2023.3.9

4社連携で中小工務店向けに全館空調システム 断熱、気密、換気、空調の設計から効果検証までをワンパッケージ

断熱、気密、換気、空調の4社が連携して中小工務店向けに高性能全館空調システムを提案する。4社それぞれが支援を行い、実測による検証から引き渡し後のモニタリングなどまで含めたスキームが高い評価を受けている。

システック環境研究所(東京都杉並区、落合総一郎社長)、アキレス、YKK AP、日本住環境の4社が提案する中小工務店向け支援型高性能全館空調システム「エクセレント ハウジング システム」が、(一財)省エネルギーセンターの「2022年度 省エネ大賞」の製品・ビジネスモデル部門で資源エネルギー庁長官賞(建築分野)を受賞した。「住宅の空調は断熱や気密、換気などを含めた建築一体型であるべき」(落合社長)と考えるシステック環境研究所は、5年ほど前からアキレスとともに主に中小工務店を対象に提案を進めてきたが、2年ほど前にYKK AP、日本住環境の2社が加わり、断熱、気密、換気、空調という住宅の省エネ、快適性を担う4社が連携した現在の形となった。2021年度は11棟の実績があり、2022年度も21棟の実績を上げている。

シンプルな施工でしっかりと性能を出す

省エネ基準への適合はもとよりZEHレベルの断熱等性能等級5への取組みが必須となり、さらに上をいく等級6、7へのアプローチが始まっている。しかし、一部の事業者を除き、中小工務店にとって性能向上による省エネ性、快適性の向上は技術面、コスト面から高いハードルだ。断熱性を高めても気密が伴わなければ十分な省エネ性を得ることができず、気密を高めればさらなる空気環境への配慮が求められる。空調も、住まい全体の対策を踏まえたものでなければ快適な空間を実現することは難しい。
エクセレント ハウジング システム」は、“高断熱+高気密+全館空調〟を基調とするシステムだ。アキレスの遮熱・断熱材「キューワンボード」や、YKK APの樹脂窓「APW 330」や断熱玄関ドア「ヴェナート D30」などによるしっかりとした断熱、日本住環境の換気部材「ルフロ400」や気密パッキンによる気密と換気計画を行った住宅に、システック環境研究所の全館空調ユニット「コンフォート24」を導入する。

「高断熱・高気密住宅や全館空調に初めて取り組む工務店でも自信を持って導入できる4社サポートシステム」(アキレス 断熱資材事業部・本田俊裕参事)が基本的な考え方で、システムはできるだけシンプルに施工でき、しっかりと性能を出せることに重点を置いているという。例えば、「コンフォート24」はビルトインのマルチエアコンではなく通常の壁掛けエアコン一台で動くものであり、特殊なメンテナンスは必要ない。

このシステムを中小工務店向けに提案するが、そのスキームは住環境やエネルギーのノウハウ、また専門技術者を持たない中小工務店でも省エネ・快適な空間を実現できるものだ。

それを可能とするのが4社連携による支援である。

具体的には、工務店から建築図を受け取ると、アキレスが外皮計算を行い、断熱性能などの仕様を検討、システック環境研究所が空調設計を行う。「ZEH基準 断熱等性能等級5以上、C値≦1・0」もしくは「HEAT20︲G2 断熱等性能等級6以上、C値≦0・5」の仕様をランニングコストなどもあわせて提案し、予算などを踏まえて仕様を決定する。

施工段階では、4社がそれぞれの領域について施工指導などを行う。

もっとも快適域にあることを示すPMV値±0.5を目標とする
省エネ大賞受賞マークを活用することが可能

性能や快適の“見える化〟が導入工務店から高い評価

また、完成時の性能検査をしっかりと行うことも大きな特徴だ。温度分布、換気量、PMV(国際規格ISO7730として定められている快適性の指標)などの測定をシステック環境研究所が、気密測定を日本住環境が行う。単に図面上の性能値にとどまらず、実測に基づいて性能がしっかり出ているかを明らかにするわけだ。

さらに引き渡し後一年間にわたり温度・湿度、使用電力についてのモニタリングも行う。対象となる住宅にセンサを設置し、測定したデータを4社だけでなく工務店、施主と共有する。

この4社連携は非常に緩やかなものだ。「エクセレント ハウジング システム」の提供はFCやVCのようなスキームを取っておらず、システック環境研究所が事務局的な役割を担うが、4社がそれぞれの営業活動のなかで提案を行い、案件が出てくるとシステック研究所を通じて情報が共有される。また、システムもガチガチに仕様を固めたものではなく、工務店のこれまでの仕様や地域性などを踏まえて対応することも可能だという。

性能検査や引き渡し後の検証などの“見える化〟は施主の信頼につながり、システムを導入した工務店からは高く評価を受けておりリピート受注につながっている。「全館空調は確固たるエビデンスがなかっただけに、工務店が自信を持って薦めることができる」(システック環境研究所・落合社長)と提案の大きな武器となっている。

特に電気代の高騰が続くなか、その削減を数値で捉えられることは、工務店が次の一棟を提案しようというモチベーションにもつながりそうだ。今回の省エネ大賞の受賞により「エクセレント ハウジング システム」を導入した住宅には「省エネ大賞マーク」を貼ることができることも大きな訴求力になろう。

4社は、省エネ性向上が強く求められるなか、中小工務店に向けて居住環境全体の快適性の訴求にさらに力を入れる考えだ。