2021.11.2

住友不動産、新築分譲マンションでZEH標準化

開口部強化でZEH‐M Orientedへ

住友不動産は新たに供給する分譲マンションでZEHを標準化する。高いマーケットシェアを持つ大手不動産デベロッパーがZEH標準化の方針を示したことで、今後、新築分譲マンションでのZEH化が一気に加速する可能性がある。


住友不動産のマンションのイメージ

住友不動産は今後供給する新築分譲マンションすべてのZEH標準化に踏み切った。これまでも、大手不動産デベロッパーを中心に一部の新築分譲マンションでZEHを供給する動きはあったが、標準化の方針を示したのは住友不動産が初めてだ。

同社はこれまで新築分譲マンションでのZEH供給実績はゼロだったが「国の住宅脱炭素化施策への対応に加え、資産価値向上の点で訴求力になる」(同社)と判断し標準化に踏み切ったという。

集合住宅については、「ZEH‐M」(3階建て以下)、「Nearly ZEH‐M」(3階建て以下)、「ZEH‐M Ready」(4・5階建て)、「ZEH‐M Oriented」(6階建て以上)の4つのレベルがあるが、住友不動産が標準化するのは「ZEH‐M Oriented」だ。集合住宅では、高層になるほど住戸あたりの太陽光発電の設置容量が小さくなり、ZEHの要件を満たすことが難しくなるが、「ZEH‐M Oriented」は太陽光発電の設置は不要となる。ただ、強化外皮基準(断熱性能)を満たし、一次エネルギー消費量を現行の省エネ基準値から20%削減することが求められることから、同社では主に熱損失の大きい開口部について、重点的に取り組むことでZEH化を図る考えだ。

具体的には、窓枠を従来のアルミサッシからアルミ樹脂複合サッシへ、ガラスはペアガラスから真空のLow‐Eガラスへのグレードアップを図るという。もともと、マンションは戸建住宅に比べて開口部が少なく断熱性能を高めやすいため、開口部の断熱化を強化すれば、太陽光発電の設置が求められていない「ZEH‐M Oriented」の達成は比較的難しくないという。

ZEH化への掛かりまし費用については、太陽光発電を搭載しないため「それほどコストアップにはならない」(同社)としている。

「2030年までに新築住宅でZEH水準の省エネ性能の確保を目指す」という国の方針に加え、今回の住友不動産の新築分譲マンションでのZEH標準化で、今後、大手不動産デベロッパーを中心に他の事業者も新築分譲マンションでのZEHの取り組みを加速させる可能性がある。住友不動産の新築分譲マンションの年間供給戸数は約50棟、約4000戸と多い。マーケットシェアも、2020年は3位であるものの2016年から2019年まではトップを誇る。それだけに、同社がZEH標準化の方針を示したことの業界へのインパクトは大きい。