2021.3.8

採算の取れる中古戸建住宅は1割?

戸建の買取再販で急成長するカチタスは、2017年にニトリと業務提携。バーチャル上で、リフォームした物件にニトリの家具をセットしたホームステージングのCG提案も好評だという

近年、住宅購入の選択肢として中古住宅の割合が増えている。野村総合研究所がまとめた「既存住宅流通量、既存住宅を購入した世帯比率の実績と予測結果」によると、住宅を購入する全世帯のうちすでに3割が中古住宅を選択しており、2030年には約5割にまで上昇すると予測する。

こうしたニーズを捉えて、戸建の買取再販で急成長するのがカチタスだ。同社は、人口5万~30万人規模の地方都市に営業エリアを絞り戸建住宅の買取再販事業を展開。独自のノウハウで平均販売価格を1400万円台に抑え、年間約6000件の買取再販物件を販売する。そのうち約6割は空き家であり、ビジネスとして成功を納めつつ、年間数千件規模の空き家再生にもつながっている。

同社が買取再販の対象とするのは築30年~40年の中古住宅。築年数の古い物件を扱うだけに、現況調査に特に力を入れて取り組んでおり、カチタスの社員、工務店、シロアリ駆除業者の3者が立ち合い、床下などの躯体まで含めて、物件の劣化状況を徹底的に調査することで再生住宅として活用できるかを見極める確度を高めている。そして現況調査を実施して買取りに至るケースは全体の1割程度だという。そこに中古戸建住宅を取り巻く厳しい現実がある。

一方、ここにきて断熱性能、耐震性能を高めるさまざまな商材、工法が充実してきており、お金さえかければ、たとえ躯体の損傷の激しい中古戸建住宅でも再生することは不可能ではない。しかし、中古住宅を求める人の一番のモチベーションは「新築よりも圧倒的に安く購入したい」ということであり、コストを掛ければ掛けるほど、消費者のニーズと乖離が生じてしまう。

安さを求める消費者のニーズといかに折り合いをつけて、リフォーム、リノベーションを施し、2割、3割と再生可能な中古戸建住宅を増やしていけるか。今後、戸建の買取再販や、リノベ市場を拡大していけるかはその点に尽きる。

ハードルの高い取り組みになることは必至だが、目には見えにくい安全・安心を高めるためのコスト、性能向上のためのコストの意味、価値を、一般の消費者に伝えていく地道な努力も必要になりそうだ。