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デジタル化が変える建材選び メーカー横断の建材比較サイトを展開

トラス 代表取締役 久保田修司 氏

「求めている条件で選べる」が価値に

トラス(東京都品川区)が運営する、メーカー横断で建材比較ができるサイト「truss(トラス)」が注目を集めている。法規、強度、耐久性、断熱性能、価格、デザインなどの評価軸で建材を比較できる機能を持たせた。より使いやすくデジタル化された建材情報は、建材の選び方のみならず、市場のあり方も変えていく可能性を秘めている。

トラス 代表取締役 久保田修司 氏

──メーカー横断で建材を比較できる新しいサービスの立ち上げに至る経緯についてお聞かせください。

私は東京工業大学の建築学科を卒業後、商社で6年間働きました。携わったのは、世界中で大きな話題となっている水道の民営化事業で、水道会社を買収し経営する仕事をしていました。商社時代の後半の3年間はヨーロッパに赴任しました。そこで印象に残っているのは、どこに行っても建築物、街並みがとても綺麗だったことです。それは建築材料が整っているから綺麗に見えるのではないかと考えました。その後、日本に帰ってきて、改めて建築物、街並みを見ると、ヨーロッパに比べて統一感がないことを実感しました。それは建築材料がバラバラであること、建築事業者がたくさんいることなどが影響しているからではないかと考えました。そして何より設計者は、膨大な数の建材の中からどのように選んでいるのか想像できませんでした。

そこで日本の設計事務所で働く友人にどのように建材を選んでいるのか尋ねたところ、「たくさんある紙のカタログを見て選んでいる。何を馬鹿なことを言っているのか」という答えでした。

後で調べてわかったことですが、比較的小規模の設計事務所でも100冊〜1000冊のカタログを所有していることが一般的です。これだけの情報量があると必要な建材の情報にたどり着くだけでも大変ですし、様々な建材メーカーが発売している商品の全体像を把握し続けることは事実上不可能です。また、建材は法規、強度、耐久性、断熱性能、値段、デザインなど考慮すべき項目が多く、それらの条件を確認しながら選択をするだけでも非常に手間が掛ります。多くの設計者は、建材について十分に理解しないまま選び、そのこと自体をあまり意識していないのかもしれません。

こうした状況であるならば、設計者が求めている条件で建材を選べるようなシステムを構築できれば、利用価値が高いものになると考え、2014年12月に最適な建材選択を支援するクラウドサービスを開発するベンチャー企業としてトラスを立ち上げ、2016年9月から建材比較サイト「truss」の提供を開始しました。

──trussの概要について教えてください。

2018年12月時点で約60のメーカーから情報提供を受け、住宅、非住宅で使用される30万超の建材を掲載しています。内装建材、内装床材、内装天井材、内部建具、間仕切壁(下地+仕上)、天井架構(下地+仕上)、外壁材、屋根材、断熱材、ガラス、下地ボード、耐力面材、耐火被覆材、防水材、透湿防水シート、スラブ、間仕切壁(下地のみ)、天井架構(下地のみ)、住宅用窓(特定サイズの比較)という19のカテゴリーを設けています。

メーカー各社が製造販売している建材をカタログ上で公開されている性能や価格、法規への対応、使用する部位、特色などにより、グラフ上に点としてプロットし、全体的な製品の分布、どの程度性能が異なるのかを一目でわかるようにレイアウトしています。設計者は求めている条件によって商品を絞り込めるので納得して選択しやすくなります。

さらに、グラフ上の点をクリックした近辺にある商品の一覧を画面下に表示する機能も持たせました。詳細な数値などを比較できます。

縦と横のグラフの評価軸は、切り替えることができ、複数の考慮すべき項目から総合的に判断することが可能です。

ちなみに、trussを立ち上げ、メーカー横断で商品を比較できるシステムをつくり始めてから、非常に大変な作業であることが分かりました。

メーカー各社は、自社の商品が他社の商品と比較されるという視点でカタログを作成していません。価格一つとっても、坪あたりの価格、1平方メートル当たりの価格といったように表示の仕方はバラバラです。これらを、我々が用意した定量評価できるフォーマットに合わせて、一つ一つそろえていく必要があります。最初は当社スタッフがメーカーごとに一つ一つの商品を地道に打ち込んでいましたが、最近では、ようやくメーカーからの理解を得られ、我々のフォーマットに合わせて整理したデータを提供してもらえるケースも出てきています。

とくに窓は、どのように性能を評価するのか決めることが難しかった建材の一つです。引き違い窓、はき出し窓、すべり出し窓といった種類、さらに製造可能なサイズ、加えて、サッシとガラスの組み合わせなど無限ともいえるバリエーションがあります。しかし、メーカー間で窓の性能を定量評価できる統一的な基準はありません。そこで、trussでは、規格品で、かつどこのメーカーでも製品化しているサイズのものを選び、同じ土俵で窓の熱貫流率を比較できるように工夫しています。

グラスウール断熱材の検索画面 グラフの点をクリックすると、クリックした近辺の商品一欄が画面下に表示される

──利用者数について教えてください。

ユーザー数は3000人ほどです。建築関係の事業者であれば、会社のメールで登録していただければ、無料でtrussを使用できます。立ち上げからサイトの情報を充実させ、つくり込むことに注力していたため、十分にアピールできていません。サイトのつくり込みがひと段落したので、ユーザー獲得に向けた取り組みも強化していこうと考えています。

ユーザーの大半は中小の設計事務所に所属する設計者の方です。

実は、trussに掲載している建材の価格は、メーカーのカタログに掲載してある設計単価です。設計者からすると、カタログの設計価格が電子化されているので、比較しやすく、利用価値がありますが、工務店などからすると、価格がわからないため片手落ちなのかもしれません。誰も損をしない形で、どのように建材の価格を明示できるか。将来的に答えを出していきたいと考えています。

trussでは、住宅、非住宅の材料を掲載していますが、住宅分野よりも先に非住宅分野でのニーズが顕在化してきています。大手のゼネコンや設計事務所などが全社的な導入に向け検討を進めています。大きく3つのニーズがあるようです。

まず紙のカタログ情報を電子化したいというニーズです。大手ゼネコンや設計事務所などでは、設計士が個人で建材のカタログを請求して業務に活用していることが多いのですが、紙のカタログを置いておくにも場所、コストがかかります。紙のカタログ情報を集約して電子化できないかということに高い関心を持っています。

また、建材を大量購買することで、コスト削減を図りたいというニーズも高い。ビルなどは一品ものであり、1つの建物ごとに使用する建材の価格をメーカーと交渉することが一般的ですが、ある程度購買するボリュームが出てくれば、さらに価格を抑えてくれという交渉を行いやすくなります。そこで建材を選定する際にtrussを活用し、さらに大量購入を決めた後に、社員に対して、「この建材であれば安く使える」ということをわかりやすく伝えるためのプラットフォームとしても活用できないかという相談を受けています。

加えて、BIMとの連携を期待する声もあります。現在、非住宅分野においてメインで使われているBIMは、工事をする際の緩衝チェックや、どういった順番で組み立てればより効率的に工事できるかといったことを検証するために用いる、施工に特化したBIMですが、本来、BIMは施工だけでなく、初期の設計段階や見積もりなどのシミュレーションなどにも用いられるべきものです。しかし、どのような建材を使用したのか、詳細なデータがなければ、設計や見積もりのシミュレーションを行うことは難しい。そこでtrussに蓄積された建材の詳細なデータとBIMが連動することで、BIMの真価を引き出せるのではないかと考えています。

まずは非住宅分野で足場を固め、その後、工務店などをターゲットに住宅向けの情報をさらに充実させていこうと考えています。

──収益モデルについて教えてください。

最初の段階では、建材メーカーからの広告費を主な収益源として考えています。建材メーカーにとって大口の顧客である大手のゼネコンや設計事務所などがtrussを利用し始めれば、広告効果の高い媒体になると自負しています。建材の新商品が出るタイミングで、trussのユーザーに対してダイレクトメールを発送してアピールするサービスや、現在は無料で建材情報をtrussに入力していますが、その作業を有料にすることなども検討しています。

建材メーカー自身も、trussを活用することで、様々なメリットを得られます。まず紙のカタログがいらなくなります。建材メーカーは、流通を介して大量の製品を販売しているため、どの製品が売れているのか正確に把握できていません。しかし、trussの閲覧履歴などを見れば、どの製品がよく見られ、売れ筋なのかが見えてきます。今後、そうした情報をメーカーに還元していく予定です。

また、メーカーの担当者から、製品数が多すぎてどのように整理、管理すべきか困っているという話を聞きます。trussを活用することで、他社の製品も含め市場全体の中で、自社の製品がどのような特色、強みを持つのか把握しやすくなります。新商品開発や営業などに活かせるほか、新入社員の教育ツールとしても活用できるのではないでしょうか。

また、メーカーが設計者に対して効果的にアプローチするためにも最適なツールだと考えています。マーケットが縮小する中で、メーカーは、流通経由で商品を販売するだけでなく、設計者などにアプローチして高付加価値商品の販売を増やしていきたいと考えています。一方、設計から施工までのプロセスは長いため、設計者は常に建材を選んでいるわけではありません。案件に応じて建材を選ぶタイミングがあるのです。そのタイミングを外して営業提案されることは、設計者にとっては煩わしいことでしょう。

そこでtrussが有効なツールとして活用できます。設計者がtrussを閲覧しているのは、高い確率で建材を選ぼうとしているタイミングだと言えます。そのタイミングでメーカーから「弊社はこうした特色を持っています。建材選びの手助けができるので一度お会いできませんか」といった問いかけができれば、前向きに検討してくれる設計者は多いはずです。こうしたサービスもメーカー向けに展開しようと考えています。

──将来的なビジョンをお聞かせください。

将来的には、trussが不動産価値向上に貢献するものとして普及していくことを期待しています。現在、不動産価値は、駅からの距離や築年数、木造かRC造かS造かといった構造などで評価されることが一般的です。

これに対して、どういう材料でつくられた建築物であるのか、建築物の質が考慮されるようになれば、不動産価値の評価の仕方も変わっていくでしょう。何十年経っても価値が維持された建築物として売買できるようになれば、金融機関の評価の仕方も変わり、融資がより受けやすくなるかもしれません。より良い材料を使い質の高い建築物をつくり、その価値が評価されるようになれば、建築物1件あたりに使われる費用も多くなっていくでしょう。職人に支払われる給料も上がり、数をこなさなくても効率よく稼げるようになるかもしれません。そうした状況を生み出すための土台としてtrussを普及させていきたいと考えています。

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ハウジング・トリビューンVol.631(2021年22号)

特集:

2030年住宅への設置率6割は可能か
初期費用、条件不利地域へのソリューション

国は2030年に住宅での太陽光発電の設置率6割を目標とする考えを示した。
現状の設置率は1~2割とみられ、非常に高い目標と言える。
100万円以上を必要とする「高額な初期費用」や、十分な発電効率を得るのが難しい「条件不利地域」といった課題があるなか、住宅事業者は設置率6割に向けてどのように取り組んでいけば良いのか──。
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