ダイキン工業、東大と連携協定し「空気」の技術開発10年間で研究資金100億円拠出へ
協創によってイノベーションを生み出す
ダイキン工業は、東京大学と産学連携協定の締結を発表した。エアコンの新技術の共同開発など互いの人材や技術を活用しイノベーションを起こす考えだ。
空気技術を核に空気環境の改善に寄与する製品などを開発してきたダイキン工業は、さらなる研究や製品開発を進めることを目的に12月に東京大学と「産学協創協定」を締結した。環境やエネルギー技術を交えた将来のニーズ予測や研究テーマの設定、中長期の研究や人材交流などを包括的に進める考えだ。
協定は2018年12月から10年間で、①「空気」に関わる未来ビジョンの協創、②「空気の価値化」を軸とした未来技術の創出、③東大関連のベンチャー企業との協業を通じた新たな価値の社会実装という3つの協創プログラムを展開する。そのために同社は10年間で100億円規模の研究資金を提供する予定だ。東大の五神真総長は「包括的な分野をカバーする東大と、空気に特化した研究を行ってきたダイキン工業が組み合わさることでイノベーションが生まれる」として、協創に期待を寄せる。
具体的には、未来ビジョンの協創では東京大学の理学、工学に加えて北京大学の中国有識者の知見も活用して新たなニーズやビジネスを顕在化する。年間6回の頻度で会合を行いビジョンを導き出す方針だ。
また、「空気の価値化」として、空調機能を暖めたり冷やしたりするだけではなく、温度、湿度、気流、空気成分などが生活空間に与える影響を研究する。「空気の価値化」に向けた技術創出として、AIを用いた機器の故障予知、省エネ性を飛躍的に向上させる運転制御といった空気分野の技術研究を想定している。
ベンチャー企業の支援など人材交流を重視
東大との連携のなかでも特に人材交流に力を注ぐ。そのひとつとして同社は東大の教授や准教授、若手研究者を受け入れると共に、ベンチャー企業を支援する考えを示した。東大では卒業生や研究者、学生などが設立したベンチャー企業が約330社存在する。こうしたベンチャー企業に対して人脈、技術や製品の性能などを検証する場所、生産設備やノウハウなどを提供するという。
同社の井上礼之取締役会長は「初年度の投資額10億円のうち半分はベンチャーの投資に割り当てる」と話し、人材交流を重視する方針を強調した。
また、同社は東大が始めた企業家支援プログラム「FoundX(ファウンドエックス)プログラム」に民間企業として最初に参画。東大の起業希望者が集まるスタートアップ企業集積地に、同社の若手技術者4人を常駐させるうえ、半年に20人以上の技術者を訪問・滞在させる。事業の立ち上げや販路開拓などをサポートする一方、スタートアップ企業から有望な起業家を発掘し、アフリカで事業を運営する起業家とビジネスのアイディアを考え新興国での事業拡大を目指す。
同社の売上高は2兆4800億円(2018年11月現在)で過去最高を更新している。富士経済の「グローバル家電市場総調査2017」では空調事業の売上高で世界1位を獲得するなど、着実に成長を遂げている。2017年にも大阪大学と情報科学分野を中心とした包括連携契約を締結している同社。東大との協創でより快適な空気環境をつくる製品や技術の開発が進められさらなる成長が見られそうだ。
水捨て不要の除湿乾燥機を発売へ
初年度5000台の販売を目指す
住宅でさらなる快適な空気環境を実現するため、2月1日に初めて水捨て不要で24 時間365 日連続運転ができる壁掛形の住まい向け除湿乾燥機「カライエ」を発売する。
カライエは、同社製のルームエアコン「うるるとさらら」に搭載されている「無給水加湿」の技術を応用した、高湿度の空気を気体のまま屋外へ排出することで水捨てをしなくても連続して除湿ができる除湿乾燥機だ。室内の空気中に含まれる水分をデシカントエレメントと呼ばれる吸着素材に吸収させることで、高湿度の空気として、気体のまま屋外へ排出するため、水捨て作業を不要とする。冬場でも能力が落ちにくいデシカント方式を採用することで年間を通した運転が可能だ。
同社では24 時間365 日連続運転ができることから、ウォークインクローゼットや屋根裏部屋、地下室など、湿気の溜まりやすい空間への設置を推奨している。また、空調営業本部事業戦略室の長内美鶴氏は「長期不在空き家の所有者のうち2人に1人が住宅の通風・換気を委託したいと考えている。別荘や半地下室、寝室に加え、相続した空き家などでの使用も想定している」と話す。総務省の平成25 年住宅・土地統計調査によると日本の住宅の7軒に1軒が空き家であり、新たなマーケットの開拓を進める考えだ。
カライエはエアコン用の配管穴に専用の除湿ホースを通すだけで簡単に設置できる。自動モードなら1日50 円程度で使用することができるため、快適な空気環境づくりに寄与するアイテムとして量販店などを中心に提案を進めていきたい考えだ。
価格はオープンで、店頭予想価格は工事費込みで7万~8万円。長内氏は「除湿器の壁掛形は新たなジャンルへの挑戦となる。まずは初年度5000台の販売を目指していきたい」と話し、ニーズを受けて製品の改良なども進めていく考えだ。
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