〈住宅言論広場Agora〉「住宅でのBIMの可能性」
東京工芸大学 森谷靖彦氏/Arch 5 小俣光一氏
東京工芸大学 工学部 建築学科 非常勤講師 森谷靖彦氏
建築プロジェクト関係者の意思疎通を円滑化
施主とのコミュニケーションツールに
BIMとは、コンピューター上に作成した建物の3次元モデルのなかに、ドアや窓などの材料・部材の仕様・性能、さらに仕上げ、コスト、プロジェクト管理情報などの属性データを追加した建物の統合データベースです。建築の設計、施工から維持管理まで、建築物のライフサイクル全体に及ぶあらゆる工程で、建物の様々な情報を有効に活用するための仕組みであると言えます。
BIMを用いることで、設計者が頭の中に思い描いていた3次元の建物を、そのままコンピューター上に表現できるため、設計者の意図を伝達しやすくなります。これによって、設計者以外の関係者は、多くの2次元図面を見ながら竣工後の建物を想像するという重労働から解放されます。BIMの活用により、設計者、施工者、発注者など、建築プロジェクトに携わる関係者は、設計、施工から維持管理まで建物のライフサイクルのあらゆる工程で建物情報を共有し活用できるため、結果として、関係者間の意思疎通を円滑化し、建築設計の生産性向上が期待できます。
また、BIMモデルを使い、建築物に関する様々な情報を可視化することで、設計の早い段階で各種シミュレーションを実行して設計内容の検証を行い、迅速に問題点の改善を図ることができます。このように設計の初期の段階に負荷をかけ、作業を前倒しで進めることをフロントローディングと呼びます。従来の設計業務のワークフローでは、作業にかかる労力やコストが、設計の後工程、または建設工程に集中する傾向がありました。これは、設計の初期段階で表面化しなかった設計の不整合や、未決定事項の先延ばしなどが原因で、工期の遅れやコストアップ、品質の低下を招き、生産性を大幅に落とす要因となっていました。BIMを活用しフロントローディングを進めることで、「ワークフローの改善」や、「コストアップ要因の排除」といった効果が期待できます。
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