2022.6.15

気象条件や建物形状の変化…深刻化する漏水ハザード

求められるリスクを最小化する防水対策

 

気象条件や建物形状の変化などによって、建物の漏水リスクが高まってきている。建物が完成してからの漏水事故は原因を解明することが難しく、深刻なクレームへとつながることも少なくない。居住者だけでなく、住宅事業者にも様々なリスクをもたらす懸念があるのだ。それだけに、よりきめ細やかな対応策を施し、リスクを最小化するための防水対策が求められている。

気象庁研究所では、1976年から2020年のアメダス3時間積算降水量を用いて集中豪雨事例発生頻度の経年変化を調査、その結果を公表している。それによると、集中豪雨の発生頻度はこの45年間で2.2倍に増加し、月別では7月の発生頻度が約3.8倍にまで増えている。

こうした気象条件の変化は、住宅に求められる防水対策を変えようとしている。従来であれば「これで十分」と思われていた防水対策では、漏水リスクを抑制できない懸念が高まっているのだ。

この状況に追い打ちをかけているのが、建物形状の変化だと言われている。かつての伝統的な日本家屋では、軒などによって建物に雨がかかってしまうことを防止していたが、最近ではいわゆる「軒ゼロ住宅」などが増えている。適切な対応を図っていれば、軒ゼロ住宅だからと言って漏水リスクが高まるわけではないが、防水対策を軽視してしまうと、思わぬ重大クレームへとつながる心配がある。

さらに言えば、住宅建築ならではの問題も表面化してきている。木造住宅などの場合、施工図や標準的な施工書などが用意されていないことが多い。細かな施工方法や手順などを現場任せにしていることも少なくない。そのため、細かな防水処理などに関する施工品質が必ずしも均一化されていないという問題があるのだ。

例えば、気密防水テープの施工方法ひとつをとってみても、テープを貼り付けた後にしっかりと押さえつけながら丁寧な施工する業者もいれば、「ただ貼っただけ」という業者がいることも事実。その結果、同じ住宅会社の住宅であっても、施工品質の差によって漏水リスクが変わってしまうことも起こり得る。

また、壁と屋根などの取り合い部について、サイディングの施工者と屋根の施工者との意識のずれによって、防水的な弱点となることも多い。サイディングと屋根については、それぞれの施工者が、建材メーカーなどが提供する標準施工方法などを考慮しながら施工していく。しかし、取り合い部をどちらが責任を持って納めるのかということがグレーな状態なままになっていることも少なくない。

日本住宅保証検査機構が
防水施工マニュアルを発行

日本住宅保証検査機構は「防水施工マニュアル(住宅用防水施工技術)2021」を発行。防水施工のマニュアル的な一冊

日本住宅保証検査機構では、こうした漏水リスクの高まりなどを考慮し、「防水施工マニュアル(住宅用防水施工技術)2021」を2021年10月に発売した。4年前に発刊した「防水施工マニュアル(住宅用防水施工技術)2017」を全面的に改訂したもので、写真や図を多用することで、より分かりやすいマニュアルになっている。

同マニュアルは、住宅瑕疵保険法人として2008年12月~2020年6月末までの期間で受付・保険金支払いをした雨漏り事故2600件を分析し、雨漏りを防ぐ施工手順を図解している。防水施工の標準化を進める住宅会社にとってバイブル的な存在とも言える一冊だ。同社商品・技術本部長である西山祐幸・専務取締役は、「品確法などの影響もあり、肌感覚としては雨漏り事故の件数は減っている印象があるが、建物形状の変化などによって新たな問題が表面化してきている」と指摘する。

このマニュアルでは、雨水浸入部位のワースト20をまとめている。図1は、木造住宅のワースト20だが、ワースト1位は、「サッシまわり」となっている。それ以降の部位を見ていくと、開口部のほか、取り合い部や外壁などが多いことが分かる。

また、2008年12月~2020年6月末までの保険事故発生部位をまとめた結果では、最も高い割合を示しているのは、屋根と外壁の取り合い部に関わる部位の合計の35.6%で、開口部を上回っている。
前述したように、軒が浅い建物が増える一方で、集中豪雨などの発生頻度が高まった結果、建物の壁から雨水が浸入することが増えていることが想像できそうだ。なおかつ、取り合い部の防水処理を誰が責任を持って行うのかということが不明確な状態が続いていることが、こうした状況をさらに悪化させているのかもしれない。

さらに言うと、最近では暴風雨の被害も増えており、暴風によって雨が下側から防水的に弱点になる部位に入り込むことも増えてきているという。例えば、バルコニーの笠木の部分や軒下の壁と屋根の取り合い部など。上から降る雨に対する対策だけでなく、風によって下から吹き込む雨水に対する対応も求められているのだ。

その他にも、以前であればそれほどリスクが高くなかった部位が、防水的な弱点になり、漏水リスクが高まっている。

成型品で〝泣き所〟をおさえる
施工品質の均一化にも貢献

施工業者によって施工品質や漏水リスクにバラつきが出てしまう防水対策。この点がきめ細やかな防水対策を阻む要因にもなっている。こうした状況を是正しようという商品も登場している。

フクビ化学工業では、防水的な弱点になり得る〝泣き所〟をおさえることで、より安全・安心な住まいの実現に貢献する「ウェザータイト」シリーズを販売している。成型品の住宅用防水部材で、2003年に「サッシ用」を発売したのを皮切りに、「パイプ用」、「バルコニー用」、「屋根用」とラインアップを増やしてきた。

防水的な“泣き所”をおさえるフクビ化学工業の「ウェザータイト」シリーズ

成型品の防水部材は、あらかじめ成型された部材を、防水処理を行う箇所にかぶせる・はめるだけで施工が完了し、あとは防水テープで貼り付けるだけで防水処理が行える(屋根用を除く)というものだ。ある程度の技能が求められるサッシまわりの防水処理などであっても、施工者のスキルや熟練度に左右されることなく一定以上の施工品質を確保できる。

同社は、この成型品防水部材のパイオニア的な存在。防水処理にこだわる住宅会社を中心に高い支持を得ている。また、商品バリエーションの充実にも取り組んでおり、サッシまわりについては、サッシ枠のかかり代に3サイズを取り揃えていて、樹脂サッシなどにも対応可能だ。

また、パンフレットに施工動画を確認できるQRコードなどを掲載するなど、施工品質のさらなる均一化に向けて取り組みを進めているところだ。

日本住環境の「ゴームパッキン」。電気配線を束ねるCD管やPF管まわり用の成型品の防水材料

配管まわりの成型品などを提案しているのは日本住環境。同社では、2007年に外壁の配管まわりの防水性を高める簡素化部材「ドームパッキン」を発売し、2015年には電気配線を束ねるCD管やPF管まわり用の「ゴームパッキン」も市場投入している。

配管まわりの防水処理は、通常、防水テープなどを用いて行う。しかし、防水テープを用いた施工の場合、どうしても施工品質にバラつきが出てしまうことがある。適切に施工されていない場合、テープに皺などが発生し、そこから毛細管現象によって雨水が浸入する危険性があるのだ。

同社の製品は、伸縮性があるポリエチレン素材をパイプや配管まわりにかぶせることで、密着して水の浸入を防ぐというもの。パイプとの密着部分にシーリングやテープ処理を施す必要もない。1つの製品で広範囲なパイプ径に対応することも特徴のひとつ。

同社では、住宅建築で使用されるパイプや配管のほとんどに対応できるラインアップを揃えており、防水テープからの切り替えを促している。

パイプや配管まわりの成型品の防水材料については、前出のフクビ化学工業などでも品揃えしており、「既に2割くらいはテープから切り変わってきているのではないか」という声もある。

日本住環境では、窓まわりの防水部材「ウィンドウ・シールド」や、隅角部のピンホールを完全にブロックする一体型コーナー材「シールドコーナーA/B」なども用意している。

同社では、「漏水の原因が雨水の浸入なのか、内部結露なのか判断し難い場合もある。漏水事故の原因を見極めながら、問題解決型の営業を推進している」としており、防水関連部材だけでなく、独自開発の通気や気密に関する商品なども利用しながら、漏水リスクを極小化にするための取り組みを進めている。

防水的な弱点を克服するうえで見逃せない存在が気密防水テープ。透湿防水シート同士のつなぎ目のほか、配管まわりなどの防水処理などでも一般的に使われている。前出の成型品の登場によってライバルが増えた格好だが、成型品の施工にも防水気密テープが使われるため、共存関係にあるとも言える。

約20年前に業界で初めて製品化に成功した光洋化学のアクリル系の気密防水テープ「エースクロス」

光洋化学では、業界で初めてアクリル系の気密防水テープ「エースクロス」の製品化に約20年前に成功。それまでの主流であったブチル系のテープの弱点であった耐久性の問題などをクリアするなど、気密防水テープの分野に一石を投じた。同社の気密防水テープは、50年後も新品同様の粘着力、伸縮性、強度を維持することが試験などで明らかになっている。

最近では気密防水テープに対する知識や施工経験が少ない施工業者などが誤った施工や材料選択を行うこともあり、同社は「適切な気密防水テープを選択し、適切な施工を行えば長期間にわたり性能を維持できる。それだけに気密防水テープに関する知識を広めていきたい」としている。

アスファルト系の防水材による先張り施工にも注目

取り合い部などの防水的に弱点となる部分の対策として、防水シートを先張りする手法がある。例えばサッシ周りであれば、先張り防水シート、伸長性防水テープの後にサッシ枠を取り付け、縦枠の防水テープ、上枠の防水テープという順番で施工していくことが求められる。

サッシまわりや取り合い部からの雨水浸入が問題になってきているだけに、防水シートの先張りは、非常に重要な防水対策である。

こうしたなか、2021年3月、(一社)日本防水材料協会(JWMA)が、アスファルト系の先張り防水シート(先張り防水シート及び鞍掛けシート)について、JWMA規格(JWMA−A01)を策定した。屋根分野では、防水材料としての確かな実績を備えているアスファルト系の防水材料だけに、徐々に先張り防水シートでも存在感を強めてきている。

JWMAの規格公表よりも前から、アスファルト系の防水シートによる先張りを提唱してきたのが田島ルーフィング。改質アスファルトを利用した外壁防水用の副資材をパッケージ化し、「ウォーターブロックシステム」として提案している。さらに昨年10月には、軒ゼロ住宅で屋根・壁の防水紙の連続性を図る目的で、野地板の先端部まで巻き込むことができる「とりあいルーフィング F」の発売も開始した。

開口部・サッシまわりをはじめ、ベランダ笠木、屋根・外壁などの商品をラインアップしており、雨漏りの原因となる部位を総合的にカバーしている。

アスファルト系の防水材料の特徴でもあるビスや釘に対するシーリング性によって、長期にわたり雨水の浸入を抑制する。面で覆うタイプの材料の場合、サッシまわりの隅角部に覆いきれないピンホールが生じることがある。こうしたピンホールをカバーするためのノービルテープという伸張性のあるテープも用意している。

同社では、「先張り防水シートについては、まだまだ伸びる余地が残っている」としている。JWMAの規格策定を追い風に、他の素材とアスファルト系材料の違いを訴求しながら、先張り防水シートとしてのシェア拡大を図っていきたい考えだ。

日新工業では、改質アスファルトを2枚の合成繊維不織布で挟み込んで一体化させた防水水切りシート「カッパテープN300・N500」を販売している。N300は、窓まわりの防水シートとして利用するもので、N500はベランダの鞍掛けなどに使用する。

同社でも、JMWAの規格策定を契機として、カッパテープなどの提案を加速させていきたい考えだ。
成型品やアスファルト系の先張り防水シートなどによって、防水上の弱点を補う環境は整いつつあると言っていいだろう。年間の受注棟数が増えれば増えるほど、増えていく漏水リスク。そのリスクを放置することで、「気が付けば手遅れ」という状況にもなり得る。

施主だけでなく、住宅会社にとっても、よりきめ細やかな防水対策が、見えないリスクの回避へとつながることは間違いないだろう。

長期耐久性の実現など屋根の下葺材の高付加価値化が進む

壁や開口部まわりなどの漏水リスクが高まっていると言っても、住宅の防水性能を語るうえで屋根部分の対策を忘れることはできない。

住宅の屋根については、瓦や化粧スレート、金属屋根材などの仕上げ材の下に、下葺材と言われるものを施工する。この下葺材が二次防水の役割を果たし、屋根からの雨水の浸入を防止するのだ。

住宅の下葺材で圧倒的な強さを発揮するのがアスファルトルーフィング。近年は改質アスファルトルーフィングが一般化してきている。改質アスファルトルーフィングは、通常のアスファルトルーフィングに樹脂やゴムなどを添加し、釘穴シーリング性などの性能を向上したもの。下葺材の多くは、タッカーなどを使い留めていくことが一般的だが、この際にタッカーによる穴がルーフィングに開いてしまう。アスファルトルーフィングは、タッカーなどで穴が開いても、材料そのものが穴をシーリングしていくという特徴を持っているが、改質アスファルトルーフィングは、この釘穴シーリング性がさらに向上している。

瑕疵担保責任の義務化などによって、非改質から改質へという流れが加速し、2017年にはシェアが逆転。 また、2004年には当時のアスファルトルーフィング工業会(現在の(一社)日本防水材料協会に統合)が改質アスファルトルーフィングの工業会規格「ARK04S」を策定し、改質アスファルトルーフィング普及の追い風となった。

こうしたなか、アスファルトルーフィングのメーカー各社は、改質アスファルトルーフィングのさらなる高付加価値化を目指した商品を市場に投入している。

住宅の長寿命化に貢献する60年の耐久性を備えた田島ルーフィングの「マスタールーフィング」

田島ルーフィングでは、約40年前から販売し、改質アスファルトルーフィングの先駆けとなった「ニューライナールーフィング」の販売を強化している。同社内では、2013年に改質が非改質を逆転し、大手ハウスメーカーやパワービルダー系の住宅会社を中心に販売を伸ばしてきた。40年が経過した実際に施工された改質アスファルトルーフィングのサンプルを調査した結果、防水性能を維持していることが分かったという。
また、60年の耐久性を誇る「マスタールーフィング」も販売している。アスファルトは酸素と触れることで酸化が促進され、柔軟性が損なわれる。そこで、劣化防止層をルーフィングの表面に設けることでアスファルトと酸素が触れ難くなり、耐久性を伸ばすことに成功した。

住宅メーカーを中心として、保証期間をさらに長期化しようという動きが加速するなか、屋根材や壁材などについても、これまで以上の耐久性を高めることが求められている。しかし、屋根材が60年もったとしても、その下の下葺材の寿命が60年以下であれば、結局は屋根全体の耐久性は向上しない。下葺材のために屋根材そのものから交換しなくてはいけないという事態になってしまう。

そのため、長期保証を謳う住宅会社から、60年の耐久性を備えたマスタールーフィングへの問い合わせなどが増えてきているそうだ。

また同社によると、「最近ではホームページを見た一般のお客さまから、マスタールーフィングについての問い合わせが入ることが増えている」という。

日新工業の機能性改質アスファルトルーフィング「アルバシリーズ」。「アルバクリア」は、高温時のアスファルトのベタつきを抑制し、施工性向上などに貢献する

日新工業でも改質アスファルトルーフィングの長寿命化に取り組んでいる。同社では、アスファルトルーフィング940、改質アスファルトルーフィングのカッパシリーズ、粘着層付きのカスタムライトなどに加えて、機能性改質アスファルトルーフィング「アルバシリーズ」も展開している。

「アルバクリア」は、高温時のアスファルトのベタつきを抑制し、施工性向上などに貢献するもの。「アルバフェイス」は、ベタつきを抑制すると同時に、防水性・耐久性・施工性を重視したものだ。アスファルトの使用量を減らすことなく、重量を軽くすることにも成功しており、1巻の重量は18㎏で、カッパシリーズのカッパルーフ2号は1巻16㎏だ。一般的なアスファルトルーフィングであれば1巻23㎏くらいの重さがあり、屋根までの荷揚げ作業だけでも苦労するだけに、軽量化によって施工者の作業負担の軽減につながる。
そして、新たに市場投入したのが「アルバエース」。高い柔軟性を有する超耐久改質アスファルトと、高性能ブロック基材である特殊合成繊維不織布の製品構成により、60年の長期耐久性を誇る。同社でも今後、長期保証などを進める住宅会社などへアルバエースの提案を積極化させていきたい考え。

アスファルト系からの切り替えを狙う透湿ルーフィング

アスファルト系以外の素材を活用したルーフィングも活躍の場を広げている。

そのひとつが透湿ルーフィング。2016年8月に、透湿防水シートのJIS規格が改正され、外壁用透湿防水シートに加えて、新たに屋根用透湿防水シートという区分が設けられた。

アスファルトルーフィングに比べると圧倒的に軽く、なおかつ湿気を外に排出し、屋根裏の乾燥を促す。ただし、透湿ルーフィングを使用する際に大きな課題となるのが釘穴シール性であった。

フクビ化学工業では、遮熱性能を持つ透湿ルーフィング「遮熱ルーフエアテックス」を販売しているが、2020年には汎用性をもたせた「ルーフエアテックスST」も市場投入している。

JISで定められたくぎ穴止水性試験をクリアしているだけでなく、シート表面に防滑性のある特殊不織布を使用し、施工作業中に滑り難くいといった特徴も備えている。さらにJISで定められた50年相当の耐久性も確認している。

セーレンの次世代ルーフィング「ルーフラミテクトZ シリーズ」。特殊ポリマーが膨張することで釘穴などからの漏水を防止する

セーレンでは、遮熱型の透湿ルーフィング「ルーフラミテクトRZ」に加え、非透湿タイプの「ルーフラミテクトZシリーズ」もラインアップし、販売に注力している。壁に使われていた透湿防水シート「ラミテクト」をルーフィング用に改良したもの。「ルーフラミテクトZ」は遮熱タイプや粘着タイプなども揃える。
海底ケーブルでも利用されている特殊ポリマーの技術によって止水性を高めている。特殊ポリマーが膨張することで釘穴などからの漏水を防止するという仕組みで、優れた耐久性も発揮する。

フィルム自体にアルミを練りこむことで優れた遮熱性も長期間にわたり発揮する。同社では、「透湿ルーフィングも石油製品ではあるが、アスファルトルーフィングと比較すると原材料の調達はそれほど難しくない。今後、石油に依存した製品の原材料調達が難しくなってくると、その点が強みになってくるのではないか」と見ており、アスファルトルーフィングからの置き換えを狙っていきたい考えだ。

シート防水を陸屋根に
箱型建物の増加でニーズ高まるか

早川ゴムでは、陸屋根向けに、塩化ビニル樹脂系シート防水工法「サンタックIBシート防水」を提案している。

北海道などの住宅密集地では、雪を周囲に落とさない無落雪屋根が求められ、そのため木造住宅であってもフラットな陸屋根にすることが多い。この際に問題になるのが雪融け水の排水。落雪しないように雪を屋根の上にとどめ、融けた水はいち早く排水する必要がある。そこで金属屋根ではスノーダクトと呼ばれる溝を屋根の中央部などに設け、そこに向けて勾配をつけた仕様が採用されるケースが多い。しかし、この仕様を採用した住宅で漏水事故が多発するという課題があった。その課題を解決したのがサンタックIBシート防水だ。

早川ゴムの塩化ビニル樹脂系シート防水工法「サンタックIB シート防水」。CLT 建築向けの下地防水で、飛び火認定を取得した「IB-HDF-CLT工法」もある。

プールなどにも使用されるサンタックIBシート防水を陸屋根に施工し、落雪と漏水事故の両方を防止しようというものだ。この工法の推進役となっているのが、金属屋根と同等以上の耐久性を持つ早川ゴムの「サンタックIBシート防水」というわけだ。

最近では本州での引き合いも増えているだけでなく、大手ハウスメーカーからの問い合わせなどもあるという。キューブ状の住宅の場合、一見すると屋根もフラットに見えるが、排水のための建物外部に向けて勾配が付けられていることが多い。防水性能を高めるための措置だ。しかし、サンタックIBシート防水を利用すると、緩勾配でも防水性能及び耐久性を向上することができ、その点が徐々に注目を集めつつあるようだ。

さらに、同社ではCLT建築向けの下地防水で、業界初となる飛び火認定を取得している。フラットな屋根になることが多いCLT建築の下地防水のスタンダードとして普及を図ろうとしている。

木造住宅用ではないが、耐風性能を高めた商品も発売予定。断熱材の種類を見直し、プライマーと接着剤を自社生産し、これまで以上に風による強さを高めることに成功。さらに、断熱材ごと吹き飛ばされることを防止するための固定方法も公的機関で実証し、新たに開発した。将来的には木造住宅でも同様の商品を展開していきたい考えで、災害対策という観点でも付加価値が高まりそうだ。

住宅の防水対策については、完成すると目に見えなくなる部分だけに、ある意味ではごまかしがきく分野でもある。しかし、そうした考えが重大なトラブルへと発展し、施主の信頼を損ねてしまうこともある。集中豪雨の発生頻度の増加などによって、そうした事態を招く危険性が高まっているとも考えられる。SNSなどの普及によって、一度失墜した信頼が広く伝播し、会社のブランド力を簡単に低下させてしまうだけに、持続可能な経営を実現するうえでも、きめ細やかな防水対策が非常に重要になりそうだ。