10年後になくなる職業
AIによって人間の仕事が奪われる、10年後にこんな職業がなくなる、という話をよく聞くが、AIが普及する前に、オンラインが普及するだけでも、今ある職業の形は大きく変わっていくかもしれない。今回のコロナ禍の影響で在宅ワークが広がる中で、否応もなく、多くの人がオンラインでの対応を迫られた。オンラインでも問題なく仕事ができるということが分かってきたが、業界によっては、そんなレベルではとどまらない激震が走っているのかもしれない。
顕著な例が教育業界だ。リクルートは3月、コロナの影響で学校休校が始まる中、人気予備校の実力派講師などが授業を行うオンライン学習サービス「スタディサプリ」を、全国の小学校・中学校・高校に対して無償提供することを決めた。学校の教師も見よう見まねで、オンライン授業の取り組みを開始しているようだが、その差は歴然だろう。早稲田大学の高口洋人教授は「教科書的な授業であれば、極論すればそれをできる教師が一人いれば事足りてしまう。まさしく失業の危機」と話す。
不動産、建築業界にも、同じような話が出てきている。例えば、賃貸契約はIT重説が認められるようになり、契約から引き渡しまで、一度も対面することなく手続きが完了できるようになっている。不動産コンサルタントの長嶋修氏は「賃貸の現場では、通り一遍の説明をする営業スタッフはいらなくなるかもしれない」と話す。現場主義、対面での打ち合わせが当たり前の建築業界においても、業務のデジタル化が進む可能性がある。これまで日本の建築業界は、専門職の職能の境界があいまいであり、デジタル化との相性が悪かった。しかし今後、否応なく、業務のデジタル化への対応が求められれば、職能の明確化、分業が進むのかもしれない。さらにその先にあるのは、グローバル人材の活用だ。職能がはっきりして、何をどこまでつくるのか、ということがはっきりすれば、仕事を頼むのは、日本人でなければならないという理由はない。海外にもっと優秀な人材がいれば、その人に仕事を依頼したほうが、安く、いいものが手に入るかもしれない。
世知辛い世の中になってきたが、求められているのは、より質の高い仕事、より高度な専門性ということなのだろう。
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