2023.6.20

電力データ活用の健康見守りで効果を検証

認知症の兆候を捉え行動変容を促す効果も

家庭での電力データを活用した見守りシステムの有効性を検証した。消費電力の変化を捉えることで未病の兆候を捉えることも可能で、行動変容にも有効と報告した。

左からエナジーゲートウェイ・酒井正充社長、MBTリンク・梅田智広社長、沼田町・横山茂町長

エナジーゲートウェイとMBTリンク(奈良県橿原市、梅田智広社長)が、北海道沼田町で3年間にわたって実施してきたICTを活用した地域住民見守りシステムの実証実験の結果をまとめた。生体データではなく家庭の電力データの活用が健康の見守り、行動変容を促すために有効であると報告した。

同実証実験は沼田町と北海道総合研究調査会の協力で、沼田町の50~60代の約25人が参加して行ったもの。ICTデバイスなどの活用で、個人の健康、生活、行動、嗜好などに係るデータを収集し、医学的知見を生かしながらデータ相互の相関関係や意味を解析し、町民の健康増進や予防の促進に寄与することについて検証を行った。さらにITCデバイスの使用が健康づくりの動機づけの手段になるかも検証した。

具体的には、家庭の電力データを①生活スコア(エアコン、テレビ、待機電力など)、②食事スコア(電子レンジ、冷蔵庫、炊飯器、IHなど)、③活動スコア(洗濯機、掃除機、高電家電など)の3つのカテゴリーに分けて1分単位で計測し、その発生頻度、行動周期性、実施時間帯などについて過去実証データをもとに評価しスコア化した。このライフスタイルスコアは0~100点で表され、スコアが大きいほど規則正しい健康的なライフスタイルであることを意味する。エナジーゲートウェイの、1台の電力センサで主要家電の使用状況を把握できる家電分離技術がこうした測定を可能とした。

このモニタリングにより、住民が計測器を装着していなくても生活データを取ることができ「見守り」が可能となる。

計測したデータの変化により「未病」、「認知症」の兆候を捉えることができた。例えば、活動スコアと食事スコアの急激な低下または低スコアが続く場合、寝たきりや認知傾向が進んでいる可能性がある、活動スコアが常に一定数よりも低い場合は衛生面のサポートが必要、など不調に向かう人の予兆を観測することができた。

さらに、それを本人や家族に通知することで「行動変容」を促すことができた。

加えて、電気料金を見える化できることから、機器の買い替えなど節電に向けた行動も促すことができたという。

このシステムは低コストで導入が可能なことが大きな特徴。同社では、今年から積極的に見守り支援事業を展開する計画で、沼田町の高齢者の住まいへの実装を始め、北海道更別村などでも予定している。また、自治体だけでなく民間企業や大学との共同研究も予定しており、さらなる機能の拡充や普及を図っていく考えだ。