2023.6.2

東京都が子どもの安全確保を促進 子育て配慮の集合住宅に補助金

東京都は、4月から子育てのために安全性を強化した集合住宅を対象とする「東京こどもすくすく住宅認定制度」を開始した。住宅事業者向けに展開するもので、認定を受けた住宅の整備費の一部が都から補助金として支援される

近年、子どもが住宅の窓やベランダから転落するという痛ましい事故の発生件数が増えている。窓際やベランダの手すり付近に椅子やテーブル、ソファーなどの家具やプランター、室外機など子どもの足場となるようなものが置かれている場合、それらを伝って身を乗り出してしまうのだ。特に、コロナ禍においては部屋の換気をするために窓を開ける機会が増加したことで、知らぬ間に子供がベランダなどに出てしまっているケースがあり、小さな子供がいる家庭では注意が必要だ。東京消防庁によれば、2018年から2022年の5年間で墜落事故により救急搬送された0歳~5歳の子どもの総数は70人に上るという。

「東京こどもすくすく住宅」のイメージ

こうした事故を防ぐために、東京都では2015年から「子育て支援住宅認定制度」を運用していたが、より多くの住宅事業者に利用してもらおうと今年4月から制度を見直し、「東京こどもすくすく住宅認定制度」を開始した。

東京都では、「チルドレンファースト」の実現を政策に掲げており、誰もが子育てをしやすい社会の形成を目指している。同制度はその一環として運用、転落防止など子どもの安全性の確保や、家事のしやすさなどに配慮された住宅で、かつ、子育てを支援する施設やサービスの提供など、子育てしやすい環境づくりのための取り組みを行っている優良な住宅を都が認定する。集合住宅(2戸以上)であれば、分譲や賃貸、新築、改修問わず都内全域の物件が対象となる。

幅広い事業者が取り組めるよう
3つの認定モデルを設定

認定を受けることで整備費の一部が補助金として支給される

同制度では①「アドバンストモデル」、②「セレクトモデル」、③「セーフティモデル」のレベルが異なる3つの認定モデルを設けた。それぞれのモデルごとに新築、既存・改修の区分に応じた認定基準として必須項目と選択項目を設定し、必要な適合数を規定している。

「アドバンストモデル」は、設備などの充実に加え、コミュニティ形成などソフト面も重視したモデルで、住戸の専有面積が50㎡以上の物件が対象。必要な基準適合数として、新築は必須項目51項目と選択項目67項目中23項目の適合を求め、既存・改修は、必須項目22項目、選択項目94項目中26項目の適合を求める。

認定までの流れ

「セレクトモデル」は、住戸内や共用部を充実させる設備などについて事業者の特色を生かした選択が可能なモデル。住戸の専有面積が45㎡以上の物件が対象で、必要な基準適合数は、新築は必須項目17項目、選択項目99項目中39項目。既存・改修は必須項目17項目、選択項目99項目中17項目だ。

「セーフティモデル」は、子どもの安全確保に特化したモデルで、住戸の専有面積が45㎡以上、必要な基準適合数は新築、既存・改修ともに必須項目のみで17項目とした。

従来の「子育て支援住宅認定制度」は、「アドバンストモデル」と同等の基準を満たさなければ認定を取得できなかったが、3つのレベルのモデルを用意したことで様々な住宅事業者が気軽に取り組めるようになった。

「『子育て支援住宅認定制度』に比べ、『東京こどもすくすく住宅認定制度』では格段に認定が取りやすくなった。住宅ストックの付加価値向上にも期待できるため、できるだけ多くの事業者に取り組んでほしい」(東京都住宅政策本部・民間住宅部)考えだ。

認定住宅の供給を推進するため、認定された住宅では、その住宅事業者に整備費の一部が補助金として都から支給される。例えば、新築の賃貸住宅で「アドバンストモデル」の認定を受けた場合、新築に係る費用の5分の1以内の補助率で一戸あたり最大200万円の補助が受けられる。

また、都では同じく4月から「『子どもを守る』住宅確保促進事業」も開始している。分譲マンションの所有者などを対象に、子どもの安全を確保するための改修費用を補助する。例えば、子どもが登れないようにすることで転落を防止する室外機用の侵入防止柵の設置や、ベランダ窓用の補助錠、指はさみ防止機能を付与した扉への改修などが対象だ。補助率は改修費用の3分の2で、上限は一戸あたり30万円となっている。「東京こどもすくすく住宅認定制度」と併せて訴求していくことで、安全・安心な子育て環境のさらなる促進につなげていく方針だ。