2022.3.15

BIMの標準業務フロー示すガイドラインを改定

発注者が使用するメリットを感じられるものへ

BIMガイドラインの改定作業を進める建築BIM環境整備部会(部会長:志手一哉 芝浦工業大学 建築学部建築学科 教授)は「発注者のメリットと発注者の役割」などを新たに盛り込むガイドライン改定の方向性を示した。


ライフサイクルで管理するBIM

2020年3月に策定されたBIMガイドラインは、BIMのプロセスの横断的な活用に向け、関係者の役割・責任分担などを明確化するため、標準ワークフロー、BIMデータの受け渡しルール、想定されるメリットなどをまとめたもの。2020年度から実施する「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」の検証結果を踏まえ、発注者側が十分なメリットを感じていないことなどが普及のネックになっていることから、今回の改定版では、発注者側のメリットと役割を明確化する。

同部会の委員の一人は、「BIMが普及していくためには、BIMが設計者、施工者など、受注者のための設計・施工ツールだけではなく、発注者に加え、建物の所有者、利用者、運営管理者、施設管理者など、多様なステークホルダーも利用できるツールになっていく必要がある」と説明する。

そこで今回の改定版では、発注者のBIM活用目的の区分として、プロセスマネジメントとアセットマネジメントの2つがあることを例示する。前者は、主に設計や施工などの発注を行う「発注者」が対象となり、建築生産プロセスにおいて、BIM活用により直接的に得られる収益や、発注業務の効率化などを目的としたもの。後者は、発注者に加え、建物所有者、維持管理者、運用管理者など様々な関係者が対象となり、完成した建築物の保有、運用、維持管理を行う段階で、BIM活用により、保有資産の運用・データ管理を行うことで得られる業務効率化や、収益向上などを目的としたものとなる。

また、発注者を支援するライフサイクルコンサルティング業務の重要性を新たに明記する。標準ワークフローに沿って一貫したBIMの活用を行うには、発注者がBIMの活用目的や方針をEIR(発注者情報要件)として定め、受注者がこれに対応したBEP(BIM実行計画)を定めることが重要になる。そのためには、発注者が各段階でどのようなデジタル情報が必要か、または得られるかを理解し、EIRに反映する必要がある。そこで、建築生産プロセスだけでなく、維持管理や運用段階も含めたライフサイクル全体を通じ、発注者を支援するライフサイクルコンサルティング業務が重要な役割を果たす。さらに、ファシリティマネジメント(FM)ソフトとの連携など、データベースとしての活用を念頭におき、維持管理・運用BIMの作成方法も新たに明記する。BIMガイドラインを追記修正し、3月24日に開催する建築BIM推進会議の承認を受けて、正式な改定版を公表する。