建築基礎・地盤の技術の高度化を推進
より高い安全・安心の確保へ業種の壁超え協議会設立
建築分野の基礎・地盤の設計・施工に関連する事業者やゼネコン、住宅事業者などが、業種の壁を越えて「建築基礎・地盤技術高度化推進協議会」を設立した。建築・住宅を支える基礎・地盤のより高いレベルの安全・安心の確保に向け、関連技術の高度化に資する研究開発支援、技術の体系化、技術者の育成などを推進する。
建築分野における基礎・地盤に関連する業界では、近年、実務を担う技術者の不足や技術力の低下などが課題となっている。さらに、地震被害による地盤トラブルや、基礎施工での不適切な工事管理、建て替えの際の地盤、基礎の取り扱いなど、新たな問題が生じており、施工品質管理技術の高度化や設計技術の体系化などを求める声が高まっている。
だが、地盤の調査事業者から、基礎・地盤の設計・施工事業者、さらには、住宅事業者やゼネコンなど、業種の壁を越え、関係企業や、有識者などが一堂に会する組織は存在しないのが実情であった。
地盤関連事業者だけでなく住宅事業者なども参加
こうした状況の改善を目指し、「建築基礎・地盤技術高度化推進協議会」(All-Foundations)が設立された。
会員は、建築・住宅の施工者、分譲事業者、杭・地盤の専門事業者および関連事業者などの正会員、研究に参加するとともに、同協議会の活動を支援する特別研究会員、学識経験を有し同協議会の事業に参画・協力する学識会員の3種で構成。(一財)日本建築センターや(一財)ベターリビングなど公的機関などを含め、31事業者が正会員、2事業者が特別研究支援会員、20人の学識経験者が学識会員として参加する。
会長に中井正一千葉大学名誉教授が就任した。任意団体としてスタートし、将来的に法人化を目指す。
中井会長は「建築分野の基礎構造の研究者が少なくなってきており、業界の将来が見通しにくくなってきている。こうした危機感を業種の壁を越え、多くの関係者と共有して協議会発足に至った。知見を集めて山積する課題に対応していきたい」と話す。
既存杭の処理方法をルール化
建築基礎・地盤技術高度化推進協議会では、基礎杭、改良地盤あるいは造成地盤(以下、基礎杭など)の設計・施工に関する技術の高度化を目指し、基礎杭などの設計・施工技術、適正な施工管理技術などの研究開発、体系化する取り組みを進める。
また、こうした成果の普及を通じて基礎杭などの基礎的な共通基盤の整備、基礎杭などに係る技術を支える人材育成につなげていきたい考えだ。
2019年度事業の一つとして、「既存杭の処理技術に関する検討」を行う。
建て替えの際の既存杭の処理に伴い選択される、廃棄、再利用、保全利用、残置という4つの形態に対応して、基礎的な検討を行い、事業者間の情報伝達のルール策定を目指す。
また、廃棄処理を行った際に生じる周辺地盤、支持層地盤などへの影響を、地盤条件、引き抜き工法などが異なる場合について実態調査を行う。
さらに、「既存杭補強技術の開発計画」を立案する。既存杭を再利用するためには、利用する既存杭の補強や基礎地盤全体での安全性確保のための地盤改良を含めた対策が求められる。対応可能な補強、改良技術の方策についてとりまとめ、国の研究動向を見据えて、今後の技術開発の方向性、開発手順などを示す。
そのほか「異種基礎と上部構造の設計技術の検討」、「地盤改良施工指針を作成」などにも取り組む。
建築基礎・地盤技術高度化推進協議会の設立により、建築基礎・地盤に関連する事業者が業種の壁を越えて集まることで、課題や知見の共有化が進み、より高いレベルで基礎、地盤の安全性を高める技術開発が加速していくことが期待できそうだ。
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