2021.6.16

クラボウ、建設用3Dプリンタ事業を開始

パートナー企業と共創で新領域を開拓

クラボウ化成品事業部は、セメント素材を用いた建設用3Dプリンティング事業を開始した。
外構材などの制作からスタートし、将来的には土木・インフラ分野などへの展開を計画する。
パートナー企業との共創ジネスを展開し新領域の開拓を進める。


クラボウが寝屋川工場に導入した建設用3Dプリンター

クラボウ化成品事業部は、建設用3Dプリンティング設備を寝屋川工場(大阪府寝屋川市)に導入し、セメント系材料を用いた小型〜中型の立体造形物の受注生産を開始した。

住宅建材はじめ、自動車部材、産業資材、半導体関連製品などを展開する化成品事業部は、クラボウグループの売上高の4割を占め、中核を担う。中期計画Creation 21において「イノベーションへの取り組み」を掲げ、その一環として、今回、建設用3Dプリンティング事業を開始した。

近年、住宅購入者の趣味・嗜好が多様化し、こだわりや個性を住宅の外装デザインで表現するニーズが高まっている。

また、商業施設などでも魅力ある空間演出のため独自性の高い装飾を施すトレンドが強まっており、使用する建材においても意匠性の高いカスタマイゼーションが求められている。

さらに、建設・住宅業界においては人手不足問題などにより省人化・省力化が喫緊の課題であり、生産性の向上が重要なテーマとなっている。

加えて、高度経済成長期に建設された道路や橋梁など、インフラの老朽化が社会問題としてクローズアップされている。

建設・住宅業界が抱える、こうしたさまざまな課題解消に向け、近年、デジタル技術の活用(DX)の取り組みが活発化してきている。

クラボウ化成品事業部では、従来から、住宅外装化粧材や外構材の開発・販売を行っており、その分野で培った材料配合や押出成形の技術、豊富な実績を持つ。

こうしたノウハウと、DXを掛け合わせて、イノベーションを起こせる分野として3Dプリンティングに注目。2017年から調査を開始し、新規事業の検討を行ってきた。

その結果、欧州で多くの建設用3Dプリンティング案件の製作実績を持つフランスのスタートアップ企業、XtreeE(以下、エクストリー)社製の3Dプリンターを導入し、材料選定や3D‐CADの設計技術等の習得を経て、3Dプリンターによる造形物の受注・製作体制を構築した。

欧州を始め、ロシアやUAE、中国などでは、3Dプリンターを用いて建設する住宅建築などの事例が増えているが、日本においては、建築・住宅分野での3Dプリンターの活用は進んでいないのが実情だ。建設用プリンティング事業をスタートしたのは、同社が国内初となる。

材料配合などのノウハウ生かし
高精度な立体造形が可能

ロボットアームに取り付けたノズルからセメント系材料のモルタルを吐出して積層。複雑な形状や精緻なデザインも表現できる

同社が導入した建設用3Dプリンターは、3D‐CADデータを基に立体物を自動で製作する。ロボットアームに取り付けたノズルからセメント系材料のモルタルを吐出して積層することで、立体的な造形物を短時間で成形できる。通常の成形方法のような型枠を使用しないため、複雑な形状や精緻なデザインも表現できるうえ、型枠の製作・管理コストの削減、設計から開発までのプロセス短縮にもつながる。

小型〜中型の造形物の製作に対応しており、最大で2500mmまでの大きさの成形が可能。
成形時間も短く、小型の1500mm(幅)×200mm(奥行き)×300mm(高さ)のモニュメントであれば約30分で成形できる。この規模の制作物であれば、設計料も含めて料金は20万〜30万円となる。
6mmの最小積層ピッチ(1層あたりの厚み)でプリントできるため、高精度な立体造形が可能だ。

外構材などからスタート
将来は土木・インフラ分野に

すでにゼネコンなどから要望を受け、住宅や商業施設・公共施設向けの外構材やベンチ、モニュメントなどの景観材の製作をスタートしている。あわせて、3Dプリンティング技術のさらなる向上を図り、よりサイズの大きな中型〜大型の造形物や高強度を要する造形物への対応力を高めるとともに、需要に応じて3Dプリンティングの設備増設やオンサイト(施工現場)でのプリンティング体制の構築も目指す。

3Dプリンターで製作した外構材(門塀)

将来的には、セメント系/非セメント系を問わず新規材料の開発によって製作可能なデザインの幅を広げるほか、土木・インフラ分野などへの展開も図ると同時に、海外への事業展開も目指す考えだ。

また、3Dプリンティングは、さまざまな分野での活用が期待できるだけに、現在パートナー企業の選定を進めており、共創ビジネスを展開し新領域の開拓を進めていく考えだ。2024年度、建設用3Dプリンティング事業として販売目標10億円を目指す。

同社の馬場紀生 代表取締役 常務執行役員 化成品事業部長は「SDGsやESG経営の観点から、ビジネスモデルの変革が求められている。パートナー企業と共創ビジネスに取り組み、イノベーションによる収益拡大、高付加価値ビジネスの拡大を目指していきたい」と述べた。

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ハウジング・トリビューンVol.624(2021年14号)

特集:

巨大な潜在市場が動き出す

2015年のいわゆる「空家特措法」施行から6年が経過する。
国は大きく利活用と除却の二方面から、制度改正や補助事業などを通じて空き家対策を進めてきた。
発生の抑制や除去などに一定の効果が出ているが、利活用についてはなかなか火がつかなかった。
空き家問題には数多くの課題が横たわる。
今、こうしたその散在した課題を解決するサービスが続々投入されている。
さらに、コロナ禍は空き家市場にとってマーケット拡大のきっかけになる。
テレワークの普及により、多拠点居住や多拠点ワークを行う「場」として空き家に関心が高まっているからだ。
今年3月に閣議決定された住生活基本計画でも、空き家の活用を「新たな日常」に対応した新しい住まい方の実現の1つに挙げている。
また、6月18日に閣議決定された骨太の方針でも空き家について言及。
「先進的取組や活用・除却への推進等の支援」などをしながら、既存住宅(ストック)市場の活性化に結び付ける考え方を明確にした。
こうした空き家への関心の高まりを追い風に、いよいよ空き家マーケットの誕生の期待が高まる。
国が掲げる2030年に14兆円のストック市場の実現可能性が見えてきた。

目次

HTʼs eyes

土石流が人災であったとしても
大規模盛土造成地の点検スピードアップを

ストック市場のけん引役になるか
空き家ビジネス
巨大な潜在市場が動き出す

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