進化するフローリング
デザイン面、機能面で高まる付加価値
コロナ禍で、おうち時間が増え、住空間や内装へこだわりを持つ住まい手が増えてきていることなどを背景に住宅用フローリングへのニーズが変わってきている。
デザイン面だけでなく、衛生的な住空間が求められるなかで、抗菌・抗ウイルスといった機能面に対する関心も高まっている。
メーカー各社は、デザイン面、機能面で付加価値を高め、差別化を進めるほか、リフォーム対応の新商品、新提案も活発化させている。
進化を続けるシートフロア
天然木と区別がつかない水準に
デザイン性、触感の向上に加えて、機能性、環境性能の向上により、化粧シートフロアの需要がこれまで以上に高まっている。特に意匠性については、印刷技術の発展とともに、現在では一見して天然木との区別がつかない水準にまで高まっている。日本複合・防音床材工業会のまとめによると、2020年度の複合フローリング販売量の約72%がシートフローリングとなった。
住宅用フローリングのトップシェアを持つのは大建工業だ。同社の内装材事業部 事業企画課の大塚良平氏は、「2020年上期は、新型コロナの影響で、フローリングの需要は落ちたが、下期から、”おうち時間”の増加、テレワーク普及などの影響により、住まい、住空間を見直そうというニーズが高まり、フローリングの販売も回復した。コロナ禍前の2019年の水準には及ばないが、2021年も需要は伸びている」と話す。
また、コロナ禍以前からのフローリング市場の傾向として、「本物志向の高まりにより、全体的にデザイン性の高いフローリングが好まれる傾向が強まっている」と説明する。
同社のフローリング商品の中でも、化粧シートフローリングの最上位、フラッグシップ商品に位置付けるのが「Trinity(トリニティ)」だ。特殊強化フィルムを四周木口面に巻き込む業界初の新技術(特許取得済)により、細部にまでこだわった美しい仕上がりを実現。これまでのシート化粧床材では実現できなかった厚単板化粧床材や無垢材のような立体感のある高い意匠性を付与した。厚単板化粧や無垢の床材では、安定的な確保が難しい化粧面”178mm”の広幅デザインを実現。圧倒的な存在感で、空間におけるグレード感や開放感を演出する。
素朴で清潔感のあるホワイト系の色合いの〈アッシュ柄〉、落ち着いた褐色と大胆な縞模様で空間をシックに演出する〈ウォールナット柄〉、落ち着きのあるグレイッシュな木目が特長の〈バーチ柄(グレー)〉など、10柄をラインアップする。
「樹種の柄によって手触りを変えるなど、限りなく天然木の質感に近づけるようにこだわっている。無垢材のような立体感のある美しい意匠と、化粧シートならではの日焼けや色褪せ等の経年劣化がしにくいといった優れた耐久性を併せ持ち、2015年の発売以来順調に販売量が増加している」(大塚氏)。
また、「様々な素材をインテリアに用いることで、空間のアクセントとするコーディネートも近年のトレンドの一つとして人気を集めている」(同社)ことから、2020年6月、個性的な空間を演出する、スクエア(正方形)デザインの化粧シート木質フロア「ハピアフロア スクエア」を発売した。木質系の複合床材でありながらも、タイルのような意匠性を実現。漆喰調のホワイト系、コンクリート調のグレー系、錆びの風合いを感じる鉄板調のブラック系の素材感あふれる3柄をラインアップ。同床物とカラー連動している建具シリーズ「hapia ソリッド調」と組み合わせた、統一感のある空間作りはもちろん、木目調の建具や壁などと組み合わせることで、異素材組み合わせのコーディネートも可能だ。
ノダは、木質フローリングの意匠性、機能性に加えて、フロア基材も含めて独自開発を行い、木質フローリングの高付加価値化を進める。2015年5月、静岡県富士市にあるフロア工場の隣接地に、自社合板工場を新設し生産を開始した。原木の調達から、国産材基材に用いる合板、フロアの製造まで、一貫生産できる体制を整備したのは同社のみ。原木調達から合板、フロアの製造まで一貫生産を行うことで、優れた品質を確保できるとともに安定供給を実現できることが強みになっている。また、静岡県産の原木を積極的に活用。地域の森林資源を有効活用し、地方創生にも寄与するため、SDGsの観点にも合致する。
複合フロア基材には、国産材合板とMDFを用いる。同社ではMDFも自社工場で生産しており、こうした特長を生かして、フロアの寸法安定性や歩行性に寄与する基材の開発を進めている。
同社の複合フロアの上級クラスに「ラスティックフェイスリッチ・Jベース」がある。表面にはシートではなく高意匠な天然銘木単板を採用。天然銘木のあたたかみと洗練された空間をデザイン出来るため、好調に販売を延ばしている。
本物志向のユーザーに根強い人気の天然木フロア
シートフロアの存在感が高まる一方で、挽き板仕様、ツキ板仕様の天然木フローリングについても、天然木特有の風合いや木目にこだわる本物志向のユーザーに根強い人気がある。
この天然木フローリング市場を牽引する朝日ウッドテックは、2022年度、創業110年、創立70周年を迎える。創立70周年の大テーマとして「天然木第一主義」を掲げた。
同社の海堀芳樹 代表取締役会長は「コロナ禍でおうち時間が増えたことで、安らげる住まい、住空間、内装へのニーズはこれまで以上に高まってきている。家の中でも天然素材に触れて一緒に暮らしていける、天然木の床と過ごす時間が人にとっての安らぎ、幸せに繋がるのではないか。そのために、我々は天然木にこだわった商品を通じて、住まい手の幸せな暮らしに貢献していきたい」と話す。
同社は、フラッグシップ製品である無垢材挽き板フローリング「LiveNaturalプレミアム」を発売した2012年頃から、床は肌に直接触れる場所であり、快適性に大きく影響する場所であることから、住まい手を意識して「床は大事」ということをアピールしてきた。こうした取り組みをさらに発展させ、近年はSNSをはじめとするデジタルマーケティングを活用した情報発信、そこからショールームへの誘導を図り、リアルに体感してもらう販売戦略を強化する。
ウッドワンは、無垢の木のフローリング「ピノアース」の販売を強化する。ニュージーランドで計画的に植林、育林したラジアータ・パインを使用。デザインにもこだわり、木取りは木目がほぼ平行に並ぶ「柾目」とすることで、反りと狂いを抑えるとともに、均一で真っすぐな美しい木目のラインを実現する。また、木目を立体的に浮き立たせる「浮造しあげ」を施すことで、自然の木ならではの、上質な素材感を引き出す。ぬくもりと柔らかさが心地よく伝わってくる質感が魅力だ。
そして、同社が強化しているのがフロア単体の提案ではなく、無垢の木で統一して空間をコーディネートできるという提案だ。同じ無垢の木でコーディネートできる内装ドアや階段、収納、キッチンなど、豊富なラインアップを持つ同社の強みを生かす。
「商品単体に興味を持たれるユーザーもいるが、やはり多くは、コーディネートの例などを見て、こんな空間にしたい、その中で使用されているフロアにしたい、と思う」(同社)。
そこで、商品を単体で紹介するカタログとは別に、同社の商品を組み合わせた空間コーディネートの例を紹介する「スタイルブック」という冊子をつくった。同社ホームページ上でも見られる環境を整備し、エンドユーザー、ビルダーなどへ提案している。「こうしたコーディネートにしたいといった問い合わせが増え、販売に結びついている」(同社)。
永大産業は、2021年10月、天然木の意匠性や質感を最大限に生かしたフローリング「銘樹モクトーン」を発売した。同社は、挽き板、ツキ板を表面にあしらった「銘樹」シリーズを展開。本物志向のユーザーから高い支持を得ている。この「銘樹」に磨きをかけ、これまで以上に「天然木」を追求し、天然素材の持つ美しさを生かすための「塗装技術」に焦点を絞り、研究開発を進め、実用化に至ったのがツキ板フローリング「銘樹モクトーン」だ。
着色や塗装に工夫を施した新塗装「Eナチュラル塗装」を採用し、従来品に比べて、より薄い塗膜で、耐傷性能や耐キャスター性能など現在のフローリングが求められる性能を満たしながら、天然木の色や自然な風合いを一層向上させることに成功した。
また、同社の内装建材「スキスムS/T」と組み合わせて、様々なインテリアスタイルに使用できるように、ツキ板仕様としては豊富な樹種と色柄(全9樹種13色柄)を揃えた。
さらに、コロナ禍でエンドユーザーの健康に対する意識が高まる中、「銘樹モクトーン」には抗菌・抗ウイルス加工を施し、SIAA(抗菌製品技術協議会)認証を取得した。
なお、SDGsの取り組みの一環として、「銘樹モクトーン」のフローリング基材には国産針葉樹合板を用い、環境にも配慮した。
「こうした高付加価値化を図りながら、コストは企業努力で据え置いている」(同社)。
比重が高まるリフォーム市場
独自戦略で他社と差別化
新築市場が縮小していく中で、リフォーム市場開拓に向けた動き、独自戦略で他社と差別化を図る動きも活発化してきている。
朝日ウッドテックは、リフォームの販売が好調だ。2021年4月〜6月のリフォームの販売実績は前年同期比で約30%増のペースで伸びている。
「リフォームを検討している人の多くは、建材などのアイテムの善し悪しを自分で見極めて使おうという意識が高い。実際に、我々がSNSなどを活用した情報発信を強化する中で近年、リフォーム検討ユーザーの当社ショールームへの来場が増えている。また、リフォームを手掛けるプロユーザーも本物の良さを知っていただくと積極的に天然木フローリングを推奨してくれる傾向がある」と手ごたえをつかむ。
そこで、さらなるリフォーム分野の販売拡大に向け、2021年8月、「床でカワル 床がワカル リフォームの本」という冊子を発刊した。リフォームのプロユーザーがエンドユーザーに天然木の床の価値を伝えることができ、ショールームへの誘導が図れる内容となっている。積極的な活用を促し、戸建住宅においても、マンションにおいても、天然木の床へのリフォームという新しい需要、市場を創出していきたい考えだ。
ノダは、リノベーションマンション向けの直貼り防音フローリングをリフォーム商品と位置づけ拡充し、独自の強みで販売を伸ばす。
メーカー各社は、新築マンション市場への販売も踏まえ、直貼り防音フローリングを展開している。スラブコンクリートの含水率が安定しないことに対応するため、フロア基材に湿気に強いラワン材を用いたものが主流となっている。
一方、同社では、リノベーションマンションにターゲットを絞り、湿気が少ない状態のスラブを想定し、フロア基材に自社工場で生産しているMDFを使用した直貼り防音フローリングを主に販売しており、30年近くの実績を持つ。
築後、20年、30年経ったマンションのコンクリートスラブは、湿気の抜けた平衡含水率の状態になるため、ラワン基材である必要性はない。もともとコストが高いものだが、ウッドショックの影響で、さらにコストが上昇している。そこに同社は、MDF基材の直貼りフロアで攻勢をかけ、シェアを一気に高めている。
「都市部の新築マンションの価格は高止まりしており、手頃な物件も少ない。一方で、買取再販事業者が展開するリノベーションマンションは各世代の人気を集め、需要は旺盛。そこにターゲットを絞った。意匠性では”グレージュ””ホワイト”カラーのニーズが高いため、直貼り防音フローリングにもラインアップし、全30柄を揃えている」(同社)。
フローリングは、直に手や足が触れる部材であるだけに、住まい手の満足度に大きな影響を与える。また、住空間の印象を左右する重要な部材でもある。社会環境の変化、多様化するエンドユーザーのニーズに応えて、メーカー各社は新商品、新商品提案を活発化し、フローリングは進化し続けている。住宅の魅力を高めていくためにも、どのフロアを選択し、ユーザーに提案していくかが重要になってきている。
リンク先は各社のサイトです。内容・URLは掲載時のものであり、変更されている場合があります。
内容・URLは掲載時のものであり、変更されている場合があります。
-
マーベックス・アキレス “断熱等級6”の時代の真の差別化ポイントを解説
2024.11.21
-
YKK AP・パラマウント硝子工業・日本住環境・アキレス 断熱気密の施工をプロが解説
2024.11.21
-
JCA・デコス エバーフィールド・久原氏が石川の木造応急仮設住宅について講演
2024.11.12