ジェクトワン、横須賀市と連携、空き家をシェアキッチンに再生
レトロな雰囲気を残し街の活性化にも寄与
空き家となっていた築60年超えのクリーニング店をシェアキッチンに再生した。横須賀市との公民連携による事業で、商店街の活性化にも寄与しそうだ。
空き家活用事業「アキサポ」を展開するジェクトワン(東京都渋谷区、大河幹男社長)が、神奈川県横須賀市と連携し、空き家となっていたクリーニング店をシェアキッチンに再生した。
同社が2016年から展開する「アキサポ」は、同社が空き家を定期借家権で借り上げ、同社の費用負担でリノベーションを実施、利用者を募集して事業を展開するもの。所有者は毎月の家賃収入だけでなく、契約期間終了後には資産価値が向上した物件の返却を受けることができるというメリットがある。これまでシェアキッチン、シェアカフェ、シェアハウス、シェアオフィス、賃貸住宅、飲食店や美容室、コリビング、宿泊施設、など、約200件の再生実績を持つ。
今回再生したクリーニング店は、築60年超えで2022年から空き家となっていた物件。長い歴史を持つ店であったが責任者が高齢であったことから所有者から店舗がある上町銀座商店街に相談があり、横須賀市からジェクトワンを紹介された。
同時に、横須賀市は創業支援の取り組みをしたいとも考えていた。「創業の気運が高まらなければ街がすたれる。創業したい人に夢を与えるような取り組みを」(上条浩副市長)という思いだ。
ジェクトワンは、こうした要請を踏まえ、横須賀市の「創業チャレンジ拠点整備支援補助金」を活用して公民連携による空き家をシェアキッチンに再生することを提案、4月に「アキサポキッチン」がオープンした。空き家を活用した創業チャレンジ型シェアキッチンは初となる。
空き家活用は、街の活性化にも大きく寄与する。上町銀座商店街は、100年以上続く商店があるほどの古い歴史を持つ約60店からなる商店街だ。同商店街には看板建築が10数件残る有数なまちでもあり、商店街ではこの看板建築を新たな目玉に、レトロモダンな街で活性化を図りたいと考えている。
今回の再生にあたっても、ジェクトワンに「元のクリーニング店の雰囲気をできるだけ残し、レトロモダンな街にあった再生としてほしい」(高梨治・上町商店街連合会会長)と要望を出したという。
こうした市や商店街のニーズを踏まえ、ジェクトワンが再生したシェアキッチンは、外観はレトロモダンな当時の雰囲気を残し街と調和するデザインとしながらも全面ガラス張りで中の様子が見え入りやすいデザインとした。間取りは大きく手を入れ、18席のイートインスペースに、キッチンを横に置くことで店内の席を見渡せるようにし、一人でも作業しやすい空間とした。運用は曜日単位貸しで、それぞれの店の固定ファンがつきやすく、独立のしやすさにも配慮した。
空き家問題が全国で深刻化の度合いを強め、国はその有効活用や適切な管理の確保に力を入れている。横須賀市も「第2期横須賀市空家等対策計画」のなかで民間のアイデアを生かした取り組みの推進を掲げている。
「空き家の活用は、その所有者に頼るべきではない。有効活用できることを認識してもらい、一棟でも空き家を無くしていくことが一番の目的」(大河社長)とアキサポの意義を語る。
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