2020.8.12

(一社)日本木造住宅産業協会、中大規模建築物を普及し、 木造の可能性をさらに高める

高耐久住宅の開発にも着手

2010年施行の「公共建築物等における木材利用の促進に関する法律」により低層建築物の木造化・木質化が推進され住宅以外の木造、特に中大規模木造建築物への関心が高まっている。日本木造住宅産業協会(木住協)でも、中大規模木造建築物の普及に向けた技術開発に取り組んでいる。特に防耐火性能の確保に加え、大スパンや階高の高い空間に対応可能な高耐力な耐力壁や接合部の開発などに注力している。

例えば、中大規模木造建築物の計画に不可欠な高耐力な耐力壁に関し18年度までに行った構面試験結果を再整理し、(一財)ベターリビングでの木質構造評定を申請し、3月末に評定書を取得。具体的には厚さが12mm・24mmの構造用合板による大壁造・真壁造の片面張り・両面張りの耐力壁5仕様について、相当壁倍率として7.5倍(14.7KN/m)から19.2倍(37.6KN/m)となる短期許容せん断力等に関わる評定を取得した。また、耐力壁の追加配置などに合理的な真壁造りの5倍耐力壁の開発を行い、ベターリビングでの性能評価試験を実施し、壁倍率4.8倍の性能評価書を20年3月に取得、国土交通大臣認定をも取得している。

複合型保育所の設計資料とまとめ

1時間耐火構造の大臣認定書
発行件数累計で3470件

木住協では06年、木造軸組工法による1時間耐火構造大臣認定を取得し、木造による耐火建築物の建設が可能となった。18年には2時間耐火構造大臣認定を取得し、5階建て以上の純木造建築物の設計が可能となった。

1時間耐火構造(木住協仕様)の大臣認定書(写し)の発行件数は06年からの累計では3470件に。防火指定地域別では、「防火地域」が2292件と全体の66.1%を占める。次に多いのが「準防火地域」で全体の19.3%。「防火+準防火地域」は4.9%で、「その他」が9.7%となっている。

19年度での発行数は1時間耐火で340件だった。建築確認申請済報告物件での19年度の実績は353件。面積別で見ると、200㎡以下が1時間耐火で135件と最も多かった。次いで100㎡以下が76件と続く。一方、1000㎡超が16%占め、3000㎡超も7件あり、「中大規模も徐々に進んでいる」(木住協)とみる。用途別で見ると、専用、共同、併用を合わせた住宅が7割近くを占める。その中で存在感を示すのが「児童高齢者施設」だ。19年度で66件あり、全体の2割に迫る。

「近年、幼稚園・保育所などを木造で建築するケースが増えている」(木住協)という。こうした動きを踏まえて、木住協では、保育所に加え近隣の社会地域社会との交流や子育て支援機能などを付加した、これからの保育所としての木造の複合型保育所を提案するとともに建築物の環境性能評価ツールであるCASBEE︲建築(新築)による評価を行い設計資料として取りまとめている。「今年度も引き続き、非住宅系中大規模木造建築物の設計資料を整備する」と木住協は話す。

大臣認定書の安定した発行件数を支えるのが、木住協が開催する講習会だ。2019年度に開催した「木造軸組工法による耐火建築物設計マニュアル」(1時間耐火構造)講習会は合計16回。受講登録者は合計617人で、累計で9902人となった。2時間耐火構造の講習会も東京で合計4回開き、受講登録者は63人だった。木住協は「2時間耐火構造の認定書(写し)の発行はこれまでにないが、累計で受講登録者は218人に上り、関心の高さはうかがえる」と話す。

高耐久住宅実現に向け建材メーカー中心にWG

また、木住協では昨年、資材・流通委員会の下に「資産価値のある高耐久住宅研究ワーキンググループ(WG)」を設置し、住宅の資産価値の適正評価に向けた取り組みをスタートした。

住宅外皮に起因する雨漏り事故防止を確実にして、長期耐用性を高めると共に「人生100年時代に適応した豊かな住生活の実現」にふさわしい良質・高耐久な住宅及び関連サービスに対する知見を深め、高耐久システム(建材+工法)の開発を目指している。建材メーカーを中心にスタートし、5月時点でのメンバーは33社に。

「高耐久住宅の考え方や課題、外皮メーカーの高耐久な屋根・外壁システムなどを取りまとめた冊子を夏ごろに発刊する」(木住協)。今後、高耐久な屋根・外壁システムを前提とした長期保証ビジネスモデルの構築に向けて、金融・保険など関連業界との維持管理・改修積立制度の設計や、高耐久住宅の中古流通・リフォーム市場での市場価値・資産価値の適切な評価・保証の仕組みへの議論を行う考えだ。

リフォーム支援見直しへ 近く「安心R住宅」の登録

一方、リフォーム支援の見直しも進めていく。木住協では、「リフォーム支援制度」を策定し、リフォーム支援制度登録事業者にツールを提供。利用者が満足出来る住宅リフォームを推進するため、リフォーム業務に関する、営業面・技術面・運用面・情報提供などの支援を行うものだが、「現時点において十分な成果を上げているとは言えない」(木住協)状況だ。このため、会員から意見を聞き、支援の見直しを図っていく。

同時に今年度、国土交通省の「安心R住宅」の登録団体となる見通しだ。

住宅履歴情報を備えた良質な住宅リフォームを改めて社会に提示。これに既存建物取引時にインスペクションを実施する既存住宅状況調査技術者養成講習会など有用なツールを組み合わせ、「住宅ストック活用の新しいビジネスモデルを会員と一緒に構築し、普及させたい」(木住協)考えだ。