2019.11.11

特別レポート「CEATEC 2019」 住宅IoT、事業者連携で次世代サービス

簡易見守り、マイレシピ提案、快眠ソリューションなど

アジア最大級のIT・エレクトロニクス展示会「CEATEC 2019」が開催、住宅関連でも多くの企業が参加した。特に今年は、住宅IoTで事業者間の連携により新サービスを提案する動きが加速。簡易見守り、マイレシピ提案、快眠ソリューションなど、次世代のIoTサービスが垣間見られた。


10月15日~18日、幕張メッセ(千葉市美浜区)で「CEATEC 2019」が開催された。

CEATECはアジア最大級のIT・エレクトロニクス展示会で、開発中のものも含めて最先端のIoT・AIプロダクト・サービスを目にする機会として注目を集めている。20回目の開催となる今回は「つながる社会、共創する未来」をテーマに掲げ、IT・エレクトロニクス、金融、旅行、玩具、住宅、工作機械、建築、通信、ヘルスケアなど、幅広い業種・産業の787社・団体のブースが一堂に会した。

大阪ガスはアライアンスでIoTサービス実験

住宅IoTの分野でも、今年のCEATECのテーマである「共創」に基づき、事業者間連携による新サービスの提案がなされた。

大阪ガスは近未来の住まいのIoT サービスのコンセプトを展示。キッチンメーカーなどと連携することで実現する「パーソナルクッキングデバイス」を提案

例えば、今年初出展の大阪ガスは、アイシン精機、西部ガス、ノーリツ、パーパス、リンナイ、オージス総研、関西ビジネスインフォメーションとアライアンスを組んで実施しているIoTサービスの実証実験を紹介した。これは、アライアンス参加会社のガス機器(エネファーム、給湯器、浴室暖房乾燥機、床暖房など)の使用状況を収集・分析することで、ユーザーに合わせて家事の時短につながるメッセージをスマートフォンにプッシュ通知するというものである。

さらに大阪ガスは今後アライアンスをガス機器メーカー以外の異業種にも連携を拡大させていきたい考えで、それを見越した近未来の住まいのIoTサービスのコンセプトも展示していた。例えば、キッチンメーカーなどと連携することで実現する「パーソナルクッキングデバイス」を提案。ネットからレシピをダウンロードすることで、IoTコンロ、IoT調味料入れと連動し自動調理を可能にする。また、浴室メーカーなどとの連携を見越した「未来のお風呂」のコンセプトも提案。浴槽に浸かるだけで体のむくみ度合い、心拍数、体脂肪率、血圧などのバイタルデータを計測、分析結果を浴室用プロジェクタで壁面に表示する。

シャープは50社と連携目指す
マイレシピの展示も

シャープはレシピ投稿サイトを運営するクックパッドと開発中のサービスも参考展示。電子レンジの調理履歴データをフィードバックしクックパッド掲載レシピを個人の好みにパーソナライズできる

シャープのブースでも、事業者間連携の取り組みが盛んに提案されていた。同社は住宅IoTの異業種間連携に特に積極的であり、2020年までに50社との連携を目指す方針を示しているが、CEATECではこの第一弾となる、KDDI・セコムとそれぞれ連携した見守りサービスを紹介した。KDDIとの取り組みでは、KDDIがシャープのIoT家電の稼働状況のデータを活用し、KDDIのスマートホームサービス「au HOME/with HOME」で子どもや離れた親の見守りサービスを提供。セコムとの取り組みでは、セコムがシャープのIoTテレビの稼働状況のデータを活用し、「セコムみまもりホン」利用者の見守りサービスを提供する。

また、シャープは全国のスーパーのチラシ・買い物情報サイトを運営するトクバイと開発中の住生活サービスも参考展示。シャープのIoT冷蔵庫のドア開閉履歴・電子レンジ調理履歴から得たユーザーの生活スタイルや食の好みのデータと、トクバイが持つスーパーの特売情報を元に、特売食材を使った好みのメニューをユーザーのスマートフォンなどに提供するというものだ。

レシピ投稿サイトを運営するクックパッドと開発中のサービスも参考展示。クックパッド掲載のレシピをシャープのIoT電子レンジに転送し自動調理する機能に加え、電子レンジの調理履歴データをフィードバックしクックパッド掲載レシピを個人の好みにパーソナライズできるサービスの提供も検討している。

LIXILのブースではノバルスと連携して開発中の「みまもりトイレサービス」が目を引いた。ノバルスではIoTバッテリー「MaBeee(マビー)」により、電池一本で高齢者のみまもりを実現する「みまもり電池サービス」を提供しているが、「みまもりトイレサービス」では、みまもり電池の技術と、LIXILで開発中のトイレセンサー端末を組み合わせることで、簡単に高齢者のみまもりを実現する。水を流すトイレのレバーやリモコンなどにみまもり電池の技術を導入することで、高齢者がトイレを利用すると、離れて暮らす家族などに通知が行くようにする。

高齢者宅にはWi-Fiがないところも多い。また、カメラによる見守りサービスでは監視されていると負担にも感じる人もいる。「みまもりトイレサービス」では設備工事不要ですぐに使え、高齢者にとっても日常の生活を変えることなく利用できるため、導入のハードルを大きく下げた見守りサービスだと感じた。

LIXILはノバルスと共同開発中の「みまもりトイレサービス」を参考出品

パラマウントベッドなど
スリープテックでの異業種間連携も進む

快適な睡眠の提供を目指した異業種連携の取り組みも見られた。パラマウントベッドのブースでは、スマートフォンでマットレスの角度の調整や睡眠データの取得が可能なIoTベッド「Active Sleep」が提案されていたが、それ単体だけではなく寝室全体で快適な睡眠ソリューションを提案する見せ方になっていた。

同社は他社製品・サービスと連携させることで新たな睡眠ソリューションを提案する「Active Sleep Partner プロジェクト」を推進しており、ブースでは同プロジェクトの一環として推進しているリンクジャパンとの取り組みが紹介された。これはActive Sleepと照明・家電等を連携させたサービスで、IoTベッドで寝るだけで、例えば起床時間に自動でカーテンが開き、部屋の明かりを調整するなどし、快適な睡眠と起床をサポートするサービスを提供するというものだ。また、パラマウントベッドではIoTベッドを通じて得た睡眠データと、他社のIoT設備を通じて得た住生活データを掛け合わせることで、新たなサービスの創出も目指しているという。

IoTを活用した快適な睡眠ソリューションの提供については、「スリープテック」と呼ばれ、にわかに注目度が高まっている。シャープのブースでもIT事業者のニューロスペースと共同開発し10月8日に発売したIoTルームエアコン「プラズマクラスターエアコン〈Xシリーズ〉」を紹介していた。これはAIが就寝時に室温を徐々に下げて入眠を促し、室温を徐々に上げて起床を促す機能を持たせたものである。また、今回のCEATECへの出展はなかったが、フランスベッドもKDDIと連携しIoTベッドの取り組みを行なっている。異業種連携でのスリープテックの取り組みが活発化してきており、今後も注目度が高まりそうだ。

パラマウントベッドは、スマートフォンでマットレスの角度の調整や睡眠データの取得が可能なIoTベッド「Active Sleep」を通じ、異業種連携も図りながら、快眠ソリューションを提案

“パーソナライズ”がキラーアプリの鍵か⁉

今回のCEATECでは、住宅IoTで事業者間連携の取り組みが多く見られた。住宅は家具・家電、住宅建材・設備など、様々なもので構成されており、一社でこれらのものに対して、IoTの提案を行うことは難しいだけに、今後も事業者間連携の取り組みは進むだろう。その中で、「個人に合わせてパーソナライズしたサービスを提供できること」が、事業者間連携で創出される大きな価値の一つではないかと思う。

例えば、シャープとクックパッドが連携した取り組みでは、クックパッド掲載レシピをシャープの電子レンジに送信し自動調理できるということもすごいが、さらに電子レンジの個人の使用状況からクックパッドのレシピを自動で書き換えた「マイレシピ」を作成できるというところまで踏み込んでいる。個人の好みに合わせた一段階上の自動調理を実現していると言えるだろう。さらに、パラマウントベッドが目指しているように、異業種が持つ様々な種類のデータを掛け合わせることで、さらに個人に合わせたサービスも可能になる。

住宅IoTでは、これといったキラーアプリがないことが課題となっているが、IoTを活用し料理や入浴、睡眠などでよりパーソナライズしたサービスを提供することが、キラーアプリを創出するための重要な要素の一つになるかもしれない。