2018.10.22

LIXIL、IoT宅配ポストを発売 2020年までに約2万台の販売目指す

宅配業者などと連携したサービスの提供 も視野に

LIXILはIoT技術を導入し、ネットワークに繋がった宅配ポスト「スマート宅配ポスト」の販売を開始した。2020年までに売上15億円、約2万台の販売を目指す。宅配業者などと連携したサービスの提供も視野に入れ、門まわり商品のさらなる利便性向上に取り組む。

ネット通販の普及と再配達問題により宅配ボックスの需要が高まっているが、戸建用のものはまだ市場に浸透しておらず、普及率は1%未満というのが実情だ。こうしたなかで、LIXILは戸建用宅配ボックス市場の今後の伸びに期待している。エクステリアで市場が最も大きい商材はフェンスで市場規模は640億円だが、宅配ボックスも戸建用を中心に市場規模が大きく拡大し、2023年以降にはフェンスと同規模の市場になると予測している。このため、同社では戸建用宅配ボックス市場の開拓を強化していく。

具体的には、宅配ボックスを郵便ポスト・機能門柱と一体化させた商品「宅配ポスト」の提供に力を入れる。LIXILの試算によると、郵便ポスト・機能門柱は年間約48万台販売されている。同社はこのうちの約34%のシェアを持っているが、今後はこうした郵便ポスト・機能門柱単体ではなく、そこに宅配ボックスが付いた「宅配ポスト」を提案することで、門まわり商品の付加価値向上を図っていきたい考えだ。

一方で、近年、戸建の宅配ボックス市場でもエクステリアメーカーによる提案が進み徐々に商品が増えてきており、メーカーには一層の差別化が求められている。このため、今回、LIXILはIoT技術を導入しネットワークに繋がった宅配ポスト「スマート宅配ポスト」の販売を開始。2020年までに売上15億円、約2万台の販売を目指す。

LIXILはIoT技術を導入し、ネットワークに繋がった宅配ポスト「スマート宅配ポスト」の販売を開始。門まわり商品のさらなる付加価値向上を図る
操作パネルについても使いやすいように改良。解錠操作などをガイドしてくれるようにしてあり、簡単に操作が可能。施解錠の状態や荷受け状況も一目でわかる
宅配業者とネットワークカメラを通じて会話しながらスマートフォンで解錠できる仕組みを導入することで、安心して複数回の荷物を受けとれるようにした
宅配ポストの他に、wifiルーター(左)とホームユニット(右)を設置することで、IoTに対応

複数回の受け取りに対応 集荷依頼も可能に

LIXILでは、これまで宅配ボックス単体ではIoTに対応した「リンクスボックス」という商品を用意しており、荷物が届くとスマートフォンへ通知するなどの機能を持っていた。今回発売した「スマート宅配ポスト」では、郵便ポストと一体化させるとともに、機能の充実とデザイン性の向上を図った。

機能の充実という点では、例えば、複数回の荷物の受け取りに対応している。これまでは、すでに入っている荷物を持ち去られるという安全面の問題から、利用者は一度荷物を受け取ると、その荷物を取り出すまでは新しい荷物を受け取ることはできなかった。だが、今回、スマートフォンとつながるネットワークカメラを本体に組み込み、2度目以降の配達時には宅配業者とネットワークカメラを通じて会話しながらスマートフォンで解錠できる仕組みを導入。これにより、すでに荷物が入っている場合でも、安心して荷物を受けとれるようになった。同社の調査では、約半数が1日の中で複数回の荷物の受け取りを経験したことがあるとしており、ニーズは高そうだ。

また、新たに集荷依頼もできるようにしている。サービスに対応した宅配業者であれば、不在時でも宅配ボックスから荷物を発送できる。LIXILでは宅配ボックスでの集荷の利用意向についても調査しているが、約3割が利用したいとしている。

デザイン性の向上については本体の素材で強度と美しさを併せ持つ「アルミダイカスト」を採用。表面は粉体塗装を採用しマットな質感だ。無駄な要素を排除したノイズレスデザインを採用。外から見える蝶番やパーツ類も極小化している。

宅配業者と連携したサービスも視野に

LIXILでは「スマート宅配ポスト」のさらなる利便性の向上を目指し、2019年から首都圏エリアで実証実験も行っていく予定だ。対象の戸建住宅については公募する。

宅配事業者や自治体、EC事業者などと連携しながら、ユーザーの利便性の向上と、宅配業者の配送効率のアップにつながるサービスの創出を実証実験を通じて目指す。「これまで、バージョンアップを図るためには、製品の仕様を変えて販売し直さなければいけなかった。だが、IoTの導入により、アプリケーションを更新すれば新しい仕様や機能を提供できるようになった。それだけにIoTに可能性を感じている」(エクステリア商品開発部 第三商品開発室・井出眞治 室長)としており、実証実験の成果も反映させていきたい考えだ。

LIXILの「スマート宅配ポスト」は、今の宅配ボックス市場のなかでは、トップランナーとも言える商品だ。しかし、参考価格が17万8000円からと高価なことも事実。この点については、「まずは利便性に価値を見出してもらえる人から普及を進めていきたい」(庵原岳史 エクステリア事業部長)としており、IoTに関心のあるアーリーアダプターの反応が商品の拡販を行う上で重要になりそうだ。