2022.4.6

長谷工グループ、“交流を促す”賃貸住宅を東京・赤羽に開発

ICTを導入しサービスレベルを向上

長谷工グループは、東京都北区赤羽に、学生寮・シェア型企業寮・賃貸マンションからなる共創型レジデンス「コムレジ赤羽」を開設した。多様な公共施設やサービスにより、入居者の交流を促す。賃貸住宅の新しい価値の創出を目指す。


「コムレジ赤羽」の敷地中心部に設けた中庭。1階では、共有部の一つとして、食事を提供するカフェテリアも運営する

同社は2017年に「コムレジ赤羽」の開発をスタートした。賃貸住宅は一般的に隣人との交流は希薄だ。「隣に誰が住んでいるのかわからない」ということも珍しくはない。そうした従来の賃貸住宅のあり方とは真逆の「居住者同士が交流できる賃貸住宅があれば面白いのでないか」という若手社員のアイデアから開発がスタートした。

また、同社と取引きのある企業から「若手社員のコミュニケーション能力を高めたい」という声が寄せられるようになってきたことも、共創型レジデンスの開発を後押しした理由の一つだという。「転勤先の職場になじめず、孤立しがちになる社員が少なくない」、また、小売業の企業からの「日々の接客業務の中でエンドユーザーには接しているが、社員間の交流が少ない」といった声、さらに、コロナ禍後、テレワークが普及する中で、「在宅勤務が増え、会社はフリーアドレスになり、社員間の交流が従来よりも希薄になっている」といった声だ。

「居住者同士の交流を促す賃貸住宅」はどのような形なのか、また、「若手社員のコミュニケーション能力を高めたい」という企業側のニーズを住まいで解決するにはどうしたらしいのか。5年間の試行錯誤の上に、「学生、社会人、留学生、夫婦など、色々な人が暮らす住まいだからこそ、様々な可能性が広がるのではないか」という考えから、「学生寮」、「シェア型企業寮」、「賃貸マンション」という異なる価値観やライフスタイルを持つ人々が住む共創型レジデンス「コムレジ赤羽」を具現化した。「集まる楽しさを、自分たちの成長へ」というコンセプトを設定し、豊かなコミュニティ形成を促すことができる仕掛けを盛り込んだ。

社会人棟の1階部分に設置したラウンジのイメージ。酒類も提供するため、社会人棟、賃貸棟の入居者のみ利用可能

さらに、地域や大学、企業とも連携したコミュニティ形成の取り組みを進める。「学生やアーティストとのコラボによるアートイベントの開催や協賛企業とのタイアップ企画など、様々な活動により住まいの外にも交流の輪を広げていきたい」(同社)考えだ。

多彩な共有空間、イベントで居住者の交流促進

「コムレジ赤羽」は、約5200㎡の敷地に、「社会人棟(168戸)」、「学生寮(112戸)」、「賃貸棟(60戸)」の3棟の建物からなる。1階には、中庭を中心に様々な共有空間を設けた。自分の時間を過ごしたり、仲間と談笑したり、時にはイベントも開催できる複数の「ラウンジ」をはじめ、健康的な食事を提供する「カフェテリア」、キッチンを備え、誕生日会やフードイベントなどを楽しめる「パーティルーム」、健康管理やストレス発散に寄与する「フィットネススタジオ」、楽器の練習やカラオケ、映画の鑑賞など様々なシーンで利用できる「サウンドルーム」など、多彩な共有空間が居住者間の交流を促す重要な場所になる。

また、「社会人棟」には、各階に、キッチン付きシェアリビングやワーキングルームを用意。「学生寮」にも、フロアごとに共用のリビング、ダイニング、キッチンを用意した。「社会人棟」の各居室は約16㎡のワンルーム、「学生寮」の各居室は約12㎡のワンルーム。浴室、トイレ、シャワールームなどの設備は完備しているが、1人暮らしには必要最低限の広さ、設備とする一方で、十分な広さの共有リビングなどを用意し、設備の充実を図ることで、できるだけ部屋から出て、共有リビングなどに集まりたくなるように工夫した。

また、長谷工グループがイベントを開催して居住者間の交流をサポートする。季節ごとに、料理会、お茶会、中庭や近隣の川で自然を感じるアクティビティ、地域アーティストや専門家とコラボしたモノづくり・手仕事体験などを企画し交流を促す。さらに、「社会人棟」の居住者限定で、幅広い学習カリキュラム「GAKU家」も用意している。テクノロジーマーケティング・SDGsといった日常業務では触れる機会の少ない社会課題から、日常生活を一歩掘り下げたテーマまで、幅広い題材を取り上げ、専門の講師を招き、学習の機会を創出する。気軽に参加できるサロンのようなスタイルから、課題解決の企画立案に挑戦するゼミのようなスタイルまで、幅広いカリキュラムを準備している。

スマホ一台で快適に生活
サービスのアップデートも

「コムレジ赤羽」では、最先端のICTシステムを導入し、サービスのアップデートを図る取り組みも進める。

同社が独自に開発したアプリ「まいりむアプリ」を居住者に利用してもらい、「スマホひとつあれば、『コムレジ赤羽』内で、快適に生活できる環境を創出していきたい」(同社)考えだ。各種センサーなどと連動し、取得した情報をスマートフォンから確認できるアプリで、例えば、顔認証によるエントランスの開錠、宅配ボックスの着荷表示、荷物受け取りなどができる「非接触認証」機能、共用施設の利用状況が把握できる「混雑状況監視」機能、現地のピンポイント気象情報や地震情報を取得する「環境モニタリング」機能などを搭載。新型コロナウイルス感染対策を始めとするニューノーマル時代に対応した安全・安心・快適な住まいを提供する。また、居住者の了解を得て、建物自体、生活者のビッグデータを分析し、より利便性の高い新サービスの開発、アップデートにも取り組む。

「コムレジ赤羽」において、様々な仕掛けで居住者の交流を促し、また、最新のICTシステムを導入しサービスのアップデートを図り、ノウハウを蓄積し、将来的には、同社グループの分譲マンションなどへの技術、サービスの展開も視野に入れる。

なお、「コムレジ赤羽」の家賃は、「学生棟」が賃料8万円~9万5000円/月、共益費1万円/月。「社会人棟」が賃料10万7000円/月、共益費1万3000円/月。「賃貸マンション棟」(専有面積は約29㎡~約58㎡)が賃料12万8000円~26万円/月、共益費2万4000円~3万円/月。