木質トラスで建築の可能性を拡大 現場作業を軽減、工期短縮、端材削減も
プライムトラス 代表取締役社長 村井秀壽 氏
国内初の木質トラスのファブリケーターであるプライムトラスは2022年に創業50年目を迎える。
同社の村井秀壽社長は、「脱炭素、SDGsといった観点から木材利用、木造建築への注目度が高まる中で、小屋組みを合理化できる木質トラスの優位性を強くアピールしていきたい」と話す。
──御社の強みを教えてください。
当社は1973年に創立した、我が国最初の木質トラスファブリケーターです。2022年に創業50年目を迎えます。設計・製造から納品までスピーディに対応し、豊富な実績を持ちます。
当社が販売するのは、北米産材の2×4工法用の製材を「ギャングネイル」という金属緊結材でつなぎとめ、形成する木質トラスです。トラスは三角形を単位として組まれた部材構造形式で、構造部にかかる力、圧縮力と引っ張り力を、トラス構造の軸力のみに単純化して負担することで、軽量で変形に強い構造体を実現できます。
木質トラスを採用することで、従来の屋根架構の主体を占める小屋梁方式に比べて、屋根構面の構造強度が向上することはもちろん、屋根荷重の軽量化、分散化も図れます。間仕切り壁に屋根荷重がかからず、外周壁の二点支持で屋根荷重を支える構造になり、大スパンを飛ばし、大空間を創出しやすくなります。2×4工法に加え、在来軸組工法、プレハブまで、あらゆる工法と組み合わせることが可能です。
また、外壁部が荷重を負担するために内部耐力壁の省略が可能となり、間取りなどの設計の自由度も飛躍的に向上します。間仕切り壁の撤去や移動もしやすくなり、リフォームが容易なこともトラスの大きなメリットです。フローからストックへ、50年、100年と住宅を長く大切に使っていこうとする機運が高まっていますが、木質トラスを採用することで、間取りを可変しやすくなり、ライフステージの変化にも対応しやすくなります。
設計・製造・納品までサポート
日本各地に工場、全国エリアに供給
──木質トラス単体の販売に加え、設計・製造から納品まで一貫したサポートを行っています。
物件ごと、トラス1本ごとに構造計算を行います。設計事務所、プレカット工場、ハウスメーカーなどから提供いただいた簡単な平面、立面図から、最適な形状、必要な強度のトラスの構造検討を行い提案します。構造検討のうえ製造する軽量な小屋組は、屋根荷重を大幅に低減し、建物の耐震性能の向上につながります。
さらに、品質の安定した高精度なトラスを工場で生産します。現場では工場生産されたトラスを配置するだけで、現場加工は不要です。近年、住宅の現場施工を担う大工・職人の高齢化、減少が深刻化していますが、現場の作業負担の軽減、高所の危険な作業を減らすことができるといった観点から、木質トラスを採用いただくケースが増えています。
工期も大幅に短縮できます。一般的な住宅では、小屋組みトラスの配置と合板による野地仕上げまでがわずか1日で終了します。コスト削減の大きなファクターとなります。小屋組が短時間で完成するので、構造躯体が雨に濡れるリスクも軽減できます。さらに、現場加工による端材、廃材の発生も抑えることができ、環境にも優しい構造部材と言えます。
日本各地に生産工場を整備し、全国エリアへ供給可能なことも当社の強みです。栃木県の藤岡町、宮城県登米市、三重県伊賀市、山口県山口市に工場があります。当社の総売上の約7割が住宅、約3割が非住宅となっています。住宅分野では、賃貸アパート、分譲住宅、注文住宅など様々な案件で、当社の木質トラスが採用されています。スパンを飛ばし大空間を確保できることや、スケルトン・インフィルの考え方で可変性を持たせられることなどに価値を見出しているハウスメーカーなどから支持を得ています。
前述したように、人手不足の観点から、工場で生産し、現場では配置するだけで、施工が完了する木質トラスの優位性は増してきています。この点をより強く訴求していきたいと考えています。特に、分譲住宅は、工期をいかに短縮できるかが勝負になります。コストとの兼ね合いもありますが、木質トラスで建てた方がより合理的にスピーディに建てられると、採用実績が増えています。一方で、人手不足は注文住宅でも同じです。現時点では採用いただいていなくても、生産合理化のために、木質パネルに切り替えるというハウスメーカーは、今後さらに増えていくと見ています。
大工・職人が減少する中で、より付加価値を高めた提案も強化しています。例えば、寄棟屋根は、建物の意匠性向上や、斜線制限への対応で、採用されるケースが増えていますが、手間がかかり、現場施工が大変な箇所でもあります。そこで当社が提案しているのが、小さな木質トラスを組み合わせ、寄棟屋根をユニット化することです。現場の作業負担を大幅に軽減できます。こうした細かいところでも付加価値を高める提案を強化しています。
脱炭素、SDGsで木造建築に追い風
非住宅の床組みに平行弦トラス
──非住宅分野での引き合いも増えているのでしょうか。
2010年の公共建築物等木材利用促進法の施行を一つの契機に、非住宅分野においても木造化のニーズは着実に高まってきています。木は持続可能な資源であり、成長過程でCO2を吸収、削減し、その後、伐採、加工し、建材として建物に使用する過程でCO2を固定化できるため、近年は脱炭素、SDGsといった観点からも木材利用、木造建築へより強い追い風が吹いています。森林資源を適切に管理すること、伐採期を迎えた木材を有効活用し再造林していくことが世界中で求められています。
非住宅は大スパンが飛ばせるという木質トラスの強みを最大限に生かせる分野でもあります。高齢者施設、福祉施設、幼稚園、事務所、店舗、倉庫など、様々な非住宅案件で、実際に当社の木質トラスの引き合いが増えています。
鉄骨造などに比べて木造の方が、地盤改良、基礎打設の段階のコストを削減でき、また、減価償却期間を短縮できます。こうした点も木造で建てるメリットになり、施主へのアピールポイントになります。
屋根だけでなく、床組みにも木質トラスは使用できます。「平行弦トラス」を導入することで荷重を外壁の耐力壁で支え、階下に大空間を創出できます。2階建てで、1階のフロアのスパンを飛ばしたいという非住宅案件で採用が増えています。平行弦トラスは、部材間のスペースを活用してダクトや配管などを容易に設置できるという特性も有しています。
大工・職人不足が深刻化する中で、現場の作業負担の軽減、工期短縮に寄与すること、また、脱炭素、SDGsへの対応が求められる中でCO2削減に貢献できること、これからの時代にますます求められる構造部材であることをしっかりアピールして木質トラスの普及拡大を図っていきたいと考えています。
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