個性際立つ提案が加速 コロナ禍で生まれた新たなトレンド

今、住宅のインテリアへの関心がこれまで以上に高まっている。

外出自粛によるおうち時間の増加で住環境への意識が高まり、インテリアに目を向ける人がこれまで以上に増えた。その結果、リフォームや新築で自宅のインテリアのデザインに対するこだわりや、ニーズの多様化が加速している。

また、コロナ禍で私たちの暮らしが大きく変わり、新しい生活様式が求められるようになったが、これに対応したインテリアのニーズも高まっている。例えば、テレワークを快適に行うための空間やウイルス対策の需要が出てきている。

こうした中で、内装建材メーカーはコロナ禍で高まるインテリアのデザインや新しい生活様式への対応のニーズをチャンスと捉え、様々な取り組みを活発化、既存シリーズのリニューアルや新商品を投入するなど、オンラインも活用しながら取り組みを強化している。


インテリアへの関心高まる
デザインの多様化が加速

コロナ禍で、自宅のインテリアへの関心が高まる中、特に消費者が熱い視線を向けているのは”デザイン”だ。 

国土交通省の「令和2年度 住宅市場動向調査」によると、注文住宅取得者の設備等に関する選択理由は「高気密高断熱住宅だから」に次いで「住宅のデザインが気に入ったから」が55.6%と2位。前年度から7・1ポイントものアップだ。また、戸建分譲住宅、分譲マンションともに「デザイン」が4割弱と「間取り・部屋数」、「広さ」に次ぐ3位となっている。

外出自粛で自宅の住環境への意識が高まり、自宅のインテリアのデザインに目を向ける人が増えたことで、より自分の好みに合ったインテリアで過ごしたいというニーズが高まっていると考えられる。

また、様々なインテリア事例が投稿されるSNSを通じ、消費者はこれまで以上に豊富な情報を簡単に集められるようになっており「インテリアデザインに対するニーズの多様化がコロナ禍でこれまで以上に加速している」(ウッドワン)という。

こだわりやニーズの多様化に対応
新色追加や付加価値提案が加速

こうしたインテリアデザインに対する関心の高まりとニーズの多様化に対応しようと、ここにきて内装建材メーカーの取り組みが加速している。

三協立山・三協アルミ社は室内ドア・引戸などのインテリア建材「LiVERNO(リヴェルノ)」に、個性あふれるインテリア空間を演出する3つの新色を追加し、バリエーションを拡充

三協立山・三協アルミ社は、5月、室内ドア・引戸などのインテリア建材「LiVERNO(リヴェルノ)」に、個性あふれるインテリア空間を演出する3つの新色を追加し、バリエーションを拡充した。

カジュアル系の30シリーズに、明るく元気なビタミンカラーのイエローをレザー調に仕立てたレモンレザー色(「LiVERNO304」)を追加。ヴィンテージ系の50シリーズには、グレーサカン色(「LiVERNO502」)とディープグリーンフォイル色(「LiVERNO503」)を追加した。グレーサカン色は左官職人による土壁をイメージした程よいムラ感のあるテクスチャーと周囲の色を引き立てる無機質なグレー色が上品で落ち着いた空間を演出。ディープグリーンフォイル色は金属箔をランダムに重ね貼りしたテクスチャーをダークグリーンで仕上げ、ヴィンテージにグリーンの癒しを加えた味わい深い色調を出した。

また、今回採用した3つの新色を収納ユニット扉にもラインアップ。多彩なカラーバリエーションで、「LiVERNO」の室内ドアや引戸とのトータルコーディネートを可能とした。同社では今回の新色追加により昨今のインテリアトレンドにマッチするカラーを充実させることで、コロナ禍で高まるこだわりの空間を求める需要に対応していきたい考えだ。

ノダは4月に創設したマンション向けインテリア建材のセレクションブランド「マンション リノベーション セレクト(MRS)」を通じ、コロナ禍で高まるインテリア需要への対応に力を入れる

ノダも4月に創設したマンション向けインテリア建材のセレクションブランド「マンション リノベーション セレクト(MRS)」を通じ、コロナ禍で高まるインテリア需要への対応に力を入れる。首都圏を中心に、既存マンションを購入し自分好みにリノベーションする若年層が増えているが、こうした層に向けて、より付加価値位の高い提案を行っていく。

MRSは、ノダが既に販売している内装建材ブランドの中から、マンションリノベーションに向いた商品(床材・建具・収納など)をセレクトしたものだが、様々なテイストの住宅に幅広く調和する汎用性の高いデザインの「BINOIE(ビノイエ)」だけでなく、都会的でスタイリッシュなデザインの「Mode Collect(モードコレクト)」からも商品をセレクトすることで、多様化するデザインのニーズに対応する。例えば、モードコレクトでは、大胆な木目が特徴の「ラスティック」や、かまちを組んだ内装ドアなどの特にデザイン性と付加価値の高い商品をラインナップに取り揃えた。

トーソーはロールスクリーンの高付加価値商品「マイテックシーズ」の提案に注力

トーソーもコロナ禍で高まるインテリアへの関心に対応し、付加価値の高い商品の提案に力を入れる。その一環として、ロールスクリーンの高付加価値商品「マイテックシーズ」の提案に注力。マイテックシーズはレーザーカットでデザインを施した意匠性が特徴。ロールスクリーンでは、柄をプリントして意匠性を高めているものはあるが、レーザーカットは「トーソーにしかない独自の特徴」(同社)だという。

標準のロールスクリーンにプラス9000円(税別)でレーザーカットを施すことが可能。デザインは22種類と豊富だ。昨年発売された猫がモチーフのものやオーナメントがデザインされたものが特に人気。施されたデザインを見て楽しむだけでなく、レーザーカットされた穴から入り込む光が、室内に木漏れ日のような空間をつくり出す効果もある。

これまでも一定数の需要があったが、ここにきてより需要が高まっており、「SNSで他人とは一味違うロールスクリーンとして、紹介する方も増えている」(同)としており、今後、さらに提案に力を入れていきたい考えだ。

ライフスタイルを
切り口にした商品提案も

ウッドワンは従来の木目柄シートの内装建具シリーズ「ソフトアートシリーズ」を一新して、新たな内装建具シリーズ「DOORETUS(ドレタス)」を発売

ウッドワンは従来の木目柄シートの内装建具シリーズ「ソフトアートシリーズを一新して、新たな内装建具シリーズ「DOORETUS(ドレタス)」を6月14日に発売した。

木質建材メーカーならではの木の質感、高い耐久性のある素材を採用することでの品質に加え、柄数は6種類の新柄(スモークブラウン、ショコラブラック、ナチュラルクリア、G1、G3、G8)を加えた13柄の豊富なラインナップとすることで、多様化するニーズに対応する。

今回のリニューアルに伴い、ウッドワンは商品のデザイン・仕様だけでなく、カタログでの提案の仕方も従来から変える。

これまでは商品のデザイン・仕様ごとにカテゴリーを分けて提案してきた。しかし、今回はいくつかのライフスタイルのイメージ別に空間提案を行い、それぞれの空間に合う商品を提案するというようにする。例えばナチュラルなライフスタイルが好みであればドレタスの商品のうち「室内ドアでは〇〇が、ドアハンドルでは◯◯がオススメ」といった提案の仕方をする。
さらに、ウッドワンはドレタス以外の内装建材も含めてライフスタイルのイメージ別に同社の商品を提案する「スタイルブック」も5月に発刊しており、好みのライフスタイルを切り口にした商品提案に力を入れていきたい考えだ。

立川ブラインド工業は6月にロールスクリーン「ラルクシールド」とタテ型ブラインド「ラインドレープ」について、デザイン生地のラインナップを拡充しリニューアル

立川ブラインド工業も、ライフスタイルを切り口にした製品提案に力を入れる。

同社は6月にロールスクリーン「ラルクシールド」とタテ型ブラインド「ラインドレープ」について、デザイン生地のラインナップを拡充しリニューアルを図り、消費者が自分の叶えたいライフスタイルのイメージから、デザイン生地を選べるようにした。

「ラインドレープ」では、都会的で洗練されたイメージの「ソーホースタイル」、ヴィンテージ家具に合わせやすい「インダストリアル」、生活に安らぎを与える植物を取り入れた「ボタニカル」、定番となった北欧スタイルの「ノルディック」、木目調の「ティンバル」の4スタイルを用意。「ラルクシールド」はこれに和テイストの「WA(和)」、「スダレ」の6スタイルから選べるようにしている。

「SNSで注目されているインテリアや多様化するライフスタイルに合わせて構成した」(同社)という。

特に、「コロナ禍でおうち時間が増え、暮らしに癒しを添えてほしい」といった想いから、植物のモチーフやグリーンをモダンに取り入れた「ボタニカルスタイル」の訴求に力を入れていきたい考えだ。

オンラインでの訴求の強化も
ネットでも特徴をイメージしやすく工夫

コロナ禍をきっかけに消費者のインテリアへの関心がこれまでになく高まってきたことから、インテリア建材メーカーはこれをチャンスと捉え販促を強化していきたい考えだが、特に注目しているのがオンラインでの訴求だ。コロナ禍の外出自粛で、ショールームに足を運ぶことを躊躇する人も多い。また、家にいる時間が長くなったことで、インターネットで好みのインテリア建材を探す人も増えていることから、オンラインによる訴求を強化していこうとしているのだ。

三協立山・三協アルミ社は、「コロナ禍で大きく変化した消費者の情報取得方法に対応する」とし、オンラインでの販促を強化する。ホームページでのスペシャルサイトの設置や、SNS、オウンドメディア、アーンドメディアなどのあらゆるオンライン上のメディアを活用し、消費者に商品の魅力を訴求する。また、工務店、代理店などの事業者には、ウェビナーやオンラインでの研修会を実施していく。

トーソーもインテリア建材の販売促進へオンラインでの訴求を強化している。

トーソーはレーザーカットで意匠を施すロールスクリーン「マイテックシーズ」の魅力をネット上でよりわかりやすく伝えるため、4月からホームページでオンラインシミュレーションツールの提供を開始

レーザーカットで意匠を施すロールスクリーン「マイテックシーズ」の魅力をネット上でよりわかりやすく伝えるため、4月からホームページでオンラインシミュレーションツールの提供を開始した。窓のタイプ、好みの色味、生地、レーザーカットで施すデザインを選ぶことで、これらの条件を反映した事例写真が表示されるというものだ。拡大表示で細部を確認でき、ダウンロードして保存することもできる。

また、昨年秋からロールスクリーン透過度シミュレーターの提供も開始している。これはロールスクリーンを下ろした状態で夜間に戸外から室内がどのくらい透けて見えるかをシミュレーションできるもの。好みのロールスクリーンで、角度を変えて確認することが可能だ。「工務店やインテリアコーディネーターなどからかなり好評」(同社)だという。

トーソーは今後もオンラインでのツールの提案を強化していきたい考えで、「シミュレーションツールに対応する商品の種類や数をもっと増やしていきたい」(同)としている。

コロナ禍で、これまでになく住宅のインテリアに熱い視線が注がれる中で、オンラインも活用しながら、内装建材メーカー各社による提案が今後一層強まっていきそうだ。

次世代のスタンダード
抗ウイルス提案が急拡大

コロナ禍において、暮らし方が大きく変わってきているが、その一つがウイルス対策である。在宅勤務の推奨など、自宅にいる時間が増えているが、外出先からウイルスを住まいの中に持ち込んでは元も子もない。また、仮に家族の中で感染者が出ても家庭内で拡大させないことが求められている。そのため、例えば、玄関などを入ってすぐに手洗いを設置したり、そのままリビングに入らないような動線計画としたり、住宅各社はさまざまな提案を続けてきている。

こうしたなかで内装建材各社がいっせいに取り組んだのが抗ウイルス建材の開発だ。抗ウイルスとは、製品上の特定ウイルスの数を減少させる機能のことで、快適で衛生的な環境づくりに役立つ。内装建材は、人が直接触れるものも多い。コロナ禍での暮らしの不安を解消する意味からも、抗ウイルス加工製品を積極的に打ち出す住宅事業者は多い。抗ウイルスは、コロナが求めた新たな機能と言ってもいい。

抗ウイルス剤を練り込み
長い効果、お手入れも簡単

アイカ工業が2月に発売した「スマートサニタリーエントランスタイプ」。抗ウイルス建材「ウイルテクト」をポストフォームカウンターなどに使用した

アイカ工業は、抗ウイルス建材シリーズ「ウイルテクト」を展開する。2019年にメラミン化粧板に抗ウイルス性能を付加した「アイカウイルテクト」を発売。抗ウイルス性に加え、抗菌作用も持ち、ともにSIAAマークを取得。当初、医療・福祉施設、保育園で採用され、その後、学校や店舗、公共施設など様々な施設で採用が進んでいる。その機能・性能は折り紙付きだ。
「アイカウイルテクト」は、表面層に抗ウイルス剤を練り込んだメラミン化粧板。効果が長続きし、手入れも簡単だ。そもそもメラミン化粧板は耐久性、耐熱性、耐水性、耐摩耗性などに優れる。そこに抗ウイルス剤を練り込んだ。耐薬品性が高く、表面に抗ウイルス剤を塗布した製品と異なり、抗ウイルス性能が長く保たれる。

この抗ウイルスの技術を水平展開、抗ウイルス剤練込メラミン不燃化粧板「セラールウイルテクト」、粘着剤付抗ウイルスメラミンシート「メラタックウイルテクト」をはじめ、トイレブース、ドア、扉、カウンターなどラインナップを広げ、「ウイルテクトシリーズ」として展開している。住宅向けでは、壁、扉、カウンター、収納用の製品を揃え、玄関、リビング、洗面所・脱衣所、キッチン、トイレなど住まいのさまざまな部位で活用することができる。2月にはポストフォームカウンターなどに「ウイルテクト」を使用した玄関洗面化粧台「スマートサニタリーエントランスタイプ」、6月には「セラールウイルテクト」のラインナップに、光沢による清潔感で人気の「艶有り仕上げ」6種類を追加するなど、新商品も相次いでいる。広くさまざまなシーンで使えることも「ウイルテクト」の魅力だ。

「ウイルテクト」は昨年「グッドデザイン賞」を受賞しているが、先には、国際的に権威のあるドイツのデザイン賞「iF DESIGN AWARD 2021」を受賞した。新型コロナウイルス流行のなか、機能性やユーザビリティ、社会貢献度や持続可能性の審査項目で高い評価を受けたものだ。住宅業界からの反響も大きく、「内装建材の一つの基本機能」としてさらに販売を強化していく。

天然木の質感と性能を両立
コロナウイルスへの効果も確認

2020年7月、天然木、複合フローリングで日本初の「SIAA抗ウイルスマーク」を取得したのが朝日ウッドテックである。挽き板フローリング「LiveNaturalプレミアム」シリーズを皮切りに、すべての天然木化粧床材の抗ウイルス仕様への切り替えを進めており、現在、41商品・227品番が抗ウイルス商品、2021年度中にはすべての商品を切り替える予定だ。一部製品や、グレードアップ仕様ではなく、全面的に抗ウイルス仕様に切り替える思い切った取り組みで、いまやスタンダードな性能となった抗菌のように業界標準になると見越して、いち早く全面切り替えを決めた。無機系の抗ウイルス剤を配合した新塗装によって抗ウイルス性を持たせるが、天然木の手触り感や質感を維持するかにこだわって抗ウイルス剤を選定したことが大きな特徴だ。

さらに2021年1月には日本で初めて天然木フローリングで「SIAA抗菌マーク」を取得した。今後、天然木フローリング以外の床材、階段材、壁材、手すり、造作材なども、順次、抗ウイルス・抗菌仕様に切り替えていく。

今年6月、抗ウイルス・抗菌仕様の天然木フローリングで、新型コロナウイルス(国立感染症研究所分離株)に対する抗ウイルス効果があることが確認された。(一社)日本繊維製品品質技術センターに性能評価試験を委託、ISOに基づく試験を行ったところ、24時間後にウイルス数が99%以上減少することが確認された。コロナ禍でさらに説得力のある提案が行えそうだ。

床材の抗ウイルス展開を加速
壁やドアなどへの展開も

2012年に建材業界で初めて抗ウイルス技術「ビオタスク」を確立したのが大建工業。IOSまたはJISを参考にした試験方法で、24時間後に特定ウイルスの数を99%以上減少させる機能を確認した。

同社では、この技術を、室内ドアのレバーハンドルや引戸の引手、カウンタートップ、手すりという「接触3部位」から製品展開を開始した。住宅用内装建材「hapia」シリーズ、高齢者施設・高齢者向け住宅用内装建材「おもいやり」シリーズで「ビオタスク」を展開する。新型コロナウイルス感染拡大のなか「ビオタスク」仕様への注目が高まり問い合わせが増加した。

今年3月には、接触3部位に続く第2フェーズとして「水平部材」、つまり床材へ展開、第1弾製品として高齢者配慮床材「おもいやりフロア」を発売した。製品表面に抗ウイルス剤を添加した特殊塗料を塗布することでビオタスクの品質基準をクリアする。5月には第2弾として「ハピアフロア‐VS」、「ハピアフロア石目柄Ⅱ‐VS」、「フォレスナチュラル‐VS」、「フォレスナチュラル床暖房タイプ‐VS」を発売、「ビオタスク」の床材展開を加速させている。

床材の展開と同時に、第3フェーズである壁やドア面材など「垂直部材」の開発も急ピッチで進めており、高まる抗ウイルス建材に対するニーズへの対応強化を進めていく。