2024.2.14

アールシーコア、CLTログハウスで都市木造市場開拓へ

“純木製構造”で施工負担を軽減、コスト削減効果も

ログハウス国内シェアトップの「BESS」ブランドを展開するアールシーコアは、CLT構造において「木材現し」かつ「石こう等の燃え止まり層なし」で90分の準耐火構造認定を取得し、東京都福生市、牛浜駅徒歩1分の、規制が最も厳しい防火地域で日本初の3階建てログハウス「牛浜ビル」を建設した。工期短縮、寸法安定性の向上、コスト削減などの効果が見込めるCLTログハウスの強みを生かして都市木造市場を開拓していきたい考えだ。

自然乾燥させた加工度の低い丸太を用いて交差する壁(ログ壁材)を積み上げてつくる従来のログハウスに対して、進化したCLTログハウスは、CLTパネルを1段200㎜~400㎜程度のログ壁材として積み上げる。CLTによるログ壁の活用により長尺材の利用、高精度な機械での同一断面の加工、施工性の向上、工期短縮、寸法安定性の向上などのメリットが生まれる。

また、CLTを使用することで従来のログハウス特有の「セトリング」という現象がほぼ起きないため、設計・施工がしやすく、開口部デザインの自由度も向上する。セトリングとは、伐採された木材が、空気中の湿気と木材の含水率がつり合う平衡含水率になるまで乾燥の進行により収縮するためログ壁が縮むこと。生の丸太を加工し組み上げるハンドカットのログハウスでは建築後5年間で、荷重により壁に高さが3%程度、3mで約10㎝縮む。一方CLTのラミナは製造工程で平行含水率以下に乾燥されており、乾燥収縮はほとんど発生しないため、セトリングはほぼ起きない。

こうした強みが支持されて、住宅用はもちろん、幼稚園や介護施設など、非住宅分野においてもCLTログハウスの建築実績は増えている。

90分準耐火構造で3階まで建築可能に

「木材現わし」のログハウスは、従来は防火の法律で、防火地域では2階までしか建築ができなかったが、2023年2月に「90分準耐火構造認定」を取得することで、CLTログハウスとして3階までの中層ビル(個人住宅、共同住宅、低層ビル、商業施設など)の建築が可能になった。今回の「牛浜ビル」では外壁には国産桧で幅210㎜×高さ200㎜のCLTログ材を使用している。また、内壁(間仕切り)には国産桧で幅120㎜×高さ200㎜のCLTログ材を使用。圧倒的な木質感をもたらす。

2023年4月に着工、12月に竣工した。延べ床面積は564㎡(各階188㎡)で、1階はオーナーである電気工事店、純電工(髙橋勲代表取締役社長)のオフィス、2、3階は賃貸住居(全8戸)となる。賃貸住居各戸の専有面積は約40㎡、家賃は11万円~12万円台と周辺相場に比べ約2倍に設定している。竣工後、募集を開始。多くの問い合わせがあり、8室中6室が入居済となっている。
純電工の髙橋社長は、当初RC造での建築を考えていたが、コスト競争力の高いCLTログハウスでの建築に変更した。木造とすることで地盤改良にかかるコストを大幅に削減できる。また、在来木造、2×4工法と比較しても断熱材、内装、外装などの工事を省略できるためコストを抑えられる。

牛浜駅徒歩1 分の防火地域に、木材現しで3 階建てCLTログハウス「牛浜ビル」を建設した
BESS 事業本部の池田均氏は構造のポイントについて説明した

近年、脱炭素社会の実現といった観点から、循環型資源である木材を積極的に建築物に使っていこうとする機運が高まっている。都市部でも中高層の木造ビル建設の事例が増えているが、その多くは、「木造現し(燃えしろ層)」の内側に「不燃材(石こう等)の燃え止まり層」があり、さらにその内側に木製構造材があるという3層構造になっている。「木造現し(燃えしろ層)」、「不燃材の燃え止まり層」は、建築現場で施工するケースがほとんどで、現場への負担は重くなる。一方、今回の認定取得では「不燃材の燃え止まり層」はなく”100%純木製構造”のため、現場での手間を省くことができ、工期短縮、建築件数増加へつながる。

髙橋社長は、「木質感あふれるやさしい雰囲気が好きなのでCLTログハウスに魅力を感じたが、決め手となったのはコスト。RC造で同じ建物を建てれば坪150万円~200万円が相場だが、CLTログハウスは坪150万円以下で建てることができる。木材利用に関する補助金も充実している。補助金をうまく活用すれば、太陽光パネルやエレベーターなど設備のグレードアップも図れる。CLTログハウスは、十分に都市木造でのポテンシャルを秘めている」と話す。

木質感あふれる賃貸住戸の室内。相場の2倍以上の賃料を設定しているが、問い合わせは多いという
牛浜ビルの間仕切り壁に使用したCLTログ壁のサンプル

一方で、普及に向けての課題もある。今回、日本初の事例ということもあり、構造計算、建築確認の手続きに多くの時間を要した。今後、実績を積み、各種データを蓄積することで、構造計算、建築確認の手続きをよりスムーズに進められる環境を整備する。

また、今回は、CLTを用いたログ壁の製造をサイプレイス・スナダヤ(愛媛県西条市)、施工をダイテック(東京都中央区)が担当したが、CLTを用いたログ壁を製造できるのは、サイプレイス・スナダヤのみとなる。今後、需要増に伴い、いかに生産、物流拠点を増やしていけるのかも課題となる。

牛浜ビルでは、171㎥の木材を使用、炭素貯蔵量は131t‐CO2で、スギ約260本分のCO2蓄積量に相当する。CLTログハウスの事例が増えることで脱炭素、循環型社会の創造にも貢献する。高いコスト競争力も備えているだけに、今後、都市木造市場の中で存在感を増していきそうだ。