ENボード、国内最大のパーティクルボード工場稼働 幅広い用途で安定した生産・供給体制を構築
新規用途開発も推進
EN(エン)ボードは、日本、アジア最大のパーティクルボード(PB)工場を完成させ稼働を開始した。国内最長となる長さ47mの連続プレスを導入し、安定した生産・供給体制を構築。新規用途開発も進める。
総工費250億円
11月中旬から商業生産を開始
ENボード(静岡県駿東郡小山町、高橋真 社長)は、フロアや内装建材などの総合建材メーカーで、PBの老舗メーカーである永大産業と、構造用PB「novopanSTPⅡ」などの主力商品を持ち、PBの国内最大メーカーである日本ノボパン工業が共同出資して2019年5月に設立した合弁会社。新工場は、総工費約250億円をかけて小山町の新産業集積エリア工業団地内に建設した。敷地面積は9・3ha(9万3000㎡)。東京ドーム球場2個強の広さに相当する。当初、2020年8月から操業を開始する予定であったが、コロナ感染拡大の影響により、技術移転の指導者であるドイツ人技術者が来日できず、延期されていた。2022年11月中旬にもPB製造工場としてJIS認証を取得し、商業生産を開始できる見込みだ。今後、増加が見込まれる構造用耐力面材、フローリング基材の需要に対応する。
従来、一般的であった多段プレス型の製造ラインとは異なり、連続プレスの導入により、様々な用途に合ったPBの製造がコントロールしやすくなるほか、サンダーでの仕上げ作業も簡略化でき、原料となる木材チップの歩留まりの向上にも貢献する。新工場のPB生産量は月産1万5000t、年間18万tに上る。この数値は国内におけるPB生産量の2割に相当する。これまで以上に幅広い用途で、安定した生産・供給体制の構築が可能になる。
ENボードでは、永大産業、日本ノボパン工業それぞれの事業計画に基づき、様々な用途のPBの製造、販売を進める。ENボードの高橋真 代表取締役社長は、「キッチンや内装建具などの化粧PBのほか、構造用PB、マンションの置床用PB、フローリングの基材など、既存用途に加えて、新しい用途開発にも取り組んでいく。MDFからの代替などにも挑戦していきたい」と意欲を示した。
永大産業は、従来から扱っている、自社の内装建材向けのほか、キッチンメーカーなどに向けた化粧PBなどの製造、外販をさらに強化するほか、ENボード新工場の最新設備を活用して、フロア用の基材、耐力面材などの開発を進め、新規分野の開拓に取り組んでいく考えだ。
PBの用途拡大で近年はフル生産
新工場稼働で状況改善に期待
近年、PBは用途の拡大の影響により、フル生産の状態が続いてきた。一方で、新工場の新設には100億円を超える莫大な投資を要するため、需要拡大に合わせ、簡単に生産量を増やすわけにはいかなかった。2022年2月には北九州にある日鉄テックスエンジのPB工場が火災に見舞われた。この工場は、国内PB生産量の約10%を担っていたが、心臓部であるプレス機器が焼失、その影響もあり、マンションの置床用のPBなどは、慢性的に商品不足の状態が続いているという。今回の国内最大のPB工場の稼働のインパクトは大きく、こうした状況が改善されていくことが期待される。
ウッドショックで合板価格が高騰
PBは価格安定性に定評
価格安定性もPBの強みだ。ウッドショックの影響などで合板でも原木不足が生じ、価格高騰が続いている。
木材需給報告書によると、針葉樹合板の価格は2021年3月に1枚あたり1230円だったが、2022年9月には2350円と大幅に値上がりしている。これに対して、PBは、接着剤の高騰の影響はあるものの、木材チップさえあれば製造できるため、価格安定性に定評がある。
環境配慮型の木質材料
年間約24万tの木材チップを使用
さらに、PBは環境配慮型の建築資材であることにも改めて注目されている。新工場では、年間約24万t(月間2万t)の木材チップを使用。これは、木々の伐採量に換算すると年間50万㎥以上の木材量であり、静岡県全体の出材量と同等になる。ENボードでは、この規模の木材量を循環型リサイクルシステムで運用し、地球環境にやさしく、良質な木質材料生産を実現する。
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