政府が花粉症対策の集中対応パッケージ
国産材の住宅ラベル表示、生産者の使用公表など検討
政府が花粉症に関する関係閣僚会議を開催し、「花粉症対策初期集中対応パッケージ」を公表した。住宅関連分野では、国産材の需要拡大に向けてその使用量を表示するラベルなどの導入を検討しているとした。
花粉症は、長年多くの国民を悩ませ続けている社会問題の一つ。日本耳鼻咽喉科学会が2019年に行った調査によると、花粉症の有病率は花粉症全体で42.5%、スギ花粉症に絞っても38.8%と国民の3分の1以上が発症しており、08年比では9.7ポイントも増加している。
こうした状況を踏まえ、政府は花粉症対策を喫緊の課題とし、23年4月に「花粉症に関する関係閣僚会議」を設置。同年5月に今後10年を視野に入れた施策を含めた花粉症解決のための道筋を示す「花粉症対策の全体像」を明らかにした。
今回公表した「花粉症対策初期集中対応パッケージ」では、「花粉症対策の全体像」において政府一丸となって速やかに取り組むとしていた対策の3本柱である「発生源対策」、「飛散対策」、「発症・曝露対策」についての具体案を明示した。
住宅関連分野としては、「発生源対策」のうち「スギ材需要の拡大」が最も注目すべき項目だ。このなかでは、①木材利用をしやすくする改正建築基準法の円滑な施行、②国産材を活用した住宅に係る表示制度の構築(23年内を目処)、③住宅生産者の国産材使用状況等の公表(23年内を目処)、④建築物へのスギ材利用の機運の醸成と住宅分野における国産材(特にスギ材)への転換促進、⑤大規模・高効率の集成材工場、保管施設等の整備支援――の5つを掲げている。
具体的に、②では消費者にも分かりやすい表示として、「建築物省エネ法に基づく『省エネ性能ラベル』」のようなものを検討している。住宅に使用されている国産材の量に応じて☆表示などを行い、ひと目で分かるようにすることで、国産材を使用した住宅を住宅選びの際の選択肢として意識してもらえるようにしたい考え。
また、③では、住宅生産者が事業にどれだけ国産材を使用しているかに加え、国産材の中でもスギの伐採やその後の広葉樹などへの植え替え、花粉を室内に持ち込まないための住宅設計といった花粉症対策への取り組み全般を住宅業界団体のホームページなどで公表していく方針。企業同士の競合を促し、住宅業界全体の対策を加速させていく。
一方、④ではSNSなどを通じて広く国民に国産材、とりわけスギ材の良さなどを訴求するとともに、これまで輸入材を使用してきたメーカーが国産材利用に切り替えようとした際、その調達先の斡旋などを行うことでスムーズな切り替えを支援する。
さらに、⑤ではスギ材を積極利用する工場の建設や増築に対して補助金を交付し、加工機械などの導入を支援する。この予算は「花粉削減・グリーン成長総合対策」として林野庁の来年度の概算要求に盛り込まれている。
現状、スギ人工林の面積は431万haにおよぶとされているが、政府では今後もさまざまな対策を強化し、10年後の33年度にこの面積を約2割減少させることを目指している。
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