2023.2.17

スカイマティクス、建設DXの鍵を握るドローン活用

事例のナレッジ化で利便性を訴求

クラウド型ドローン測量サービス「くみき」を提供しているスカイマティクスが、建設DXの現状と課題を分析した。小規模企業のDX化が遅れていることなどを踏まえ、「くみき」の活用事例をナレッジ化し、ドローン活用の利便性を訴求したい考えだ。

スカイマティクス(東京都中央区、渡邉善太郎代表取締役社長)は、クラウド型ドローン測量サービス「くみき」を提供しているスタートアップ企業だ。

「くみき」は、ドローン画像から建設現場を自動で3Dモデル化することができるクラウドサービス。建設現場にいなくても、その様子を正確に確認することができる。使い方もシンプルで、撮影した写真を「くみき」のソフト内にアップロードするだけで、誰でも簡単に本格的なドローン測量を利用することができる。
建設業界では昨今、労働人口の減少や人材の高齢化が深刻な問題となっている。建設業者がこうした問題を乗り越え、生き残っていくためには、業務のDX化による生産性の向上が不可欠だろう。そこで、建設業界全体のDX化を図るために、同社はこのほど全国の建設業従事者1039名を対象とした「建設DXに関するアンケート調査」を実施し、建設DXの現状と課題の分析を行った。

スカイマティクス代表取締役社長・渡邉善太郎氏
「我々企業がやるべきことは、建設ICTツールを誰もが簡単に使いこなせるようにし、顧客の不安を払拭するプロダクトにすることだ。例えば、スマホの機種変更をする際に、新機種を使いこなせるか不安に感じる人は少ないだろう。ICTツールも同様のレベルまで浸透させることができればおのずと建設業界のDX化は進んでくる」

九州大学都市開発センター長・馬奈木俊介教授
「ドローンはかつてほど高額ではなくなってきており、今なら20万~30万円程度で購入できるため、小規模企業でも導入しやすいツールと言える。ドローンで地形データを取得し、それを3D CADなどを介して3Dデータ化すれば、それを様々な用途に応用可能で、生産性の向上に期待ができる。建設業界
のDX 化にあたって、まずはドローンの全体的な普及が重要になるのではないか」

3次元ツールに期待
小規模企業では導入に遅れも

調査によると、「これまで導入した建設ICTツールで生産性向上の寄与度が大きかったもの」として最も多く挙がったのは「ドローン」で23.2%、次いで「3D CAD等」の20.9%、「CADデータのクラウド共有」の10.9%だった。「従来は図面上でしか建設現場のデータを確認するができなかったが、人間は3次元で物を見ているので、ドローンと3D CADなどを使った3次元データが生産性に寄与するのは必然」(渡邉社長)とみる。

さらに、「現在導入している建設ICTツール」でも「3D CAD等」が40.0%で最も多く、次いで「ドローン」が38.4%、「CADデータのクラウド共有」が25.0%と続いた。建設業界のDX化に向けて、ドローンを中心としたツール活用の期待度が高まっていることがうかがえる。

しかし、その導入には課題もある。「建設ICTツール導入のネック」としては、「初期費用」(55.5%)、「ランニングコスト」(41.0%)、「使いこなせるか分からない」(35.4%)、「社内で建設ICTツールに詳しい人材が不足している」(33.9%)が上位を占めた。特に、小規模企業では予算が限られているため、初期費用やランニングコストは非常に重要な問題となっている。

企業規模別に建設ICTツールの導入状況をみると、小規模企業ではドローン以外にもすべてのツールで導入率が低く、DX化に遅れが出ていることが分かった。

また、小規模企業では建設ICTツールの導入を支援する体制が整っていないという現状もある。実に、82.2%が「社内にシステム担当部署または担当者など、ICTに詳しい人が確認や支援する体制がない」と回答した。

導入している建設ICTツールとその割合

こうした結果を踏まえ、渡邉社長と九州大学都市開発センター長の馬奈木俊介教授がメディア向け説明会で対談を開催。馬奈木教授は「ドローン活用を建設業界全体に広げることで、生産性の向上が期待できる」と、建設業界のDX化におけるドローン活用の重要性を指摘した。

また、渡邉社長は「建設ICTツールを誰もが簡単に使いこなせるようにすることで、建設業界のDX化は進む」として、DXの広がりに期待する。

スカイマティクスでは今後、「くみき」の建設現場での導入事例をほかの現場にも横展開できるようなナレッジ化を図っていく方針。あまりICTツールの普及が進んでいない小規模企業にもドローン活用の利便性を訴求することで、建設業界全体のDX化を加速させる考えだ。