防災科研が国難級災害に備え成果発表
豪雨もたらす線状降水帯の予測、社会実装も
国立研究開発法人防災科学研究所は2月10日、「来るべき国難級災害に備えて2021」をテーマに成果発表会を開いた。今年で10年となる東日本大震災を振り返り、また、近年頻発する豪雨災害を教訓として、命を守る観点から何をなすべきかを関係者間で考えた。
近年、大雨による人や家屋などへの甚大な被害が増えているが、その要因として指摘されるのが線状降水帯の発生だ。台風を除く集中豪雨の6割以上は線状降水帯によって引き起こされているという。それだけに線状降水帯の予測による事前対応は喫緊の課題となっている。
ただ、比較的狭い範囲に数時間のうちに記録的な大雨をもたらす線状降水帯を事前に予測することは、既存の気象観測技術では大変困難とされている。こうした中、現在開発が進められているのが、線状降水帯が発生する2時間前に避難区分単位の精度で災害発生地域を絞り込む技術だ。線状降水帯の発生が見込まれる地域を半日前ぐらいに大まかに特定し、最新水蒸気観測網を整備し、観測データを用いた最新の数値予測手法を用いて、高解像度で高頻度に雨量予測情報を提供することで、2時間前に絞り込むことができるという。
国家レジリエンス研究推進センターの清水慎吾氏は、令和2年7月豪雨における適用例を紹介。「50年に一度の大雨をもたらす災害に直結する線状降水帯を発生の1時間前に特定。その後3時間にわたって予測した積算雨量と観測した雨量が合致していた」と明かした。同氏は「これを社会実装し、逃げ遅れゼロの社会を目指したい」と強調した。
「『東北地方太平洋沖地震』の教訓を南海トラフ地震へ」をテーマにパネルディスカッションも行われた。今後発生が予想されている南海トラフ地震。この巨大地震で課題として浮上しているのが「半割れ」だ。予測される震源域は東西に広がるため、同時ではなく一部震源域だけ大地震に見舞われるケースも想定される。この半割れとなった場合、まだ大地震が発生していない残りの地域の対象住民をどう避難させるかなどの課題がある。
地震津波防災研究部門の齊藤竜彦氏は、現状での研究開発を踏まえ、「力の分布は地震学で分かる。観測データを反映させて、体制をつくる」と述べた。首都圏レジリエンス研究推進センター長の平田直氏によると、過去の南海トラフ地震の例を挙げながら、半割れの予測について「相当難しい」と話した。仮に半割れとなった場合、「少なくても2週間は我慢しなさいというのが公式見解」と説明。これに対して理事長の林春男氏は「我慢は3日が限界。2週間は政治的な見解」と述べた。特別ゲストコメンテーターで、モデレーターを務めた池上彰氏は「様々なシミュレーションを伝えていかないといけない」と情報提供・共有の大切さを改めて訴えた。
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