富山市、廣瀬貴志社長)は気密測定器「ドルフィン2」を販売する。購入者は工務店、断熱施工会社、断熱材メーカー、建材商社、気密測定事業者などであるが、特に近年は工務店の採用が増加しているという。気密測定を標準化し差別化につなげようと「全棟気密測定」を謳う工務店が増加していることが要因だ。気密測定を外注すれば一回当たり5万~7万円程度、中間時測定と完成時測定を行えば10万~14万円程度かかるということだ。ある程度の供給規模を持つ住宅事業者であれば自社で測定器を購入して行った方がコストを抑えることができる。

「ドルフィン2」は、軽量コンパクトで一人でも持ち運べることが大きな特徴。従来機は全長1440㎜、重さ約15㎏であったが重量は8㎏と約半分になった。トートバックに収納して持ち運ぶことができ、作業時に住宅を傷つける心配も軽減する。操作はタッチパネル式のため初心者でも簡単に測定することができ作業効率が高く、測定データはその場でUSBメモリに保存することが可能で、データをパソコンに取り込み、必要な項目を入力するだけで報告書が作成できる。自動測定も可能で、「自動」ボタンを押すだけで差圧5点観測、データ分析、データ保存までの一連の測定を自動で行うことができる。

手動測定も可能で、どちらもC値0・1㎠/㎡まで測定することができる。コントローラー内蔵Wi‐Fiで接続したスマートフォンで自動測定中の状況をリアルタイムでモニタリングしたり、測定値の移動平均値の調整、測定ファイルの自動保存・再生などが可能となっている。

目指すC値にあわせ、軽量・コンパクトな「Air」、C値目安0.1~2.0の「Pro100」、同0.3~7.0と既存住宅向けの「Pro200」、Pro100と200をあわせた「ProFull」の4タイプをラインアップする。

ヤマイチが気密測定業務と測定方法基準のスタンダード化を目的に21年4月に立ち上げ、22年6月に本格的に活動を開始した団体が日本気密測定推進協会だ。「気密測定器を販売することがゴールではないと考えた。気密測定を基準に則って行われた根拠ある気密住宅はまだまだ少なく、測定が行われない”おそらく気密住宅になっているだろう”という住宅が多数を占めている」(平林篤 事務局リーダー)という危機感を持って設立された。現在、パートナー会員は88社で工務店やビルダーと測定事業者が半々程度。設立当初は25年頃に100社を目標としていたが、予想を大きく上回り大きな反響となっている。

同協会の活動は、気密測定の普及、気密測定者・気密測定事業者の増加促進、全国一定の測定品質など。気密測定者のスキルアップなど研修制度を通じた人材育成を進める一方で、測定が収益事業として成立するようなノウハウ提供を進める。また、全国一律の測定品質の実現を目指し、協会という第三者の立場でチェックを行い測定方法を保証する保証書も発行する。

また、賛助会員として断熱材メーカーやサッシメーカーなど8社が参加しており、これら企業とコラボした工務店やビルダー、測定事業者などに向けたセミナーを定期的に開催、気密測定の重要性などについて発信を行っている。

気密測定の需要が拡大するなか、もっと手軽に気密測定が可能な新たな測定機の開発も進む。

マツナガ(東京都練馬区、松永潤一郎社長)は、2月9日にこれまでになかった新しいタイプの気密測定機「シーチア」を発売した(受注生産)。ものつくり大学の松岡大介教授発案により生まれたもので、キッチンのレンジフードに取り付けるだけで測定が可能となる簡易気密測定器だ。機器など必要な荷物が多く持ち運びが重い、一人では設置に手間がかかる、そして機械の初期投資がかかるなど、これまでの気密測定の課題を解決し、その手間を大幅に軽減する。

レンジフードに測定器がついたビニールのフードカバーをマグネットや養生テープで取り付けるだけで済み、設置時間は従来の約3分の1以下。重量は1~2㎏程度、総重量7㎏程度でバッグ一つに納まるコンパクトさだ。

また、測定にはスマホ専用アプリを使い、画面の指示通りに情報や測定数値を入力するとC値や通気率などが表示されるので簡単に測定が可能。「初心者でも扱えるように簡単に、しかし漏れがないように」(松永社長)と工夫した。価格は49万8000円と従来品の約半分以下であることも大きなポイントだ。

レンジフードの弱・中・強の切り替えボタンにより3点の測定を行うが、JISでは5点測定を求めており、公的な数値にはならない。しかし、マツナガはこれまでに27棟の測定を行い収集したデータを分析してきており、必要十分な測定結果が得られているという。また、レンジフードの吸い込み口を目張りすることで5点以上のデータを測定すればJISへの対応も可能となっている。

マツナガは、これから気密測定に取り組もうとしている一定以上の供給量を持つビルダー、全棟検査を訴求しようとしているビルダーに向けて「シーチア」をアピールしていく。また、リノベーションで断熱・気密改修を行う際、気密工事をしながら測定して効果を確認することが可能など、”手軽さ”を生かした使い方などを提案していく考えだ。受注生産で納期は1~2カ月程度かかるという。

「シーチア」は、C値の厳密な測定よりも”手軽さ”を重視する。それは住宅の気密と気密測定をもっと一般的に広げるということが目的だからだ。HEAT20の躯体WG主査も務める松岡大介教授は「今後、気密をしっかりと取り、それを測定で証明することは当たり前となり、行わない事業者は淘汰されていくだろう」と語る。ただ、それはC値の数値そのものを競うためではない。「気密をちゃんと確認して引き渡すということ」が重要なのだと指摘する。C値0.1、0.2を競うのではなく、気密をしっかりと行うこと、測定により確認すること、それを住宅事業者が当たり前に取り組むために、手軽な簡易測定器が必要であったのである。

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断熱と気密の性能向上の取り組みが急速に拡大している。ただ、これらの目的はUA値やC値の数字を達成することではなく、省エネはもとより快適で健康的な住まいを実現し、暮らしをより豊かにすることだろう。そのためには断熱・気密の向上と同時に通気や換気の配慮が求められる。住まい全体の温熱環境、空気環境を整えることこそゴールだ。

省エネ基準適合義務化、等級6・7への取り組みの拡大など、住まいづくりをめぐる環境は大きく変わりつつある。その中で新たな工法の採用、新たな建材や部品の開発も相次ぐ。今、住まいづくりは大きな転換期を迎えているといっていい。こうした動きのなかから、新たな日本の住まいの形が浮かび上がってくるはずだ。