2022.3.2

(一社)環境共創イニシアチブ 「断熱改修で暖房設定温度は2.3℃低下」

半数以上の光熱費が下がり、満足度は6割超え

断熱改修により暖房設定が下がり、光熱費も減少する―。
実際に断熱リフォームを行った事業者に対する調査で、こうした具体的な効果が明らかになった。


断熱改修により暖房の設定温度が2.3℃低下し、92%が改修工事に満足した―断熱改修の具体的な効果、満足度の高さを示す調査がまとまった。

これは(一社)環境共創イニシアチブがまとめた「次世代省エネ建材支援事業 調査報告書」で明らかになったもの。

同事業は、短工期で施工可能な高性能断熱パネルや潜熱蓄熱建材、調湿建材などの付加価値を持つ省エネ建材を用いた断熱改修を行うものに対して、補助率1/2以内で、戸建住宅で上限200万円/戸、集合住宅上限125万円/戸の補助を行ったもの。令和3年度は一次~三次公募が行われ、戸建住宅410件、集合住宅67件の交付が行われた。
この補助事業の効果を把握、分析・評価を行うために、断熱改修を実施した補助事業者に対して実施したアンケート結果をまとめたものが「次世代省エネ建材支援事業 調査報告書」である。

断熱改修を実施したきっかけ

断熱改修工事の実施については、全体の69.8%は「リフォーム計画当初から予定していた」が、残りの30.2%は「当初は予定していなかったが、検討を進めるなかで追加した」。断熱改修工事のきっかけは「自ら調べて実施した」が47.3%と半数弱いるが、「リフォーム業者(工務店)に薦められたから」も44.8%と同程度おり、当初は計画していなくとも、薦められ検討することで実施する人が多いことがわかる。

また、断熱改修工事の目的は、「リビングなど主な居室の暑さ/寒さといった環境を改善するため」(91.3%)がトップであり、「トイレやお風呂など水回りの寒さ改善のため」(47.0%)と「カビや結露の発生などの宅内環境を改善するため」(53.0%)の2項目が5割前後で続く。逆に「ヒートショックを防ぐため」は33.3%と他項目に比べてそれほど多くはなく、日頃の暮らしにおける不満の解消が大きな目的となっているようだ。

効果が感じられないや開口部の不満も

断熱改修工事の目的

断熱改修工事を行った結果について、主たる居室の「断熱改修工事前後の暖房設定温度の変化」は、改修前から1℃以上下げた事業者が77.1%、そのなかで5℃以上との回答も14.6%いる。断熱改修後の暖房設定温度は平均で2.3℃低下した。

その他の居室については、1℃以上下げた事業者は74.3%とこちらも7割超え。5℃以上下げた事業者は15%となっている。平均温度は2.2℃低下と、主たる居室と同様の結果となった。

こうした断熱改修の結果、光熱費が「安くなった」は17%、「やや安くなった」は53.7%と、合計で70.7%が「安くなった」と回答した。「暖房の使用頻度が減り、光熱費が安くなった」との回答を築年数別に細かくみてみると、「45年以上」が44.7%と最も高く、45年未満では34~39と4割以下。やはり築年数が古い住宅ほど効果が表れているが、特に45年が境となっているようだ。

こうした結果、断熱改修工事の満足度は「満足」が60.7%と6割に達し、「やや満足」を足して92.5%と高い満足度となっている。

一方、「不満」と「やや不満」は合計で3.8%と少ないが、断熱改修工事について不満を感じる点として、「期待したほどの断熱が感じられない」、「室内ドアの施工が悪いため、断熱効果が悪い」、「効果があまり感じられない」とその効果を「感じられない」ことが大きいようだ。そのほか「二重構造の窓が重く、開閉が面倒になった」や「窓が小さくなった」という開口部に対する不満、また、「金額に対してあまり変わらない」とコストパフォーマンスの点での不満もあげられている。

戸建住宅は寒さ対策
集合住宅はカビや結露

これらの結果を戸建住宅と集合住宅別でみてみると、「断熱改修工事を実施した目的」は、戸建住宅は集合住宅と比べて「トイレやお風呂など水回りの寒さ対策のため」と回答した割合が高く、集合住宅では戸建住宅に比べて「カビや結露の発生など、宅内環境を改善するため」の割合が高くなっている。

断熱改修工事による光熱費の変化について両者に大きな違いはなく、「安くなった」+「やや安くなった」との回答はともに7割程度となっている。

この調査では、特にコロナ禍において在宅時間が増えたなかで「断熱改修工事をして良かったと思うこと」を、戸建住宅と集合住宅で別で聞いている。

戸建住宅は、「真冬の風呂が苦にならなくなった」、「薄着で過ごせる、活動的生活になった」、「外気の影響を受けにくく、室内の温度変化が緩やかになりストレスが少なくなった」と暖かく過ごせることへの評価が高い。また、「作業可能な室温になり、複数人のテレワークが室を分けてできるようになって良かった」と在宅ワークのメリットも指摘された。

一方、集合住宅については、「寒すぎないので部屋でエアコンなしでもわりと問題なく過ごせる」、「深夜に室温が下がらないため、トイレ使用時に冷えずにすんだ」、「厚着をしなくてすんだ」と、やはり暖かく過ごせることに対して強くメリットを感じているようだ。

また、戸建住宅、集合住宅ともに「結露が改善された」という点も指摘されている。