三菱地所ホーム、木密地域からの移転を促進する東京都の第1弾事業に採択
木材を多用する新構法で賃貸集合住宅建設
東京都が進める「都有地活用による魅力的な移転先整備事業」の第一弾となる足立区江北地区において、同社の提案が採択された。木材を多用する新構法で賃貸集合住宅を建設。住民の交流を促す空間設計も盛り込んだ。
災害に強い都市の実現に向け、木密地域の解消が喫緊の課題となっている。しかし、敷地が狭小であることや権利関係が輻輳していることなどにより、建替えが進みにくい状況があるほか、住み慣れた地域で居住し続けたいとする権利者などが多く、希望に合う移転先を確保することが難しいといった課題がある。そこで、東京都は、近隣の都有地を有効活用し、コミュニティの形成などを重視した、民間事業者による魅力的な移転先の整備事業を推進する。その第一弾事業となる足立区江北地区のプロポーザルにおいて、同社の提案が採択された。「災害に強い都市づくりを理解し、木密地域の改善に精力的に取り組む姿勢」や「木造による温かな外観に路地空間を計画し、コミュニティを創造する設計」が課題解決の手法として高く評価された。
現在、地上3階建ての木造建築の建設を進めている。1階部分に同社独自の木と鉄骨によるハイブリッドの構法「Flat Mass Timber(FMT)」、2階、3階は在来軸組工法+CLTパネルで構成。夏の完成を目指す。
FMT構法の採用により高い耐震性を確保しながらも、従来の木造建築にはない自由なファサードデザインや空間デザインを実現。準耐火木造による耐火性能で市街地の不燃化にも寄与する。FMT構法は、大断面部材(集成材厚板パネル)を点在配置し、そのパネルに鉄骨と専用金物を組み合わせることで、接合部などで脆弱破壊を起こすといった木材のデメリットを抑えるとともに、木材の性能を最大限に引き出す。壁や梁などの構造要素が空間内に出てくることが少なく、フラットで自由なデザイン建築を可能にする。壁倍率最大20倍の構造壁の利用により、耐震等級3を維持しながら、高層耐力壁を一般の2×4工法と比べて1/6~1/7に抑えられる。フラットな天井面で6.6mスパンの大空間の確保ができるほか、3.1mの跳ね出しスラブの設置も可能だ。各階層をずらした建築や、曲線を描いた外壁ライン、連続開口なども実現しやすくなる。
1階空間は、テナントとして貸し出す。2階、3階部分に16戸の賃貸住居を確保。単身世帯、ファミリー世帯、高齢者世帯などの入居を想定して1K~3LDKまでの間取りを用意した。建物は大きく北棟と南棟で構成され、その間に植栽などを取り入れた交流スペース「みんなの小道」を整備する。
同社は、今回の足立区江北地区の案件の実績なども踏まえながら、FMT工法の進化による都市の木造化・木質化を目指し、さらに非住宅中高層木造建築を推進する。2023年4月には、都市木造推進事業部を新設した。細谷惣一郎代表取締役社長は「5階建て中層建築の実現を目指した技術開発がスタートしており、耐火建築仕様を整備していく。賃貸住宅と店舗などの複合用途に対応する建築モデルを考案している。2×4工法とFMT構法をハイブリッドすることによって、様々な規模と用途に対応する仕組みづくりを進めていく」と話す。
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