2023.6.12

混在する省エネ基準の評価ルートを統廃合

適合義務化に向けて取り組みやすい仕組みに整理

省エネ基準への適合性評価ルートが大幅に見直される。さまざまなルートが混在し、分かりにくさなどが指摘されており、その整理.統廃合を行うことで取り組みしやすい仕組みに再編する。

2025年度の住宅.建築物の省エネ基準への適合義務化を踏まえ、省エネ基準への適合性評価ルートの統廃合が行われる。国土交通省と経済産業省が二省合同会議を開催、混在し複雑化していた評価ルートの合理化について検討、見直し案がまとまった。

建築物省エネにおける省エネ基準の評価は、外皮性能と一次エネルギー消費性能の2つについて、大きく「標準計算ルート(パソコンなどで行う精緻な評価方法)」、「簡易計算ルート(パソコンなどで行う簡易な評価方法)」、「仕様ルート(仕様で判断する評価方法)」の3つがある。また、「簡易計算ルート」にはさらに簡単に評価が行える「モデル住宅法」がある。

省エネ性能向上の取り組みが進むなか、これらの見直しや新規設定などが行われ、複数ルートが混在している。委員から「委員でもルートに応じた細かな違いを含めて説明できる人はおそらくいない」と指摘されるほど複雑化するなか、さまざまな課題が指摘されていた。

19年に300㎡未満の住宅.建築物の説明義務制度などを踏まえ、簡素な評価ルートが整備された。ただ、これらルートのなかにはより高い性能を評価するBELSや住宅性能評価には適用できず活用されていないものも含まれている。22年11月には住宅に係る仕様基準について、構造別.建て方別の基準の設定や開口部比率の廃止などの合理化が行われた。さらにZEHの省エネ性能への適合を簡素に確認できる誘導仕様基準も新設された。ただ、省エネ性能の評価は「外皮性能」と「一次エネ性能」をそれぞれ行うが、これらの仕様基準は両方セットで使用することを前提とし、外皮性能を仕様基準で、設備を計算ルートで評価することを想定していない。

微妙な違いの複数の評価ルートが混在するなか、「省エネ基準.評価の全体像が分かりにくく、必ずしも取り組みやすさにつながっていない」といった指摘もあり、その整理が求められていた。また、審査側は申請件数が少ないルートでも対応が求められ、円滑な適合確認に支障をきたす懸念も指摘されていた。

こうした状況を踏まえ、見直し案は、簡易な評価ルートは「仕様基準(または誘導仕様基準)」、精緻な評価ルートは「標準計算」に再構成する。具体的には、①22年11月に措置された簡素化した仕様基準と、新設した誘導仕様基準、②新ルート〈外皮:仕様基準+設備:エネルギー消費計算プログラム〉を開設(住宅トップランナー制度の報告や、BELS、住宅性能評価で活用可)という2本柱となる。また、気候風土適応住宅対応版については、適合確認で用いる外皮性能は既定値(省エネ基準)とする。

この合理化により、簡易な評価ルート(モデル住宅法、フロア入力法、外皮面積を用いない外皮評価、エネルギー消費性能プログラムの特定建築主基準版、簡易入力画面)を廃止する。また、気候風土適応住宅のエネルギー消費性能計算プログラムの気候風土適応住宅版を廃止する。

この見直し案について、「評価ルートの統一は設計審査の効率化を図る上で有効」、「気候風土適応住宅についても整理していただいて分かりやすくなった」、「外皮計算が難しく一次エネまで計算できないというハードルは解消されると思われる」など委員からの賛同を受け、見直し案はほぼ固まった。

今後、パブリックコメントを経て、今年の秋ごろに公布、25年春頃に施行される予定だ。

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