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2021.12.16

YKK不動産、高層木造でパッシブタウン第5街区を建築

日本初、Power to Gasを集合住宅に実装

富山県黒部市で建設を進めるパッシブタウン第5街区の建築計画を公表。木造中高層集合住宅でCO2の固定化、また、水素エネルギー供給システムの実装により、クリーンエネルギーによる自立したまちづくりを目指す。


「パッシブタウンの集大成として、クリーンエネルギーによる自立したまちづくりを目指していきたい」と話す吉田会長

パッシブタウンとは、過度なエネルギー消費に依存せず、太陽光や風、水など黒部の自然エネルギーを最大限に生かす「パッシブデザイン」の考え方を取り入れ、持続可能な社会にふさわしいローエネルギーの「まちづくり・すまいづくり」を提案する取り組み。

これまでに完成した第1〜3期街区ではパッシブデザインを用いた集合住宅を建設。第4街区のプロジェクトは現在進行中で、地域木材を利用してYKKグループ事業所内保育施設「たんぽぽ保育園」の建築に挑戦している。2022年3月の開所を予定する。

第5街区は、2013年6月にマスタープランを発表したパッシブタウン全体構想における最終街区となる。約1600㎡の敷地に、北陸地域では初となる木造6〜7階建ての複合型集合住宅を4棟建設する計画だ。CLTなどを用いた木造の壁構造で住空間を構成。また、建物のコア部分をRC造とし、建物荷重を支えるために鉄骨の柱などを用いたハイブリッド構造とする予定だ。基本設計(構造・設備)・実施設計を竹中工務店、ランドスケープ設計を設計組織プレイスメディアが担当。総工費は約50億円。工期は2023年4月〜2025年3月。

北陸初の木造中高層集合住宅
木造建築のパイオニア、カウフマン氏を招へい

カウフマン氏は「今回の挑戦を通じて、近代建築工法による木造中高層建築が有意義であることを証明したい」と話した

第5街区では、脱炭素化、SDGs達成への貢献を念頭に置き、第4街区の保育園と同様、木造建築に挑戦する。そこで、近代木造建築の世界的パイオニアであるオーストリアの建築家、Hermann Kaufmann(ヘルマンカウフマン)氏を招へいした。基本計画・基本設計(建築)を担当する。カウフマン氏の作品の中心的なテーマは、建物の持続可能性に対する総合的な問題の答えを探究し、近代的な木造建築の可能性を探ること。欧州建築賞2015エネルギー+建築(IZMオフィスセンター)、ドイツ建築賞2017(シュムッタータル学校)、フォアアールベルク木材建設賞2017、など多くの受賞を誇る。

YKK不動産は、カウフマン氏の「シンプルな建築のデザイン、設備の収め方まで含めてディティールも美しいこと、断熱やパッシブデザイン、木造のプレハブ化などに詳しいこと」など総合力を評価。黒部の地で、カーボンニュートラルの実現を目指すうえで、カウフマン氏の協力が不可欠であると判断した。

また、木造建築とすることで、「第4期街区で確立した地元森林組合との共同による森林資源の循環活用で、県産木材の利用と新たな植林を推進し、カーボンニュートラルの実現を目指す」、「木造中高層集合住宅として50〜60年活用することによりCO2の長期固定化を図る」ことも設計コンセプトに盛り込んだ。

Power to Gasで再エネのシーズンシフトに挑戦

第5街区では、パッシブデザインをベースに、水素エネルギー供給システムPower to Gasを日本で初めて集合住宅に実装する。

北陸などの豪雪地域では、冬季に日射量が減り、また、豪雪により、太陽光発電パネルが覆われることにより、太陽光発電パネル本来の発電能力を発揮しにくくなる。蓄電池を用いても長期間電力を蓄えておくことはできない。

そこで、電力を貯める新しい方法として、ドイツ、オーストリア、スイスなどで、研究開発が進み、実用化の事例が出始めているPower to Gasに白羽の矢を立てた。Power to Gasの仕組みを用いて、春から秋にかけて太陽光発電で発生する余剰電力を特殊な金属に吸着させ、水素に変換して貯蔵し、冬の電力供給に利用する、再生可能エネルギーのシーズンシフトに取り組む。

太陽光による創エネと、Power to Gasによる季節を超えての蓄エネに加え、県産木材を利用した木造中高層集合住宅の計画により、カーボンニュートラルの実現に挑戦する。

パッシブタウンの挑戦通じ木製建材の開発にも着手

パッシブタウン第5期街区のイメージパース図。高さ約20m の中高層建物を4棟建設する予定。各棟の1階部分は、大きな屋根で互いにつながっている

YKK不動産の吉田忠裕会長は、「パッシブタウンの集大成として、クリーンエネルギーによる自立したまちづくりを目指していきたい。第五街区の構想を練る上で、様々な検討を重ねた。木造で挑戦することは大きな意味があることだと思っている。カウフマン氏と出会うことができ、大きな挑戦ができることはうれしい限り」と述べた。

また、「第4街区の木造の保育園、第5街区の中高層木造建設の挑戦を通じて、YKK APにおいて、窓などを含めて付加価値を高めた木製建材などの開発にも取り組んでいる」と明かした。

※吉田忠裕会長の吉の字は正しくは土に口です

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