2022.4.14

エヌ・シー・エヌ,「木構造技術センター」を開設

中大規模木造建築の提案力を強化

エヌ・シー・エヌは「木構造技術センター(Timber Structure Lab.)」を埼玉県川口市に開設した。特に中大規模木造建築向けの構造要素の実験を、自社でスピーディかつコストを抑えて実施することで、中大規模木造建築の提案力強化につなげる。


中大規模木造を想定した150角柱の脚部に使われる接合部の引張実験の様子。約150kN の短期許容耐力を持つ接合金物を使用した

SE工法による建築ネットワーク事業を展開するエヌ・シー・エヌは、近年、中大規模木造建築事業を強化する。大規模木造の構造設計者など、人材獲得の強化、プレカット工場のネットワークを30社にまで拡大するといった施策で、2023年度までに大規模木造建築事業の売上高30億円達成を目指す。

2020年度には、大規模木造に取り組む設計事務所・ゼネコンなどの相談窓口の一本化、分かりやすい木構造加工・供給の仕組を構築する目的で、木構造デザインを立ち上げた。SE構法だけでなく、在来軸組工法、2×4工法、CLT工法に対応したマッチングサービスを展開する。

同社に寄せられる中大規模木造建築に関する相談も2018年の252件から、2021年には493件にまで年々増加している。

大規模木造を想定した試験設備
未来に向けた基礎研究も

そして今回、埼玉県川口市に住宅規模から中大規模木造建築物まで、木構造に関する技術開発を推進する目的で、木構造技術センターを開設した。

これまでも大学や他社の実験施設を活用して、SE構法の耐震実験など構造性能を把握する実験を行い、安全性の検証を行ってきた。しかし、大学や他社の実験設備ではスピード感を持った開発が難しかった。また、住宅規模を想定した試験装置が多く、中大規模木造向けの構造要素の開発ができる場所が限られるという課題もあった。

そこで、木構造技術センターには、中大規模木造の構造試験を想定した試験設備をオーダーで製造して導入した。

4階建てSE 構法を想定して開発した柱脚接合部と耐力壁を使った水平加力実験も実施した

地震で木造建築物が倒壊する要因の一つに接合部が弱いことが挙げられる。木構造で重要な「接合部」の開発を重視して、最大100tの圧縮・引張実験が可能な「1000kN万能試験機」を導入した。幅2m×奥行4.5m×高さ2mまでの寸法の試験体に対応する。

また、耐力壁・ラーメンフレーム・床・屋根の水平加力実験が可能な「200kN面内せん断試験機」も導入。スパン4.5m×高さ3.5mまでの寸法の試験体に対応する。

今後は、自社の技術開発センターで、SE構法の耐震性や防火性能を追求する。また、住宅規模から中大規模木造建築までのSE構法以外の木構造についても開発研究を進める。さらに、10年後、20年後を見据えて、研究機関などと連携して、様々な条件下でのデータを蓄積し、基礎研究を推進していく考えだ。