PB、MDFのフル生産続く
合板ひっ迫で代替需要増、価格上昇
住宅需要増加の影響で、PB、MDFの生産が追い付いていない。また、合板の不足もあり、PB、MDFへの代替需要が増加している。SDGs時代にマテリアルリサイクル品への注目が高まる。
住宅需要増加で、PB(パーティクルボード)、MDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)のフル生産が続いている。2022年1月~4月までの生産量の総計は、PBで前年比約9.21%増、MDFでも同約3.39%増だ。背景の一つには、PB、MDFの耐力面材としての需要の高まりがある。耐震性能、省エネ性能の向上など、住宅の高性能化によるニーズが高まる中で、簡単な施工で均一な性能を確保しやすいことから、年々筋かいから耐力面材へのシフトが進んでいる。2018年3月には、木造軸組工法における耐力壁の告示改正が施行され、高倍率の耐力壁に厚さ9㎜の構造用PB、構造用MDFなどが使えるようになり、素材自体も高倍率の物が増え、使いやすい環境整備が進み、ビルダーなどによる採用が増えている。
また、マンションの二重床や内装建材、キッチンの下地などにも使われるなど、使用用途が広がっている。ほかにも、近年ではフローリングの台板としての需要も増加しており、環境問題への対策として、ラワン材からの切り替えが進み、針葉樹合板の上に2.3㎜のMDFを補強材として貼るといった使い方が増えている。その結果、シェアはかつてのラワン材と逆転し、75%にまで拡大した。加えて、新設住宅着工戸数が増加したことで、PB、MDF共に需要が伸長しているほか、「価格の優等生」と言われるほど値段が安定していることも人気の理由だ。
ただ、日本繊維板工業会の長谷川賢司専務理事によると、「PBやMDFの生産設備は、100億円を超える莫大な投資を要するため、新規参入できる企業は少なく、メーカーは限られる。装置産業として、需要拡大に合わせ、そう簡単に生産量を増やすわけにはいかない」という。
さらに、2月には北九州にある日鉄テックスエンジのPB工場が火災に見舞われた。この工場は、国内PB生産量の約10%を担っていたが、心臓部であるプレス機器が焼失してしまい、9月~10月頃まで稼働再開ができない見込みだという。
着工増に加え合板からの代替需要も
ここにきて合板の不足・高騰が、PB、MDFへの代替需要を発生させている。ウッドショックの影響などで合板でも原木不足が生じ、昨年の春先には合板の在庫が急減。例えば針葉樹合板24㎜は昨年6月から単価が高騰している。当初2500円だったものが今年5月時点で4500円に迫るなど、約1.8倍の上げ幅だ。その結果、合板の代替品として、PBやMDFに需要が流れている。
さらにこの代替需要を加速させているのが、先月に発生した合板メーカー、日新の本社工場の火災事故だ。この火災で、長尺合板の生産ラインが大きな打撃を受けた。長尺合板は構造用面材や階段部材などに使用されているが、火災によってさらなる需給のひっ迫が起き、代替材としてPBやMDFへの注目がさらに高まるかたちになっている。
いまでは、住宅需要の増加と代替需要が重なったことで、昨年夏頃からPBやMDFでも在庫不足が目立つようになった。会員企業による国内PB生産量のシェアが約9割を占める日本繊維板工業会には、問い合わせが殺到している。
加えて、価格が安定していたはずのPB、MDFにも、昨今の資材高騰の影響が徐々に表れている。その要因となっているのが、接着剤とエネルギーの高騰だ。木質ボードを作るには、①木、②接着剤、③(加工時の)エネルギーの3つが必要になるが、このうち2つが大きく値上がりしている。特に、接着剤に関しては、木材チップ全体を固めるという木質ボードの生産過程上、他木材に比べてどうしても接着剤の使用量が多くなるため、影響を避けることが難しい。その結果、「価格の優等生」と言われてきたPB、MDFでも2022年1月から販売単価(円/㎥)が上昇。2020年2月時点でPBが3万9422円/㎥、MDFが4万3415円/㎥であったが、2022年4月にはPBが4万3316円/㎥、MDFが5万5037円/㎥と値上がりしている。
国内最大規模のPB工場年末以降に本格稼働
こうしたなかで注目が集まっているのが、永大産業と日本ノボパン工業が共同出資して設立した合弁会社、ENボードが立ち上げたPB工場だ。当初、2020年8月に操業を開始する予定だったが、コロナ禍の影響でスケジュールが遅れ、2022年に稼働開始した。JISを取得し、安定生産の体制が整うのは年末以降になる予定。最新の連続プレス機を導入することより、月産1万5000tの生産能力を持つ。この数値は国内におけるPB生産量の2割に相当し、国内最大の生産工場となる。
激変する市場環境の中、SDGsの観点からも注目されるマテリアルリサイクルであるPBやMDF。長谷川専務理事は「木質ボードが果たすSDGsや環境保全への貢献などをさらに周知し、意識の高いユーザーに採用してもらうための準備を今から進めておくことで、急激な市場の変化を抑えることができる」と語る。
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