産総研が建築用人型ロボットを開発 石膏ボードやコンパネを両手でハンドリング
建設現場の重労働や危険作業の代替に期待
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、建設作業を担う人間型ロボットを開発した。職人不足問題が深刻化する中で、建設現場での重労働や危険な作業を代替するロボットとして実用化が期待される。
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産総研は、人間の重労働作業や危険な環境での作業を自律的に代替することを目指した人間型ロボットの試作機HRP-5Pを開発した。
産総研では、川田工業(現 カワダロボティクス)をはじめとした複数の民間企業と協力してHRPシリーズを開発し、実用化に向けた基盤技術の開発に取り組んできた。HRP-2では二足歩行、寝転び・起き上がり動作、隘路歩行などを実現し、HRP-3では滑りやすい路面での歩行や遠隔操作による橋梁のボルトを締める作業を可能とした。
2011年から取り組んできた災害対応人間型ロボットの研究では、HRP-2の身体能力(手足の長さや可動範囲、関節出力など)を向上させたHRP-2改により、環境の3次元計測に基づく不整地歩行やバルブ回しなどの作業の半自律実行を実現。しかし、石膏ボード壁面施工のような重労働作業には身体能力が不足し、また、複雑な環境での人間の運動を模擬するには関節数や関節の可動範囲が十分ではなかった。
ロボット知能を搭載
建設作業を自律的に代替
そこで産総研では、従来培ってきた人間型ロボット技術を踏まえ、「複数の関節部の可動域を最大化する」「高出力モーターを採用し、関節などの可動の強化、スピードアップを図る」「環境計測・物体認識技術などからなるロボット知能を搭載する」といったバージョンアップを図り、HRP-5P(身長182cm、体重101kg)を開発した。
より人間に近い動作が可能になり、石膏ボード(1820mm× 910mm×10mm、約11kg)やコンパネ(合板)(1800mm×900mm×12mm、約13kg)のような大きな対象物を両腕でハンドリングできるようになった。
具体的には、①「周辺環境の3次元地図生成と物体検出を行い、作業台に近づく」、②「作業台に寄りかかりながら平積みされた石膏ボードを1枚ずらし、持ち上げる」、③「周辺環境を認識しながら石膏ボードを壁まで搬送する」、④「石膏ボードを降ろし、壁に立てかける」、⑤「高精度ARマーカーを用いて工具を認識し、拾い上げる」、⑥「胴縁を握って安定性を確保しながら壁に石膏ボードをビスで固定する」といった一連の動作を自律的に行う。
今後、産総研では、HRP-5Pを人間型ロボットの実用化を目指した研究開発プラットフォームとして産学連携による活用を促進していきたい考え。
プラットフォーム上でロボット知能の研究開発を進めて、ビル・住宅、航空機や船舶などの大型構造物組立現場でのさまざまな作業の自律的代替を目指す。
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