2021.3.4

シェアサイクル導入都市の6割が赤字

普及には再配置費用削減など収支改善が鍵

シェアサイクルを導入している自治体のうち6割で収支がマイナスになっていることが国土交通省の調査で分かった。新たな公共交通機関として注目されているシェアサイクルだが、普及を進める上での課題が浮き彫りになった。

ポートの大型化により、再配置費用の一定程度の削減も見込まれる

国交省によると、シェアサイクルの特長として①個人所有の自転車とは異なり、不特定多数の者の移動手段としての機能を有する②公共交通を補完する手段として、交通結節点から先のラストマイルの移動を担う③面的なネットワークの形成により、自由度の高い移動が可能──などがある。こうした特長のあるシェアサイクルは、様々な社会的課題を解決するための手段として国内外で導入が進んでおり、効果も確認されている。例えば、岡山市では鉄道からの二次交通として利用することで、乗り換え利便性が向上。利用者のまちなかへ出かける回数やまちなかでの滞在時間、立ち寄る店や目的の場所が増え、地域活性化につながっていることも岡山市では確認されている。他にも環境負荷の軽減や健康増進、災害時の交通機能の保持などへの効果も期待されている。

こうした様々な効果が期待されるシェアサイクリングだが、普及させるうえで大きな課題となるのが採算性だ。

同省は1月に「シェアサイクルの在り方検討委員会」を開催。その中で示した資料によると、シェアサイクルを導入している22の自治体を対象に行った調査で「収支0以上、補助金なし」の”健全運営”は5自治体にとどまる。「収支0以上、補助金あり」は3自治体。

反対に赤字は14自治体で全体の6割に上っている。内訳を見ると、「収支マイナス、補助金なし」が全体の半数を占める11自治体。「収支マイナス、補助金あり」も3自治体あった。赤字自治体では、支出に対する利用料金収入が4割程度にとどまっている。他にも支出に占めるランニングコストのうち再配置費用が3〜4割を占めていたり、地方公共団体による補助金を活用している事例は2割程度にとどまっていたりするなどの傾向が表れた。

このため同省は、シェアサイクル事業の採算性の確保に向けて①「収入の増加」②「支出の削減」③「補助等による補填」の3つの視点で、対応策の例を整理。ポート密度の向上などによる収入増やランニングコストのうち3〜4割を占める再配置費用を、AIを使って圧縮し、支出を減らすなどが例として挙げられた。

同省はシェアサイクルの普及を進めるため、2021年度中にガイドラインを策定。ガイドラインなどを通じて、「地方公共団体へのノウハウ提供や地域の取り組み事例の蓄積を踏まえた更なる支援措置の検討を行う」としている。