2021.4.13

居住支援全国サミットが開催

住宅確保要配慮者への居住支援を探る

厚生労働省と国土交通省、法務省は居住支援全国サミットを開いた。住宅確保要配慮者に対する居住支援の取り組み事例などを紹介しながら参加者は今後を考えた。


住宅確保要配慮者でも特に大きな問題となっているのが高齢者だ。国は、今後の高齢化社会に対応しようと、住まいを中心に医療や介護、生活支援・介護予防などが受けられる「地域包括ケアシステム」の構築に動いている。構想では、住まいから30分以内で、高齢者が必要なサービスを受けられる日常生活圏域が想定されており、25年をめどに実現する。

「低所得高齢者等住まい・生活支援モデル事業」のイメージ

このシステムの実現で重要になるのが住まいだ。厚生労働省によると、65歳以上の世帯主が暮らす住居形態で持ち家は872万世帯。特別養護老人ホームなど施設で暮らす人は205万人、賃貸住宅で暮らす人は262万世帯ある。ただ、賃貸住宅に暮らす低所得の高齢者の場合、近年、保証人がいないことなどを理由に借りられないケースも出ている。

厚労省は「低所得高齢者等住まい・生活支援モデル事業」を通じて住まいの確保を後押している。既存の空き家などを活用しながら住まいの確保と同時に生活支援などの見守りの体制を整える。現在、全国で15の自治体がこのモデル事業を推進している。

京都市の事例では、不動産団体と福祉団体、京都市が連携し、京都市居住支援協議会を設立。「高齢者を拒まない住宅」に登録している不動産事業者が連携し、本人と社会福祉法人、不動産事業者(家主)が3者面談し、空き部屋のマッチングを行う。そして住み替え後は社会福祉法人が見守りサービスを行うという流れだ。19年7月までのおよそ6年間で実現できた住み替えは93人。住み替えの理由は立ち退きや契約更新不可など。「社会福祉法人の見守りサービスが家主の安心につながり、貸主の負担軽減につながっている」と同省担当者は話した。

また、日本社会事業大学専門職大学院の井上由起子教授は「居住支援の全体像と普及に向けて」をテーマに講演。井上氏によると、社会福祉法人2168法人うち居住支援に取り組んでいる社会福祉法人は7・1%。「まだまだ少数派」としながらも「高齢者の居住支援は、単身高齢者が今後増えることを考えると、かなりのボリュームになる」と強調。その上で「物件確保については不動産事業者との連携が重要」と指摘した。