[東京ボード工業]建設廃棄物をアーバンフォレストに 木を使い切る仕組みと技術で脱炭素社会に貢献

脱炭素時代に求められる住宅建材

脱炭素社会に向けた機運が高まる中、パーティクルボードの製造・販売を行う東京ボード工業(東京都江東区、井上弘之社長)の“アーバンフォレスト”を活用するための取り組みが注目を集めている。

「脱炭素社会の実現に向けて、世界中に存在する木材の絶対量を増やしていく必要があります」と、東京ボード工業の井上社長は指摘する。

二酸化炭素を吸収し炭素を貯蔵する森林は、脱炭素社会の実現に向けて重要な役割を担う。「伐って植える」というサステナブルな森林経営を推進していくことで、森林、さらには伐採後の木材製品にも炭素が貯蔵された状態を創造できるからだ。

しかし、近年問題視されているのが、木質資源のサーマルリサイクル。バイオマス発電などに木材をチップ化した燃料を使用すると、燃焼した時点で木材に貯蔵された二酸化炭素が一気に大気中に放出される。木材に貯蔵されたものを燃焼するため、「地球環境にとってはプラス・マイナス・ゼロではないか」という意見もあるが、数十年かけて木が貯えてきた二酸化炭素を一瞬で大気中に放出してしまうという行為を問題視する声も少なくない。コツコツと貯蓄してきた財産を、短期間で散財してしまうようなものである。

だからこそ東京ボード工業では、木を〝使い切る〟ことにこだわり、木材の絶対量を増やすための挑戦を続けているのだ。

30年以上前から独自のリサイクルシステムを確立

東京ボード工業が製造・販売するパーティクルボード「E・V・Aボード」は、ほぼ100%木質廃棄物を原材料としている。1991年から処分業の許可を取得し廃木材のリサイクルに取り組んできた同社。建設リサイクル法の施行が2001年であることを考えると、非常に先駆的な取り組みであったと言える。

木質廃棄物を調達するために、ゼネコンなどとリサイクル推進協定を結び、新築工事や解体工事の現場で発生する建設廃棄物を処理し再資源化を行うことからスタートしたという。

子会社を設立し一般貨物運送や産業廃棄物収集運搬業を取得させ、廃棄物を収集・運搬し、リサイクルの流れに乗せていく「静脈」を構築していった。当時は建設現場での分別回収が徹底されていない時代。そこで、廃棄物を回収するトラックドライバーが混合廃棄物を分別指導し、手で木質廃棄物だけを積込み回収するといった活動も行ったという。回収してきた木質廃棄物は、自社工場に運び込み、パーティクルボードへと再生していく。今では本社がある東京都江東区の新木場だけでなく、埼玉の自社工場や、横浜にあるグループ工場でも木質廃棄物を受け入れており、その量は月間で1万5000tにも達する。

また、建設現場にパーティクルボードを納品したトラックの帰り便で、廃棄物を回収してくるといった取り組みを徹底したことで、物流にかかる二酸化炭素排出量を10分の1にまで削減することにも成功している。

パーティクルボードを製造する企業は他にもあるが、自社で廃棄物の回収と処理を行い、製品にまで仕上げていく企業は同社だけだという。建設廃棄物というアーバンフォレストを資源に再生していく。この取り組みこそが、脱炭素社会の実現に向けて同社が注目を集めている理由のひとつである。

同社の井上社長は、「木質系の廃棄物を収集し、マテリアルリサイクルを行い再び製品として利用することで、木材が二酸化炭素を貯蔵した状態を長期間にわたり保つことができます。可能な限りマテリアルリサイクルを行い、もうこれ以上使えないという状態になってからサーマルリサイクルを行う―。こうした流れを作ることこそが、脱炭素社会に貢献するのです。そしてリサイクルに掛るエネルギーを固定されている炭素量より最小限に管理する事が重要」と語る。

木質系の廃棄物を収集し、マテリアルリサイクルを行い再び製品として利用する

第三者によるLCA評価を取得

同社では、スウェーデンで開発されたタイプⅢ環境ラベルの認証プログラムである「EPD」の認証を取得している。これは、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)に基づく製品の環境負荷の定量的なデータを表示するもの。第三者による環境評価を見える化することで、購入者が環境配慮型の商品などを選びやすくなる。

東京ボード工業では、いち早く自社の取り組みを第三者に評価してもらう必要性を感じており、日本でいち早く2004年にEPDの認証を取得したという。

長尺構造用パネルなど新たな製品開発も

新たなパーティクルボードの需要開拓にも取り組んでいる。そのひとつが、長尺構造用パネル「壁武者」だ。

3×8尺、3×9尺、3×10尺という長尺サイズのパーティクルボードを使った構造用パネルで、住宅に優れた耐震強度をもたらす。

ほぼ100%木質廃棄物が原料の長尺構造用パネル「壁武者」
ほぼ100%木質廃棄物が原料の長尺構造用パネル「壁武者」

当然ながらほぼ100%木質廃棄物を原料として使用しているため、構造用パネルとして使い続ける限り、二酸化炭素を貯蔵し続ける。

製造時だけでなく、先述したように輸送にかかる二酸化炭素排出量の削減にも貢献するため、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅などに最適な建材だ。

住宅分野でも、使用時の環境負荷だけでなく、製造・建築時や廃棄段階での環境負荷低減も求められているだけに、脱炭素住宅を支える材料としてのポテンシャルがさらにクローズアップされそうだ。

東京ボード工業
03-3522-4138
http://www.t-b-i.co.jp