2022.2.14

暮らし創造研究会 “足元の暖かさが健康リスク減”を確認

住宅事業者、住宅設備メーカー、エネルギー関連の団体などで構成する「暮らし創造研究会」は、慶應義塾大学・伊香賀俊治研究室と共同で、住宅において足元の暖かさが健康に与える効果を検証する研究を行った。
血圧の抑制や活動量の増加、アトピー性皮膚炎などの子どもの疾病リスクを減少させる効果が確認でき、足元を暖かい環境にしておくことの健康面でのメリットが明らかになった。


頭寒足熱にエビデンス
床暖房とエアコン暖房を比較

今回明らかになった足元の暖かさによる健康の効果をリーフレットにまとめている

「頭寒足熱」という言葉にもあるように、足元の暖かさが健康に良い影響を与えることは、古くから指摘されてきたが、昨今になりようやく客観的なデータに基づいたエビデンスの積み上げが進んできている。

そのような中、暮らし創造研究会と慶應義塾大学・伊香賀俊治研究室は、足元の暖かさが健康に与える効果を明らかにするため、2017年度~2020年度に戸建住宅の居住者に対する調査、その結果の分析を実施。温水床暖房利用者とエアコン利用者に対し、血圧や活動量などの健康に関わる項目でデータの測定とアンケートを行ってきた。そして今回、そのデータを分析したところ、温水床暖房などで足元を暖かくしておくことで、様々な健康メリットがあることが分かった。

床付近温度が21℃以上で高血圧リスクが半減

今回、明らかになったことの一つが、足元の温度が暖かいと高血圧になりにくいことだ。

被験者のうち高血圧で通院している人の割合は、居間の床付近の室温が14℃未満の人に比べて、17℃以上21℃未満の人は40%、21℃以上の人は50%低かった。

高血圧は“万病のもと”と言われており、脳や心臓、血管などに負担をかけ、脳卒中や心疾患などの原因になる。それだけに、足元を暖かくしておくことで高血圧リスクを低減できるという今回のデータは重要な意味を持ちそうだ。

床暖房使用の方が着座時間が1日で32分短い

床暖房利用者はエアコン利用者より、座り続ける時間が1日あたり約32分短いことも分かった。家の中で座っている時間が長いと活動量が落ち、足腰の衰えにつながり、特に高齢者は転んで怪我をしたり、寝たきりになったりするリスクが高まる。冬は寒さでより活動量が落ちる傾向にあり注意が必要だ。多くの時間を過ごす居間で足元を暖かくしておくことで着座時間を減らし活動量を増やすことは、高齢者の健康維持・増進に効果がありそうだ。

また、高齢者だけでなく若年層も着座時間が長いと健康リスクが高まる。2020年のWHOガイドラインには、成人の座りすぎは、総死亡率や心血管系疾患、がんによる死亡率の上昇、心血管系疾患やがん、2型糖尿病の発症の増加といった悪影響を及ぼすことが指摘されており、座っている時間を減らすことが全世代共通の推奨事項とされている。最近はコロナ禍でどの世代でも家で過ごす時間が長くなっているだけに、足元を暖かくして活動量を高めることの重要性は増している。

アトピーのリスクが6割減
中耳炎リスクも半減

足元の暖かさが、子どもの様々な疾病リスクの低減に寄与するというデータも得られた。例えば、アトピー性皮膚炎である割合は、床暖房使用住宅の子どもの方が、エアコン使用より60%低い結果となった。因果関係については、床暖房はホコリが舞いにくく、アレルゲンが抑制されたことが一因と推察している。厚生労働省の調査によると、アトピー性皮膚炎の患者数は近年増加傾向で2017年時点において約51万人だが、床暖房などの放射式暖房の使用で、大きく減らせる可能性がある。

足元が暖かいと、子どもに多い中耳炎になるリスクも低減できそうだ。中耳炎である割合は、床暖房使用住宅の子どもの方が、エアコン使用に比べて50%低いことが調査で分かった。因果関係については、急性中耳炎の原因となるウイルスや細菌が好む乾燥した環境に、床暖房の方がなりにくいためと推察している。

関連団体などを通じ研究成果の普及に注力

今後、暮らし創造研究会は、今回明らかになった足元を暖かくしておくことによる健康効果を世の中に広く普及させていきたい考えだ。その一環として、共同研究の内容をまとめたリーフレットを作成。現在、関係する業界団体を通じて、事業者へ訴求を行っている。今後はウェブなどの様々なメディアを通じた普及活動にも取り組んでいきたい考えだ。

暮らし創造研究会