2022.6.20

ライフデザイン・カバヤ、CLT利用拡大へ 商品開発を加速

建築家、伊礼智氏とコラボしたCLT住宅

ライフデザイン・カバヤ(窪田健太郎社長、岡山県岡山市)は、住宅・非住宅の分野で、CLTの利用拡大に向け、技術開発、商品開発を加速する。


2022年3月には、建築家の伊礼智氏とコラボレーションした企画型のCLT住宅商品を開発。加盟企業を募り、普及拡大を目指す。

ライフデザイン・カバヤは2017年に大学教育機関や民間企業らと共同で、オリジナル接合金物を用いた独自のCLT工法「LC‐core構法」を開発。壁倍率換算20倍相当の壁耐力を実現でき、建築物のコア部分にCLTを効果的に配置することで、CLTの設置枚数を抑えながら開放的な空間を創出できる。

2018年には、CLT工法「LC‐core構法」を用いたサステナブルな木造建築の普及拡大を目的に「日本CLT技術研究所」を立ちあげた。フランチャイズで会員企業を募集し、現在、全国各地のビルダーやゼネコンなど約40社が加盟する。

日本CLT技術研究所の城智己課長統括マネージャーは、「約40社にまで加盟店が増え、施工エリアは、北海道を除く全国に広がり、建設実績も着実に伸びている。しかし、CLTというと非住宅のイメージが強く、一般の方の認知度は低い。さらなる普及拡大を目指すには、より多くのエンドユーザーにCLTを知ってもらい、認知度を高めていく必要がある」と話す。

そこで、多くのファンを持つ木造住宅の建築家、伊礼智氏にアプローチし、CLT住宅の設計を依頼した。同研究所が開発したCLT工法「LC‐core構法」を用いて、2020年8月から販売を行っているCLT戸建住宅商品「LAMI」の持つスケルトン&インフィルの考え方をベースに、伊礼建築の思想を盛り込んだ企画型のベーシックプランを用意した。エンドユーザーのライフスタイルを反映して、雑壁などを変更することが可能で、プランに自由度を持たせた。加盟企業を募り普及拡大を目指す。


[インタビュー]伊礼智設計室 伊礼智 氏

CLTでも小さくかわいらしいたたずまいの住宅
企画型の基本プランを用意 協力工務店募り普及

ライフデザイン・カバヤさんから、最初にCLT住宅の設計を依頼されたときは、CLTに関する知識は少なく、正直に言えば、「住宅にCLTを使用するメリットは少ないのではないか」と考えていました。一方で、新しい建築材料として、無視はできない存在であることも感じていました。そこで、CLTの理解を深めるために、岡山県を訪れて、ライフデザイン・カバヤさんがCLTを使用して建設した3階建のモデルハウスをはじめ、CLTを製造する銘建工業さんの工場や、CLTで建てた新社屋などを視察させてもらいました。

実際にCLTや、CLT建築を見ることは大事です。「1枚のCLTで、天井と2階の床、両方の用途を持たせることができる」、また、「大変丈夫な材料であるため、少ない壁量で耐震性能を上げられることもメリットになる」、一方で、「設備配管などの孔を抜く必要があるため、CLTだけを使用することは難しい」といったことが分かってきました。視察を通じて、自分だったらCLTを活用して、こんな住宅を設計できるのではないかとイメージが湧いてきました。ライフデザイン・カバヤさんと、複数回の打ち合わせを経て、設計プランを考えたのが今回のCLT住宅です。

CLT住宅のコラボ商品の完成予想模型図。「腰屋根を採用したこともポイント。ロフトとして活用してもいいし、全館空調などの設置スペースとしても活用できる」(伊礼氏)

目指したのは、CLTを使用しても、小さくかわいらしいたたずまいの住宅です。様々なCLT建築を見て感じたのは、やはりどうしても建物のサイズが大きくなるということです。しかし、私が設計するからにはプロポーションを大事にしたい。建物の高さを低く抑え、感じのいいたたずまいにすることは、全ての案件で、どんな制約を課されても取り組んでいることです。ご近所に迷惑をかけることもありません。CLTを用いて、小さくかわいらしいたたずまいの住宅を実現しようとすると、制約は多くありましたが、例えば、天井をCLT現しで仕上げる一方で、反響音を抑えるために、壁に吸音材を施工する、といった対策で、階高を抑える工夫をしています。床に絨毯を敷くことでも反響音は抑えられます。

一般的に、2階建てのCLT住宅の階高は3mを超えるようです。一方で、私が設計したCLT住宅の階高は2m75cmです。普段設計している住宅の階高は2m52cmなのに対して、20cmほど高くなりましたが、可能な限り階高を抑えました。

完成予想内観CG。「32坪の小さな家だが、CLTを効果的に使うことで、空間的に楽しく、明確な骨格を持つように工夫した。その空間の使い方を工務店がアレンジしてもいい」(伊礼氏)

また、4つの8畳間で構成する〝4間角(よんけんかく)〟のシンプルなプランを考えました。その中で、CLTを耐力壁として使用することで、耐震等級3の耐震性能を確保しつつ、建築の空間的にも楽しく、明確な骨格を持つように工夫しています。

コストをどう抑えるかも大きな課題でした。そこで、企画型のベーシックプランを用意しました。CLTの耐力壁の位置は動かさない、といったルールを決めて、その中で家具の配置や、簡単な間取りの変更を行えます。〝4間角〟の広さがあれば、家具の配置の仕方で、様々な暮らしに対応できます。

私は、10年以上前から、「ⅰ‐works project」という住宅のシステム設計に、全国47社の地域工務店などと共に取り組んできました。私が手がけてきた住宅をブラッシュアップしながら各部位を「標準化」し、工務店の工夫で、面積の異なるプランに展開することができます。「手が届く価格で、ちいさくてもゆたかに暮らすことのできる住まい」の提供を目指しています。

建築家の仕事は、一品生産で、1回チャレンジして終わりということになりがちですが、「ⅰ‐works project」に取り組んで良かったなと思うのは、数は少ないですが、量産できることです。住宅を建てて5年経ってはじめて、この部位はこう変えた方がいい、といったことが分かることがあり、改善していくことができます。

今回のCLT住宅については、まだ実際の建築事例はありません。ぜひ私たちの考え方に共感し、一緒にチャレンジしていただける工務店の方を探して、まずは実際に建設してみたいですね。すでに数社の工務店が手を挙げていただいているようです。多くの工務店に参加いただき、建築事例が増えていくことで、こうすればより良くなるということがわかり、微調整、改善が進んでいきます。ぜひ多くの工務店の方の参加をお待ちしています。

ちなみに、私は沖縄出身であるため、沖縄で、このCLT住宅が普及していくことも期待しています。近年、沖縄で、木造住宅の普及が進み、新築の半分は木造で建てられています。沖縄で、風速60mの台風にも耐えられる、安全な木造住宅として、CLT住宅が訴求できるはずです。