YKK、パッシブタウンを総括 7割以上が満足

年内にも第4~6街区の条件設定


YKKは富山県黒部市で建設を進めるパッシブタウン第1~3街区の総括を行った。得られたノウハウを公開することで、持続可能な社会づくりに貢献していきたい考えだ。


パッシブタウンとは、過度なエネルギー消費に依存せず、太陽光や風、水など黒部の自然エネルギーを最大限に生かす「パッシブデザイン」の考え方を取り入れたまちと住まい。これからの持続可能な社会にふさわしいローエネルギーなまちと住まいの実現を目指す。これまでに全6街区のうち第1~3街区までが完成し、多くの居住者が暮らす。第1街区36戸(新築・家族/単身用)のコンセプトは「自然と交感する楽しみ 地域・社会とつながる喜び」。エステック計画研究所の小玉祐一郎氏が設計を担当。第2街区44戸(新築・家族/単身用)のコンセプトは、「ランドスケープと建築が融合する自然の中の住まい」。槇総合計画事務所の槇文彦氏が設計を担当。第3街区37戸(リノベーション・単身用)のコンセプトは「既存ストックを活用した省エネルギー集合住宅モデルの提案」。キーアーキテクツの森みわ氏が設計を担当した。

YKKは、パッシブタウン第1~3街区について、外部専門家中心の第三者的評価組織「パッシブタウン性能評価員会」が研究・調査し、そこで得られた様々な知見をもとに総括を行った。
評価委員会は2016年6月に設立、同年7月から調査を開始、実測をベースとしたエネルギー消費性能の評価に加え、設計者や居住者との意見交換も進め、室内環境やパッシブ性能などを多様な指標で評価した。

まず、パッシブタウンが建つエリアの自然条件などの前提条件を確認した。その結果、日本海沿岸で夏、北北東を中心に海から吹く風「あいの風」は、すべての風の20%程度で、他方位の風も取り入れる工夫が必要であることが分かった。そのほか、2017年~2018年の夏は想定した気象よりも暑く、今後も異常気象への備えが不可欠であること、12月~1月を除いて十分な太陽光、太陽熱が期待できることなどを確認できた。

また、評価委員会は、各街区のエネルギー消費量を実測した。それによると北陸の一般的な集合住宅が1戸当たり年間43GJであるのに対して、第1街区は28・2GJ(再生可能エネルギーの搬送に伴うエネルギーを含むと34・8GJ)、第2街区は20・5GJ、第3街区は、6.8GJといずれもパッシブデザインの導入により、省エネ効果が確認できた。一方で、建築外皮性能・設備・規模・居住者のライフスタイルなどにより大きな差異も見られた。

各街区のエネルギー消費量(二次)実測値
居住者アンケート(2018年実施、比較対象住戸は2017年)

高断熱、高気密化で夏期の住環境に課題

さらに、居住者に対するアンケートを実施した結果、「非常に満足」の16%、「満足」の58%を合わせ、7割以上が満足していることが分かった。

一方で夏期と冬期に分けて満足度を聞いたところ、夏期に不満の声が増加しており、高断熱、高気密は、冬期に高い評価につながったが、夏期の住環境への課題が明確になった。

評価委員会の井上隆委員長(東京理科大学理工学部教授)は、「高水準の熱性能を有する建築外皮は年間を通して快適な温熱環境と省エネ性の両立を実現する」、「居住者への適切な情報提供が、満足度の向上、省エネの両面において極めて重要である」、「様々な特徴を有するパッシブタウンを評価するためには、エネルギー消費、再生エネルギーに加え、暖冷房不要期間、季節特性、満足度などを含めた総合的な評価が必要で、今後とも、総合評価に関する評価項目、評価基準、表示法などの精査を進める」などと総括した。

評価委員会によるパッシブタウンの評価を受けて、YKK不動産の吉田忠裕代表取締役社長は、「パッシブタウンをどのように実現していくか。今回の評価結果を公表し、広く議論を巻き起こすことで、さらに良い方向が見えてくる。イニシャルコストに対する効果なども評価する必要があるかもしれない。2019年内に第4~6街区の条件設定を終え、新たな計画をスタートしたい」と述べた。

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