江戸川木材工業、S造向け「Hiダイナミック制震工法」を開発
倉庫や工場などでの活用を見込む
江戸川木材工業は、「Hiダイナミック制震工法」のS造向け制震装置を新開発した。ハウスメーカーなどからの要望に応えたもので、倉庫や工場などでの活用を見込んでいる。
「Hiダイナミック制震工法」は、日立Astemo(東京都千代田区、ブリス・コッホ プレジデント&CEO)のオイルダンパー「減震くんスマート」を採用した制振装置による木造住宅用の制震工法。オイルダンパーにより地震の揺れを吸収し、建物へのダメージを最大70%軽減することができる。2000年に技術開発に成功し、2004年に製品化、木造住宅の制震工法として初めて(一財)日本建築防災協会の技術評価を取得している。
今回、江戸川木材工業はこの「Hiダイナミック制震工法」のS造向け製品を新たに開発した。
2016年に発生した熊本地震は、観測史上初めて同一地域において震度7の地震がわずか28時間の間に2度発生。前震を耐えた建物でも、本震で倒壊するケースが相次いだ。そのため、地震後の調査では揺れに比較的強いとされるS造などの建築物でも被害が大きかったことが明らかになっている。
この地震を踏まえ、同社にはハウスメーカーなどから「S造でも使える制振装置が欲しい」という要望が数多く寄せられ、一定程度の需要が見込まれたことから2020年にS造向け製品の開発をスタートした。
S造向け開発で対応幅が拡大
大規模木造でも使用可能
木造住宅用は、オイルダンパーの上下に合板を取り付け、天井や床に接合する仕組みだが、S造用では木造用の構造をベースとしつつ、より強い衝撃を吸収するためオイルダンパーを3本採用。それらを支える上下の合板も鉄骨造の建物の負荷に耐えられるように金属パネルに変更しており、地震エネルギーの減衰力は木造住宅用の3倍以上だという。
開発に際しては、何度も実験を繰り返すことで適切なオイルダンパーの本数などを調整し、S造で求められる性能の確保に努めた。しかし、S造向けの製品開発は初だったこともあり、「木造住宅用の製品開発で培った知識などが一部通用しない部分もあり、苦労した」(減震部・渡部亮係長)という。
S造向けの開発により、同工法の提案先がさらに広がったことで顧客対応幅や市場が大幅に拡大した。S造用に開発した製品ではあるが、柱径が太い寺院などの大規模木造建築でも使用することが可能で、現在は現場の状況に合わせて受注生産で対応している。
既に第一号案件として酒井木型製作所の埼玉工場(埼玉県北葛飾郡松伏町)の耐震改修工事の一環として導入されており、取付工事も完了している。
実際に施工例ができたことから、今後は普及に向けたパンフレットなどを発行する方針だ。
渡部係長は「日本は地震大国であり、今後も大規模な地震の発生が予測されている。そのため、着実に需要は出てくるのではないかと考えている」と採用の広がりに期待を寄せる。
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