屋根材の差別化戦略

長寿命化、省施工、環境貢献など多様な提案が加速

コロナ禍で大きな打撃を受けた屋根材市場。2021年は市場が落ち着きをみせ需要が回復する一方、資材価格の高騰やモノ不足などの問題が生じた。混乱が続く激動の時代において、性能強化や職人の減少、長寿命化、脱炭素などさまざまなテーマへの提案を進める屋根材メーカー。シェア争いも激化しつつある。


コロナ禍から回復に
影を落とした資材価格高騰、需給切迫も

2021年の住宅市場は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて混乱した2020年から回復した年となった。減少が続いていた新設住宅着工戸数は3月にプラスに転じ、11月まで9カ月連続で前年同月比増を続けている。4~11月の累計では前年同期比7.5%増であり、利用関係別では特に持家が同12.7%増と大幅な増加となっている。

屋根材各社も、こうした住宅マーケットの変化を反映し、足元の出荷は好調だ。

金属系では、アイジー工業やニチハなど住宅市場が回復基調にあるなか、2021年の出荷は順調で2020年を上回った。また、スレート系ではケイミューは2019年度レベルとまではいかないものの、特に戸建住宅市場の回復もあり、回復基調を続ける。アスファルトシングルでは、旭ファイバーグラスは、2021年の出荷を前年度比減と見込んでいたが、2020年比でほぼ横ばい。リフォーム需要の増加に手ごたえを感じている。また、日新工業は2021年1~2月の「過去に経験したことがないほどの悪さ」から脱却、2021年の出荷は前年比でプラスに転じた。

しかし、こうした回復基調に影が差す。原油価格、資材価格の高騰が続き、値上げが相次いだ。さらにフッ素の不足も深刻で、アイジー工業やニチハは高耐候性を特徴とするフッ素塗装品の販売を停止した。また、輸入品については配送の遅延も発生している。

こうした状況は長期的に続くと見られ、屋根材市場に大きな影響を与えそうだ。例えば、価格高騰は一時的な先食い仮需を発生させたとみられる。足元の状況は1~3月分の需要が上乗せされているとみる声もある。

こうした厳しい市場環境のなか、新たな製品開発をめぐる競争が激化している。

市場が求める長寿命、高耐久性
独自のアプローチで新たな市場開拓を

先ずは性能向上にしのぎを削る動きだ。スクラップ&ビルドからの脱却が図られ、ストック活用型の社会への転換が進められるなか、長く持つ住宅づくりが求められている。特に、長寿命化、高耐久への要求は強く、「住宅事業者も長期メンテナンスフリーや性能品質を長く維持できる屋根材を求めている」(セキノ興産)。

しかし、求められているのは屋根材そのものの耐久性だけではない。屋根は住宅の耐久性を左右するといってもいい。それだけに屋根や棟の通気や、下葺材まで含めたトータルの提案などが重要度を加えており、屋根材各社は屋根を起点とした住宅の長寿命化への取り組みを活発化している。

メンテナンス普及で長寿命化へ
施工課題を改善し、施工品質を向上

アイジー工業は、長寿命化への提案を強めている。「住宅に長期間の耐久性が求められるなか、屋根材も同程度の耐久性が必要。熱や雨水による形状変化がしづらい点が強みの金属屋根材は、定期的なメンテナンスを心がければ長寿命化が期待できる」(営業部・小形満部長)と、カタログに最適なメンテナンスサイクルやその方法を記載し、長期間もつことを訴求する。

具体的には、営業部に技術企画チームを設置し、納まりなどの技術面から長寿命化の訴求を行う。また、長寿命化には施工品質も影響することから、技術企画チームを主導に、施工業者を対象とした研修会も開催が。営業面の課題を探求すると同時に、職人からの施工面に関する提案や新人の職人フォローを狙ってのことだ。

耐久性を強化し、長期保証を実現
広範囲に及ぶ営業力を武器に展開

金属屋根メーカーのセキノ興産も、近年進む住宅の長寿命化を受け、性能面を重視した提案に力が入る。同社が販売する金属定尺横葺屋根「ダンネツトップS&Sルーフ」は、次世代ガルバリウム鋼板と呼ばれる「エスジーエル鋼板」を採用、ガルバリウム鋼板にマグネシウムを加えた高い耐食性能が特徴だ。また、25年の穴あき保証に加え、汎用品では珍しい15年の塗膜保証も付加。加工時や鉄板を曲げる際の割れを防ぐ塗料を使用し、塗膜の膨れや剥がれまで幅広い保証を提供する。重量は、日本瓦の約1/6である4.8㎏/㎡と軽量化を実現し、住宅の耐震性を高めている。また、「ダンネツトップS&Sルーフワイド」は、通常品より100㎜広い働き巾とし、より厚い鋼板を使用できることが特徴だ。面積を大きくしたことで、施工スピードが高まり、保育園など中小規模の建物や店舗などに採用が広がっている。

東日本を中心に展開している営業店は60拠点。このネットワークを生かし約250名の営業マンが自社オリジナル製品の販売に力を入れている。各営業店に成型設備をもつことが大きな武器で、在庫確保や納期短縮、コスト減を実現している。自社成型場から直接現場に資材を送るため、輸送コストによる地域ごとの価格差が生じない点も強みだ。最近では、施主からの指定も増え、工務店や設計事務所からの問い合わせが増えているという。

端部は二重折り&立体曲げ加工により強度と防水性を確保。葺き方向と重ね代を自由に決定できるセキノ興産の「ダンネツトップS&Sルーフ」

高耐久の新商品を発売
下葺材とのセット販売で訴求

日新工業は、輸入のアスファルト屋根材が多いなか、国内生産を行っていることが特徴で、主にRC造などを取り扱う設計事務所を中心に提案を進めている。アスファルトシングル屋根材「マルエスシングル」は、高い意匠性を持ち、ドーム型やカマボコ型など、さまざまな形状の屋根に施工できる。製品両面にはアスファルトをコーティングし、屋根材として最も優れる一次防水機能を有する。

2022年1月から耐久性や耐風圧性を強化したマルエスシングル「エクシード」を新たに発売した。4・0㎜と厚みを70%アップしたことで、重圧感ある意匠性のほか、約2倍の引裂強度をもち、耐用年数25年と長寿命も実現した。

屋根下葺材も扱う同社は、下葺材と屋根材のセット販売を強化していく考えだ。粘着層付改質アスファルトルーフィング「カスタムベース」は、改質アスファルトと合成繊維不織布が使われ、低温時でも折り切れなどがなく、施工性に優れる。また、引裂強さや破断時の伸び率を有し、「エクシード」と併せて使用することで屋根全体の耐久性をさらに高められる。「屋根は単体で構成されるものではなく、屋根下葺材、屋根材で1つのセット。耐久性の高い屋根材を使用しても、下葺材が劣化すれば屋根材も取り替えなくてはならないため、下葺材は屋根材と同程度の耐久性が求められる」と、下葺材の重要性について言及。今後は超高耐久の屋根下葺材の発売も予定している。「新築市場がシュリンクするなか、高品質な商品による差別化が重要。そして、その1つ1つのポイントが長寿命化だ」(執行役員・佐藤隆英副部長)と、高耐久への姿勢を強く打ち出していく考えだ。

日新工業が2022年1月から発売した新商品の「エクシード」。厚みを増し、耐久性や耐風圧性を強化した

通気・換気のノウハウを生かし
屋根の劣化リスクを軽減

ハウゼコは2022年から「デネブエアルーフ」の全国販売を開始する。通気・換気のオーソリティが、そのノウハウを生かして開発した「デネブエアルーフ」には、本格販売前から問い合わせが相次ぐなど、住宅事業者から高い注目を集めている。

「デネブエアルーフ」は、通気・換気部材を製造・販売する同社が「屋根の50年耐久性」を目指して開発した立平葺き金属屋根材。独自形状に加工した通気リブと、野地合板の上に施工する透湿ルーフィングの組み合わせで、野地板上面の湿気を逃がし、野地板上面の木材含水率を20%以下に維持する。木材は含水率20%以上で腐朽リスクが高まるが、野地板上面の水分を排出することで木材の耐久性を確保し、長寿命な屋根を実現することができる。

特別な施工方法を必要とせず、従来の立平葺きと変わらないシンプルな施工で葺くことができるため、野地板上に通気構造を持つ屋根としては導入コストが比較的抑えられることも大きな魅力だ。また、軒先納まり、桁行納まり、切妻納まり、片流れ納まり、けらば納まり、流れ方向納まりと、部位別に納まりを標準化したことも大きなポイントだ。

さらに軒先換気部材「通気立平用デネブ」、通気立平用換気棟「スピカBT」を併用することで軒先から野地板上面、そして棟へと連続した通気・換気をすることができるのも特徴だ。

1年半ほど前に近畿圏内に限定して試験的に導入、社員立ち合いの施工などで細かな不具合や施工方法の確認や見直しなどを続けてきた。例えば、端部を巻き込む手間を削減するため、専用の「立上げ・立下げ治具」を開発した。近畿圏での施工実績を踏まえ、2022年から満を持して全国販売を開始する。

同社は通気・換気部材など6800アイテムを持つが、内製化率は99%と外注に頼っておらず、高い技術力に加えて納期やコスト面でもインセンティブを持つ。住宅に長期耐久性が強く求められるなか、長寿命な屋根を実現する「デネブエアルーフ」は、金属屋根のなかで存在感を高めていきそうだ。

ハウゼコが販売する「デネブエアルーフ」の通気構造断面図。通気リブと透湿ルーフィングの組み合わせで野地板上面の湿気を逃がす

自社構法で長寿命化に貢献
設定商品を増やし、提案力拡充

ケイミューは、住まいの耐久性を高める「通気下地屋根構法」を開発、通気層を設けたことで屋根材裏面に入った雨水や湿気を速やかに排出し、外皮内部で空気を自然循環させて木材の劣化を抑制する。また、屋根材留付けビスは横桟に留付け、葺き替え・さし替え時の下葺材のはがれによる防水性の低下を防ぎ、屋根下地腐朽による下地からの飛散や釘抜けによる屋根材の飛散リスクも低減する。当初は、カラーベストとグランネクストのみの設定であったが、2021年度からセメント瓦「ROOGA(ルーガ)」も設定し、提案力を拡充。住宅の長寿命化への関心が高いハウスメーカーや工務店への提案を強化し、屋根材市場への浸透を目指す。

コロナで消費者の意識に変化
膨大なリフォーム市場へ向け一斉に動き出す

新築住宅市場の縮小が進むなか、膨大な住宅ストックマーケットへ向けた、屋根材の改修提案に各社が一斉に動きだしている。

コロナウイルスの感染拡大やアイアンショックを起点に、消費者の意識にも変化が見えてきた。「コロナウイルスの感染拡大で一度は市場が冷え込んだものの、在宅時間の増加でユーザーの家財を守る意識が高まっている」(アイジー工業・小形営業部部長)。さらに「カーボンニュートラルが目指されるなか、スクラップ&ビルドからの脱却が進められていることも屋根リフォーム市場活性化を後押し」(旭ファイバーグラス)したとみられる。

マーケット的には、築30年前後の屋根リフォーム適齢期を迎えた住宅ストックが膨大な数にのぼることが大きい。スレート系の屋根材が使われているケースが非常に多く、「2300万~2400万㎡程度の市場」とみる声もある。リフォーム市場をめぐる付加価値提案が活発化する理由でもある。

高断熱性による改修提案が好調
長期保証を実現し、新色追加も

木造住宅向け金属屋根「アイジールーフ スーパーガルテクト」を販売するアイジー工業のリフォーム受注が好調だ。昨年の4月以降12月まで前年同月比15%前後の増加で推移している。

アイジー工業の「アイジールーフ スーパーガルテクト」を採用した戸建物件。遮熱性鋼板と断熱材が一体形成。軽さにも定評がある

同社が狙うのは、古いスレート系屋根材。以前は、スレートから金属への転換には二の足を踏むユーザーが多く、ハードルは高かったという。しかし、新築住宅において金属屋根の採用が増加し、その認知が広がるなかでリフォーム分野でも違和感なく採用が進んでいるという。

同社がアピールするのは、軽さ、デザインといった金属ならではメリットだ。あわせて断熱効果や高耐久という付加価値も大きなポイントとなる。「アイジールーフ スーパーガルテクト」は、遮熱性鋼板と断熱材の一体形成を強みとし、高い断熱性能を発揮、屋根全体の重量ではスレート屋根の約1/4、和瓦屋根の約1/10である約600㎏(120㎡の屋根と想定した場合)と、その軽さにも高い定評がある。ガルバリウム鋼板にマグネシウムを2%添加した「超高耐久ガルバ」により耐風圧性を65m/sまで強化、穴あき保証25年、赤さび保証20年、塗膜保証15年と長期保証を実現した。さらに、今年度からは新色の「Sシェイドワインレッド」を追加し、顧客からは非常に高い評判を得ているという。

断熱性を武器に築古住宅に注力
施工品質を向上し、信頼獲得へ

ニチハが販売する金属製屋根材センタールーフ「超高耐久 横暖ルーフ」シリーズは、優れた耐久性のほか、高い遮熱性や充実の保証を強みとしている。コロナ禍での市場の冷え込みにより一時は出荷の落ち込みを見せたものの、2021年度は市場が落ち着くなか、住まいへの関心の高まりや、リフォーム市場の回復により、比較的堅調に推移した。

センタールーフは基本的にリフォーム向け商品であり、築20~30年を迎える戸建住宅を中心としたリフォームに対し、カバー工法の提案を生かした。防水性能に優れた独自の横つなぎ形状や専用部材を使った施工性の良さと、高い遮熱・断熱効果に加えて、既存の屋根をはがさず、被せるだけのニチハ「あんしん」屋根カバー工法による重ね葺きの提案が大きな魅力となっている。

ニチハの「超高耐久 横暖ルーフS」は、高い遮熱・断熱効果を発揮する

スタンダードモデルの「超高耐久 横暖ルーフS」は、遮熱鋼板と硬質ウレタンフォームの一体形成、さらに遮熱機能付きのGLめっき鋼板で耐食性を高め、アルミラミネート加工紙を一体成型した三層構造により、優れた断熱性能と遮熱性能を実現した。同社が行った断熱性能の試験では、一般的な鋼板と比較し日中で最大約25℃の温度差を確認、遮熱性能比較では鋼板裏面温度差が約12.6℃と、高い効果を発揮する。また、上位モデルの「超高耐久 横暖ルーフαS」は最大17㎜と厚みを増し、ダイナミックな意匠でデザイン性を高めた。ジョイント部の気密性もアップさせている。

いずれの製品も塗膜のヒビ・割れ・剥がれの15年保証のほか、20年の赤錆保証と25年の穴あき保証が付加され、全地域で採用できることが特徴だ。

”遮熱+断熱”が大きな特徴で問い合わせが増えているというが、「まだまだ認知度が低い。リフォーム需要に対しても断熱材のメリットをしっかりと打ち出していく」(金属外装営業部 森優司部長)と、市場開拓に拍車をかける。

リフォーム市場での事業拡大を図る上で、顧客の安心感を重要視し、施工業者や職人の育成に力を入れている。全国に29ある営業所ごとに認定研修会を開催し、エリアによる施工品質のバラつきを防ぐ。現在では登録社数が約500社、認定者が約3000人と、コロナ禍においても着実に職人の育成は進んでいる。

認定を受けた職人と各地域に点在する営業マンの連携による、高品質かつ安心な施工体制の整備で、ニーズの拡大及び顧客の信頼獲得を目指す。

自社開発装置で改修効率化
カバー工法を改良、住宅に原点回帰

元旦ビューティ工業は、住宅のリフォーム向け商材を見直し、2022年はデザインや機能など金属屋根の魅力を前面に打ち出して屋根リフォーム事業の強化を図る方針。

同社は平滑葺き住宅金属屋根「マッタラールーフ7型Ⅱ」や「断熱ビューティルーフ2型」、高い換気性能と水密性を両立した「住宅換気棟」、雪や台風に強く落ち葉が入らない「元旦内樋」などを販売。また、22年前に屋根一体型の太陽光発電や、他社に先駆けて30年前からリフォーム向けの平板スレート屋根のカバー工法を開発(平成7年特許登録1933306号)するなど、大型物件をはじめ多くの実績を持つ。

今、屋根材にはさまざまな機能が求められている。住宅の耐久性向上が強く求められるなか、屋根材そのものの耐久性だけでなく躯体の耐久性を保持する機能が重要になっている。「断熱ビューティルーフ」は、高い耐久性を持つ素材で経年劣化が少なく美しさが長持ちする。さらにハゼ内部まで断熱材が入る高断熱仕様であることも大きなポイントだ。

自然災害への対応も重要だ。「断熱ビューティルーフ2型」は、二重のハゼによる高強度が特徴で積雪に強く、柵ジョイント+3次防水で台風・雨漏りに強いという特徴を持つ。「元旦内樋」は積雪150cmまでの耐久性を持ち、豪雨でもしっかりと雨水を取り込み、台風などの強風にも強い。

元旦ビューティ工業の断熱ビューティルーフ2型と元旦内樋。屋根の一体感と軒先のシャープさが大きな特徴だ

こうしたなかで、これら商品についてリニューアルを図り、カバー工法を用いてセット提案に取り組んでいく。金属屋根の意匠性、施工性、機能性の強みを生かしたトータル提案だ。

さらに足場を組まずに屋根の葺き替え、雨樋の交換ができる「屋根作業安全装置」も展開する。都心部など狭小地が多いエリアでは足場をかけることが難しいケースも珍しくない。同装置は、足場を組まないことから施工期間が短くなり、コスト低減につながることが大きなメリットだ。リフォームにおける屋根、雨樋とのセット提案においてあわせて活用を促し、差別化を図っていく。

同社は住宅用屋根材からスタートしたが、現在は一般建築を多く手がけ、出荷数でみると住宅向けは全体の10%程度にとどまる。「オリンピック需要も終わり、今後、一般建築の市場は厳しくなり競争も激化するだろう。市場変化のなかで原点回帰という意味も含めて住宅向け事業をあらためて強化する」と意気込む。ここでは新築はもちろん、特にリフォームを大きな柱に据える考えだ。30年以上の歴史を持つカバー工法をさらにブラッシュアップするとともに、元旦内樋により屋根と樋を一体化するシャープな意匠を提案、「屋根をリフォームすることで軒先イメージがガラリと変わる」ことを強く訴求する。

被せ葺きでリフォーム提案
一般建築物の拡大も狙う

旭ファイバーグラスの「リッジウェイ」は、アメリカの住宅を思わせる美しいデザインが特徴のアスファルトシングル屋根材。軽さ、吸音性といった特徴のほか、海外で多くの住宅に使われ、耐久性でも長年の実績がある。

2021年度はコンテナや船便の不足によりアメリカで製造された製品の輸送において厳しい状況が続いたものの、売上・出荷数は前年比横ばいと、コロナ禍においても堅調に数字を維持した。それを支えているのがリフォームでの採用だ。工期短縮やコストを抑える上で、カバー工法が評価され出荷が伸びているとみられる。化粧スレート屋根材の上から葺き増し可能なカバールーフ工法を開発、意匠性や加工性の高さ、リーズナブルな価格を生かした提案を進めている。

最近は、ゴルフ場のクラブハウスや公共建築物の屋根などで工務店や設計事務所からの問い合わせが増えており、今後は住宅以外の中大規模の一般建築分野でのリフォーム需要も取り込んでいく考えだ。

旭ファイバーグラスの「リッジウェイ」は、ゴルフ場のクラブハウスのリフォームにも採用

屋根材から脱炭素に貢献へ
太陽光発電の普及に期待も

政府は2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにするカーボンニュートラルを宣言、それを受け住宅業界も一斉に動き出している。

脱炭素には住宅の省エネ化が重要となるが、この動きのなかであらためて脚光を集めているのが太陽光発電システムだ。国は”2030年までに新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備を導入”という目標を掲げ、将来的な義務化も選択肢の一つとして示す。すでに東京都が新築戸建住宅の屋根に太陽光発電設備の設置を義務付ける条例の制定を検討するなど、自治体の取り組みも加速しそうだ。

太陽光発電システムを住宅に設置する際に重要となるのがその設置の仕方。屋根材に後から穴を開けるような施工は雨漏りにつながりかねず、住宅の耐久性を大きく損なう危険がある。こうしたことから屋根材メーカーは以前から太陽光発電設備の設置を想定した屋根材や工法を提案してきているが、「ここにきて引き合いが増加、2025年に向けて大きく動いていくとみている」(セキノ興産・特販営業部 白石淳営業課長)と、期待を寄せる。

もちろん脱炭素への取り組みは太陽光発電だけではない。遮熱・断熱により住宅の省エネ性向上に貢献する商品開発から、配送における脱炭素の取り組みまで、さまざまな動きが広がっている。

自社開発工法でセット販売
専門技術者による責任施工

他社に先駆け2000年から屋根に穴を開けずに太陽光パネルを設置する「キャッチ工法」を提案してきたセキノ興産は、ソーラーシステム専門部署との連携による金属屋根と太陽光パネルのセット販売を行っている。

太陽光発電システムの販売は風や雪に対する耐性試験が行われた金具を独自に採用し、技術講習を受けIDを取得した専門技術者による責任施工がモットー。近年、屋根材業界では穴を開けない太陽光パネルの設置が主流となり、価格競争の状態にある中、技術講習を受けた専門技術者による責任施工は大きな強味。加えて、これまで培ってきた長年の施工実績を武器に金属屋根と太陽光パネルのセット販売を継続し、特定工法による雨漏り10年保証も併せて提案していく考えだ。

太陽光に配慮した仕様設計
屋根材から脱炭素に貢献へ

ケイミューが販売するセメント瓦「ROOGA(ルーガ)」は、一般的な平板瓦の約1/2という軽量設計のほか、自然災害にも耐える強度を兼ね揃え、リフォームでの採用が高まっている。太陽光パネルの設置にも対応し、積雪や耐風に対して耐荷重・耐風圧性を考慮した固定方法を採用、排水性を配慮した凸状の台座によりビス穴からの浸水を防ぐ。「世界的に脱炭素が進む中、太陽光パネルの需要はさらに増えていく。今後はリフォームにおける太陽光パネルの設置促進に屋根材の観点から取り組み、脱炭素への貢献を目指す」(同社)。

配送拠点の拡大で効率化
コストを抑え、脱炭素にも貢献

アイジー工業は山形県に製造拠点を持つが、今後は需要地への展開を検討し、配送面からも脱炭素へ貢献していく考えだ。大型ヤードを、埼玉、岐阜、京都、大阪、福岡の5カ所に加え、新たに神奈川の相模原に開設、神奈川から西東京までを対応する。埼玉から神奈川への配送は、圏央道を使うため、配送時間やコストにも影響していたが、より細かい配送拠点を設けることで、配送効率を高めつつ、脱炭素への貢献を目指す方針だ。

屋根材が住宅デザインを左右
意匠、カラー、壁や樋とのセット提案も

屋根材は住宅の外観デザイン、施主の好みなどによって選ばれるが、その材質やデザイン、カラーが住宅の外観イメージを大きく左右する。同じシャープなイメージの金属系屋根材でも縦葺きと横葺きで意匠性は大きく異なる。また、同じスレート系屋根材でもさまざまなカラーバリエーションがあり、外観意匠は違う趣となる。

屋根形状も屋根材を左右する。例えば、近年、キューブ系や片流れ屋根のデザインがトレンドとなっているが、こうした住宅には緩勾配に対応する金属屋根が多く使われる。

競争激化のなか、意匠性にこだわる商品を武器に新たな市場開拓を進める動きも進んでいる。

高い意匠性で採用率拡大へ
屋根+壁で新たな市場を開拓

化粧スレート屋根材の代名詞とも言える「COLOR BEST(カラーベスト)」で、住宅屋根材のなかで大きな存在感をもつケイミュー。軽量かつ施工性に優れ、耐風性や防水性といった災害面での強さも発揮する。その汎用性の高さから多くの新築戸建住宅で採用され、高い認知度を誇る。色・柄はシンプルなものから高級感あふれるものまで豊富に揃え、近年戸建住宅のデザイン多様化が進むなか強い存在感を発揮、その美しい色合いをはじめとする意匠性の高さを武器に販売拡大を図っていく方針だ。

特に、化粧スレート屋根材「GLAND NEXT(グランネクスト)」で、新しい市場開拓を進める。その軽さや強さはもちろん、高い意匠性を特徴とし、うろこ、ヒシ、サンド、シンプルの4つのデザイン・形状で構成される。設計事務所を中心に採用が急速に広がっており、特に高級感のあるデザインのシンプルは好評とのことで、2021年のケイミューデザインアワードでは採用物件が戸建ての優秀賞を受賞した。住宅だけでなく店舗や保育園などでも、採用率が増しているという。

また、屋根材を外壁材としてよろい葺きする「CBウォール工法」を「LAP‐WALL(ラップウォール)」として、2022年3月にリブランディングする。高いデザイン性や遮熱性能によるラインアップの省エネ性能などが評価され、昨年度グッドデザイン賞を受賞した。屋根と外壁を同一の素材で構成でき、さまざまな色・柄・形状からシーリングレスの外観デザインを演出できる外装建材として、新たな市場開拓に力を入れる。

ケイミューの「GLAND NEXT」を採用した戸建物件。2021年のケイミューデザインアワードで優秀賞を受賞

屋根で住宅意匠を変える
緩勾配でデザインの幅を広げる

元旦ビューティ工業は、金属屋根の特性をフルに生かして屋根が住宅の意匠を変えられることを強く訴求する考えだ。

金属屋根は、防水性や耐久性が高く強度があり、加工が容易であることが大きな特徴で、カタチや大きさを変えることも可能だ。日本では3寸~3寸5分の屋根勾配の住宅が多く建てられてきたが、同社の商品では100分の3勾配で葺くことができる。緩勾配とすることで、例えば2階天井を高くしたり、2階に大きな掃き出し窓を付けたりと、住宅のデザインの幅を広げることが可能になる。あわせて軒先までシャープな雨樋「元旦内樋」を設置することで屋根と一体化したシャープな軒先の屋根デザインが可能となる。

「耐久性や防災性という機能とあわせ、デザイン面で屋根を変えていきたい」と提案に力を入れる考えだ。

深刻化する職人の減少・高齢化へ
現場作業を少しでも減らしたい

国土交通省の「労働力調査」によると、建設業における就業者は平成9年の685万人をピークに減少傾向が強まり、2021年11月時点では471万人と、24年間で約214万人の減少、建設現場の人手不足が急激に進んでいる。

職人不足は屋根材業界も例外ではない。「経験やノウハウに基づいて現場できちんとした納まりを考えられる職人が減っている」(ハウゼコ・神戸睦史社長)のである。

こうした人手不足を技術面から解消しようと、屋根材メーカー各社は現場での施工性を意識した商品の提案や取り組みを強めている。梱包の重さを少しでも軽くするといった細かな配慮なども進める。また、現場品質の向上を狙いに、従前から取り組む研修会やスクールなど、職人の養成・スキルアップにさらに力を入れている。

下葺材を軽量化、耐久性を向上
高い加工性で職人にも高評価

日新工業は、職人の高齢化や若年層の減少を受け、現場での施工性を意識した商品ラインアップを揃える。改質アスファルトルーフィング「カッパルーフ2号」は、従来品の厚み1.0㎜程度から製品構成を変えたことで、0.7㎜と薄い仕様を実現し、軽量化を図った。そのうえで、アスファルトコーティングの使用率を高め、耐久性や防水性をさらに向上させた。また、一般的なルーフィングと比較し加工性が高く、職人からは非常に切りやすいという声があがるなど、その評判は高いという。

アスファルト屋根材特有のべたつきに配慮した、機能性改質アスファルトルーフィング「アルバクリア」の提案も行っており、夏場などの高温時にも足元のベタつきを防ぎ、製品表層の合成繊維不織布がアスファルトの染み出しを抑制する。

軽量化で現場での施工性向上
副資材の改良や講習会の開催も

旭ファイバーグラスのアスファルトシングル屋根材「リッジウェイ」は、瓦の約1/4、化粧スレートの約1/2と軽量で、太陽光パネルを設置した場合でも、その重量は化粧スレート屋根単体と同程度となる。耐風性の実証実験では標準仕様は風速38m/s、強風仕様は風速46m/sでも屋根材の浮き剥がれが起きないことを実証した。

また、現場でカットできることや、リッジウェイ専用の釘打ち機と専用接着剤による比較的に簡単な取り付けで、施工性にも優れる。小屋裏面の換気を行うことで熱気や湿気を逃がすことができ、換気部材にも対応する。

同社では、さらに配送面や現場での施工面の向上を図り、1枚当たりの軽量化を実現したうえで、1ケース14枚入りから16枚入りに増やした。副資材にもこだわり、接着剤はこれまでのカートリッジタイプに加え手絞りのチューブタイプを用意、現場における作業の手間を削減する。また、勉強会や実際のモデルを用いた施工講習会を継続的に開催し、現場での正確な施工の実現にも力を入れる。

施工現場の作業効率を向上
梱包入数を削減、サイズの配慮も

ニチハは、施工現場の作業効率化にも力を入れている。金属屋根材の梱包入数を8枚から6枚に仕様を変更し、1梱包当たり約7㎏の軽量化を実現。また、屋根材本体に6尺品(1820㎜)を追加し、軽トラックによる狭小地現場への配送や、屋根材本体の取り回しも容易で施工性の向上に配慮した。

屋根本体の長さは10尺品と6尺品、葺き上がりのデザインは山高タイプと平葺きタイプの2種類を販売していることから、施工性とデザイン性の両面から選ぶ事ができることも大きな特徴である。

新築・改修で新システムを開発
施工簡略化で職人不足を解消

元旦ビューティ工業は、経験の浅い職人でも施工できる新たなシステムの開発を進めている。

同社は「断熱ビューティルーフ2型」を展開しているが、断熱材一体型ではなく、下葺材の上に断熱材を施工してから断熱材に密着させるように屋根材を施工していく。断熱材はあいじゃくり加工で重なり部を密着させ、屋根材のハゼ部に断熱材を入れ込むように納めていく。この工法をさらに改善し、さらに簡単な納め方にする予定だ。新築のみならずカバー工法にも対応する。

「職人不足のなか、難しい納めは熟練工が必要だが、ベテランが一人いればあとは経験が浅い職人でも施工できるような商品が必要」と、技術力を生かして対応を進める。同社の施工組織である元旦会は発足当初の900社から750社程度にまで減少しているが、これは後継者不足などを要因とする廃業が主な理由だ。研修など職人育成を積極的に進める一方で、「人手不足を技術で解消する」ことを狙う。

屋根材メーカー各社は、競争が激化する市場のなかで他社との差別化を図るため、独自の手法開発や強みを生かした提案を進め、新たな市場開拓に取り組む動きをみせている。

コロナ禍や資材の高騰など混乱が続く時代に、いかにしてそのシェアを勝ち取るのか、屋根材市場の変革はますます加速していきそうだ。