アキレス、カーボンリサイクル型ビニル壁紙を開発
内装材で初めて製造時にCO₂を吸収・固定化
アキレスは、製造時にCO₂を製品内部に吸収・固定化する内装材業界初のカーボンリサイクル型塩化ビニル壁紙を開発した。内装からも脱炭素を図ることで、建物全体の環境性能の向上を支援する。
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、住宅・建築分野でも様々な取り組みが加速している。例えば、ZEHやZEB建築の普及を促すことで同分野のCO₂排出量のうち約70%にあたる「オペレーショナルカーボン」(暮らすときのCO₂)を削減しようとする動きが加速している。一方で、残りの約30%を占める「エンボディードカーボン」(建設時のCO₂)についても環境配慮型建材の積極的な利用などを推進することで削減が図られている。
環境配慮型建材の中でも注目を集めているのが「カーボンリサイクル」技術を用いて製造されるCO₂吸収型の製品だ。カーボンリサイクルとは、CO₂を資源と捉え、これを回収し、多様な炭素化合物として再利用する技術のこと。大気中に放出されるCO₂の削減が図れるほか、気候変動問題の解決や、資源の安定的な供給源の確保に期待できる。
内装材業界で初の製品開発
内側からも脱炭素を
アキレスはこのほど、製造時にCO₂を製品内部に吸収・固定化するカーボンリサイクル型の塩化ビニル壁紙として「e-タン クロス」を開発、不燃タイプと準不燃タイプの2種類を用意した。カーボンリサイクルを活用した製品としては、CO₂吸収コンクリートなどが既に実用化されているが、内装材での製品の開発は業界初(2023年3月末時点、同社調べ)だという。
「e-タン クロス」では、塩化ビニル壁紙の原料として通常用いられる鉱山由来の天然カルシウムに替えて、大気中の排気ガスに含まれるCO₂を固定化した合成炭酸カルシウムを配合することで、本来排気として大気中に放出されるCO₂を削減することができる。
しかし、合成炭酸カルシウムは、天然物に比べて粒形のバラツキが大きく、配合の際に粘度のコントロールが難しいという欠点があった。塩化ビニル壁紙は、製造時に液状化した塩化ビニルを表層材として普通紙などの裏打ち材に塗布するが、粘度が不安定だと上手く塗布することができない。そこで、1年ほど前から独自に塩化ビニル樹脂の配合を研究し、粘度が安定化できる新製法を確立した。これにより、同社従来品と変わらない物性や機能を備えつつ環境に配慮した塩化ビニル壁紙を実現した。
同製法による塩化ビニル壁紙では、製品重量の約10%、不燃タイプで1㎡あたり約25gのCO₂を固定できる。
壁紙自体が薄いため、一部材としてみたときの絶対量はごくわずかだが、(一社)日本壁装協会によれば、22年度の塩化ビニル樹脂系壁紙の出荷量は5億9773万510㎡となっており、壁紙全体の約95%という圧倒的なシェアを占めているため、今後普及が進めば一定量の削減効果が見込める。
「内装材でもCO₂を固定できることを訴求できれば、環境性能の面で建築価値の向上に期待できる」(建装事業部・建総販売部 穂積正遠部長)と、23年中に販売を開始する予定だ。
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