アキレス、既存の壁を生かし断熱性と耐震性を向上
工期短縮、コスト削減を実現
アキレスが、住んだまま断熱改修と耐震改修を行うことができる木造住宅向けの断熱工法「ソトダンプラス」の全国展開を開始した。大規模な工事が必要となる断熱改修、耐震改修の工期を短縮しコストも削減できる新たな工法が注目される。
住宅ストックの性能向上が大きなテーマとなっているが、断熱改修や耐震改修は基本的に壁を剥がしての工事が必要で、コストや工期がかかることが大きな阻害要因となっている。こうした状況を踏まえ、アキレスは2015年から北海道大学の福島明名誉教授の協力を得て木造住宅の新たな断熱改修方法の開発に着手、2016年からは地域の工務店による「ソトダン21の会」を組織し、北海道を中心に新工法を展開し施工実績を積み重ねてきた。
北海道などでは高い評価を得てきたが、地域性の違いなどから同工法をそのまま本州以南で展開するのは難しく、一部工法の見直しを行った。例えば、北海道では塩ビサイディング、トリプルガラス樹脂窓で、外断熱も特殊な納まりであったが、金属サイディングや木製サイディングでも可能とするなどバリエーションを広げた。そして新たな名称をつけて全国で展開するのが「ソトダンプラス」である。
外壁の一部を撤去し補強
既存外壁材の上から断熱材と外壁材
「ソトダンプラス」は、充填済みの既存の断熱材を生かし、同社の高性能硬質ウレタンフォーム断熱材「キューワンボード」を既存の外壁材から上張りすることで住宅の断熱性を向上させる。さらに構造用合板による補強を行うことで耐震性を向上させる。
具体的には、土台上端から300㎜前後の外装材、胴縁などを集塵機付き丸のこなどで撤去、最上階壁頂部も同様に横架材の下端から300㎜前後の外装材、胴縁などを撤去する。ここで撤去した外装材は後に使用するため廃材にはならない。躯体内の劣化診断、適応条件の確認、気流止めの有無を確認し、「ソトダンプラス」の施工が可能であれば、壁内の気流を止めるため壁頂・壁脚内部に「気流止め用断熱材」を詰める。次に外装材を撤去した部分と同じ高さにカットした厚さ12㎜の構造用合板を釘で留め付け接合部を補強し、既存通気層の閉塞と通気胴縁の外側面見込みの調整を行ったうえで、撤去した既存外壁材で閉塞する。
上張り断熱施工については、まず、窓廻り内外装の部分撤去、窓の取り外しを行い新たな窓を取り付ける。次に上張り断熱材を既存の柱・間柱などに釘で仮止めするか、または外装材に両面テープなどで仮止めし、断熱材の目地部や木部との取り合い部は気密防水テープなどで処理し、サッシ廻り、壁全体に通気胴縁を施工する。
土台廻りの上張り断熱施工については既存外装材の上からカバー材などを施工し、屋根形状などにあわせて土台部からパラペット・軒天井・小屋裏換気口などへ通気できる構造とし通気経路を確保する。その上から外壁材を新たに施工して終了だ。
低コストが大きな魅力
アスベスト対策でも有効
既存の外壁を残したまま施工することから、住まいを壊さずに住んだままリフォームできることが大きなメリット。施工の規模・費用を抑えられ、生活空間に影響しない工事のため引っ越しや家具の配置変更なども不要で、全体の工期短縮、コストダウンを実現することができる。
アキレスはフルリノベーションによる断熱改修の提案に力を入れてきているが、「コストが大きなハードルであり、結局、内窓をつけて終わりということも珍しくない」(断熱資材事業部 本田俊裕参事)。「ソトダンプラス」は、住宅の大きさなどにもよるが安ければ500万円程度で済むケースもあるという。「スケルトン改修で2000万円程度かかる工事であれば、1000万円台でできないか、という所からスタートした。外壁材の張替えに200万円程度をかけるのであれば、プラスアルファで断熱改修と耐震改修がセットでできる」(本田参事)と、性能向上リフォームの大きな課題であるコスト面で優位性を発揮する。
また、解体で生じる廃材が最小限ですむことも大きな魅力だ。特に注目すべきはアスベスト対策の面からも有効である点。2022年4月着工の工事から建築物の改修工事を行う際にアスベストの使用の有無の調査が義務付けられ、アスベスト有の場合は法令に基づく措置が求められる。築20年以上の住宅で使用していた建材にはアスベストが含まれている可能性があり、規制強化によりリフォームのコストアップが懸念されている。また、外壁材を全面的に壊すような工事はアスベストの飛散が懸念されている。外壁材の撤去は一部だけで、さらにその外壁材も元通り張りなおす「ソトダンプラス」は、リフォームにおけるアスベスト対策という点からも大きなメリットがある。
物件ごとに最適な提案
あきらめていた人の背中を押す
アキレスは、「ソトダン21の会」、また、YKK APが展開する「性能向上リノベの会」の活動を通じ性能向上リフォームに関心を持つ工務店などに「ソトダンプラス」をアピールしていく。
今、新築市場が厳しくなるなか、また、ストック住宅の性能向上が課題となるなかでリノベーションに取り組む住宅事業者が増えているが、「ソトダンプラス」はオープンな工法をベースに構築しており、特殊な材料も使っていない。
「外張り断熱や耐震補強を手掛けたことがある事業者であればハードルは高くない」(本田参事)という。ただ、そうした工事を手掛けたことがない事業者もいることから、セミナー、現場見学会などを通じての研修を進める考えだ。
一方で、すべての住宅で「ソトダンプラス」が有効なわけではない。築年数やメンテナンスなど住宅の状況、ユーザーの意向や予算など複合的な判断、ケースバイケースの対応が求められる。
アキレスはスケルトンリフォームでも多くの実績を持っており、案件ごとに適切な提案を行っていく考えだ。
「性能向上リフォームの分野は今後大きく伸びていく。予算面であきらめていた人、内窓をつけるだけでいい、そう考えていた人たちの背中を押すことで、まだまだ広がる余地は大きい」(本田参事)と、「ソトダンプラス」を切り口に断熱リフォームの拡大に力を入れていく。
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